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限定'投げ銭'ライブ[ツアーから帰ってきました]

Nの集落
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※試聴版。オリジナル版(21:15)はメンバー特典記事が追加されているプランに加入すると視聴可能。

夏の朝が好きだ。これから昼にかけて気温が跳ね上がっていく予感に覆い尽くされている不思議な温度と湿度。ハンパな明るさと静けさの中、ひとりひとり人間が起きてバス停に向かって歩きはじめる。嵐の前の静けさみたいな高揚感。やがて雑踏に変わる、おれの町でも蝉が鳴きはじめた。

いかにもチンピラ風のバス運転手、スキンヘッドにサングラスの男がこの町と駅を何度も往復する。これまで一度も話したことはないし、これからも話すことはないだろう。手を振る子供達を車窓から眺めているのが同じくらいで、この関係は縮まることはなく、望むこともない。ただ運賃を払う。

逆走するように、おれは家路をのしのしと歩く。いわゆる朝帰り、近所の人たちの好奇の目にさらされる。ミュージシャンはいつもこうだ、慣れている。一瞬目を合わせて会釈してやりすごす。早くシャワーを浴びて、出来ればエアコンの効いた部屋で眠りたい。

昨日はライブが終わってから大暴れした。胸糞悪いミュージシャンに喧嘩を売られ、買った。ライブハウスから追い出され、居酒屋で仲間になぐさめられた。朝まで付き合ってもらった。どうしてこんなに生きにくいのだろう。駅で別れ、バスに乗った。

仮眠して、また同じ路線バスに乗る。すこし疲れたのかスキンヘッド。無愛想に拍車がかかっている。ただおれはバスの運転手ににこにこした愛想を求めてはいない、それくらいがちょうどいい。また会ったけれど、おれは元気だ。「おつかれさま」って皮肉にならないように言う。今夜は地元でライブがある。

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