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自炊のすゝめ

大学生諸君、自炊はしているであろうか。

私は一人暮らしを始めた大学一年の春から二年が経とうとする現在に至るまで週に三,四回キッチンに立つ生活を続けているが、そんな風に話すと周りの人間から口々にこう言われる。「偉い」「すごい」「かっこいい」。お褒めに預かり光栄なのだが、謙遜抜きで自分は己の三大欲求に従うがままに食欲を満たしているだけであって、むしろ衣食住という人間が人間らしい生活をするための項目のひとつを満たすだけでここまで褒められるのは、なんともいえない違和感すらあるのだ。

それだけ大学生の中で「自炊」のハードルが上がり、イメージが神格化されている空気を感じる。人は誰しも自分の知識が及ばない領域や未知の経験を複雑で難解な物であると思い込みがちなのは、はるか昔病気は神の怒りであったり悪魔の呪いであったりと信じられていた頃から変わらない。だが安心してほしい。自炊とは決してそんな大層なものではないし、簡単な料理であれば面倒にもならない。むしろ時間もお金も節約できて、かつ栄養価の高いものが食える、まさに一石で何鳥も落とせる頼もしい生活のバディとなってくれること間違い無しなのだ。

繰り返しになるが、自炊したことの無い貴方はどこかで勝手に「自炊」のハードルを上げてはいないだろうか?毎日作らなきゃいけないとか、一食あたり2、3品用意しなきゃいけないとか、栄養バランスも考えて~とか…。結論から言うと、そんなものは自転車に乗れない子供がバイクパフォーマンスの技構成に悩んでいるようなものだ。とにかく最初は己の力で皿の上に飯を生成することだけを目標にしてくれればいい。作るものだって何でもいい。その日食べたいと思ったものでも、簡単に作れそうだと思ったものでも、「何か」作れればそれで一歩前進だ。気が向いたら写真に収めてSNSにでも投稿してみるといい。自炊が神格化された世の中で、その写真は絶大な数の「いいね」をもたらすであろう。美味いものは食べるだけでモチベーションが上がるし、何より自分の自信にもつながる。そうやって週に1度でも月に1度でも続けていければ、いずれ「ママの手料理」や「コンビニ飯」といった補助輪を外せる日もそう遠くなくなるだろう。

そうは言っても、最初は何からしたら良いかすら分からない。私も最初はそうだった。食卓に座れば何もせずとも母親の飯が出てくる生活を20年余り続けておきながら、大学生の春を迎えた途端さあこれからは自分でやりくりしてねと宣告を受けたようなものだ。ものの二週間でコンビニ弁当にも飽き、このままエンゲル係数右肩上がりの生活をするわけにもいかない。かといって自炊と言っても何からしていいかわからない。右も左も分からない~。そんな貴方にこれを薦めたい。

世界一美味しい手抜きごはん 最速!やる気のいらない100レシピ
(著:はらぺこグリズリー)

これは私が入学直後に買った、まさにゼロから始める自炊本である。ページを開けばまずあるのは揃えるべき基本調味料の紹介。そして次ページにある最初のレシピは「レンチン10分で作る角煮」である。「え!電子レンジだけで自炊が出来ちゃうの?」と思った人もいるのではないだろうか。私もまずそこで衝撃を受けた。その後続くレシピも度肝を抜くような簡単さ。米からパスタ、デザートまで満遍なく掲載されている。文章より写真の比率が高いレイアウトなので視覚的で分かりやすい。そしてなにより、普通に美味い…。2019年料理レシピ本大賞受賞も納得の一冊である。この一冊で10品作る頃には、貴方は胸を張って「自炊してます」と言っていいだろう。そこからはyoutubeやクックパッドを覗いても「今何をどうやったの?」状態にはそうならないので、自分の好きなものを調べて作って食べて、Quality of Life をガンガンに上げていこうという話なのである。

いかがだったろうか。無論上記の流れはあくまで一例に過ぎないため、各々気になったサイトや本から始めてもらって一向にかまわない。実家暮らしのそこの貴方も、社会人になった時の準備をしておくに越したことは無いだろう。名市大生のタイムラインに飯テロが横行する日を楽しみにしている。

<文責:エンガワ>


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