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ID:INVADED イド・インヴェイデッド

(2020年1月放送のテレビアニメ・全13話)

 脚本が舞城王太郎という一点で見始めた。舞城王太郎という作家は『好き好き大好き超愛してる。』『ビッチマグネット』『短篇五芒星』『美味しいシャワーヘッド』で芥川賞ノミネートが4度あるも、石原慎太郎氏らから再三酷評を受け受賞を逃すという人を選ぶ作風で本当にクセが強い。しかしハマると不思議と読みたくなってしまう中毒性を持っている。スタジオカラーのアニメ『竜の歯医者』の原案・脚本や、漫画『バイオーグ・トリニティ』(作画:大暮維人、全14巻)の原作を務めるなどマルチな活動も。中学生の頃『九十九十九』(つくもじゅうく)を読んでから虜になった自分は、彼が連続アニメの脚本を手がけるというのだから見ないわけにはいかなかった。

 殺意の後に残る思念粒子から犯人の精神世界(イド)を構築し、(まるで電脳世界のように)中に侵入できるシステム「ミヅハノメ」。これを利用し事件を捜査する警察組織、通称「蔵」。頻発する凶悪かつ謎多き事件、そして現場から構築した殺人鬼のイドに共通して現れる連続殺人鬼メイカー「ジョンウォーカー」をイドの中の名探偵・酒井土が追う。本作はそんなSFミステリだ。作品へ寄せられた清涼院流水のコメント「連続殺人鬼の思念がつくる世界で、名探偵は踊る。」がこの作品を一言でよく表していると思う。SouのOPとMIYAVIのEDも作品の雰囲気に合致していて素晴らしかった。

 用語は確かに独特だ。タイトルのイドって何?フロイト?ID?ミヅハノメで構築したイドの中に入ることを井戸と掛けて潜るというし、イドに潜る様子を外側から観察する者たちは井戸端というなど他にも言葉遊び的に発想を広げていて清涼院流水の影響を受けた舞城らしいと思った。

 訳がわからなかったかもしれないが、刺さる人には刺さるTVアニメシリーズ全13話、是非一度、視聴してみてほしい。意識高い系雰囲気アニメとか好きな人には特におすすめ。キャラ原案の小玉有起によるアニメ外エピソードのコミカライズも面白い。

<文責:ぽーたる@津田健次郎かっこいい> 


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