生きようとしている




死にたくて 死にたくて
なんで死にたいかも分からなくなってきたころ
血が止まった

ああ 今日も生きようとしている身体に邪魔された

あともう少しだったのに


仕方ないので腕を洗う
血にまみれたがこれは死に直結するもので無くなったからもう不要だ

ただの汚い 赤い液体だ


ここはひとつ 電車に飛び込むとしよう
ホームに沢山人を入れよう
私の解体ショーを行うのだ
マグロと同じで見応えもあるだろう
自分への価値も見い出せるだろう


人が集まってきた頃
私は改札を抜けた
来るのが少し 遅れたようだ
もう先客が居た


誰かが空気に吐き出した
「死ぬなら1人で死ね。迷惑だ」


聞けば皆 覗けば皆 「迷惑だ」と呟いている

会社に遅れるんだって
学校に遅れるんだって
遅延届け出すのがめんどくさいんだって



砕け散って ぷるんぷるんの肉片に
朝日が当たって綺麗だった
真っ赤で真っ赤な部分がもっと真っ赤だった
新鮮な色だった


それを見て誰かが吐いた
それを見てまた誰かも吐いた
それが私の服に付いた

気持ち悪くて死んでしまいたかった
こんな美しい物の隣で

さっさと死んでしまいたかった

気付けば美しかった肉片も
真っ赤に染った目線の先の線路の鉄も
誰かによって拭い取られてしまっていた


私は座り込んでいた
死ねなかったことに絶望した
いや、そうじゃなくて


君はどこの誰だったんだろう
君の血を浴びれたなら
私はどれだけ良かっただろう
美しく居れただろう

なのに私が被ったのは汚い女のゲロだった
排泄物は要らない
排泄されないからこそ繊細で美しいのだ
それでいて不気味なのだ
それが幸せと言うものなのだ


私はまだ言葉を紡ぎ出している
私はまだ脳みそを動かしている
私はまだ感情に頼っている
私はまだ両手を動かしている
私はまだ冷たい空気を吸おうとしている

私はまだ

私はまだ

生きようとしている

生きようと

生きようと

生きようとしている


死を目の前に

手を伸ばし 水滴が裾の中に入る気持ち悪さも忘れて


私はまだ

私はまだ


生きようとしている

生きようとしている

生きようとしている


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