橋本さん-3

デザインプロジェクト 橋本 亮子 インタビュー

今回お話を伺ったのは「デザインプロジェクト」の橋本亮子さん。デザイナーとして、都内の広告企業に勤めた後、2012年12月にフリーランスとして独立しました。
Next Commons Lab遠野(以下NCL遠野)に加入したのは2016年9月。デザインを「問題解決するための手段」と捉え、現在はグラフィックデザインのみならず、商品の開発やブランディングを手がけています。
橋本さんがNCL遠野に加入するまでの経緯や、東京と遠野での「デザイナー」としての働き方の違いなどをお聞きしました。


—どんなきっかけで遠野に来たのか。教えてください。

もともとは東京の会社に勤めながらデザイナーとして、主に広告の仕事に携わっていました。フリーランスになったのは2012年。2011年に起こった東日本大震災を経て、自分の働き方について考えるようになったことがきっかけでした。より自分の働く時間を「自分がいいなと思う未来」のために使いたいなと思うようになったんです。
フリーランスになってからは、自分が興味のあったオーガニックに関連した、自然素材を扱うお店やオーガニック製品を製造する企業から仕事をいただけるようになって、どんどん気持ちのいいお仕事ができるようになっていきました。
地方で暮らすことを意識したのは、フリーランスでお仕事を続けているうちに、段々と自分の暮らしていたい場所が東京じゃないかもしれないなと思い始めてからです。東京を嫌いになったわけではありません。情報や人の多さが気になっていたからかな。「この先、食べ物を生産している地域の近くにいた方が良い」っていう危機感もあったと思います。
そこで、それまでと同じデザインの仕事をしながら、東京以外の場所で生きていけるかを考え始めました。初めの頃は九州とか、なるべく暖かい気候の地域をひたすら探し歩いていたんです。でも、なかなか決めることができなくて。そんなうちに、馬搬の文化が残っていた遠野に興味を持つようになりました。友達伝いで実際に馬搬を見せてもらえることになって、初めて遠野に訪れて。その時に繋がった友達とのご縁もあって、それから年に2回は遠野に遊びに来るようになりました。そうして、頻繁に遠野に来ていたけど、移住先としては考えていない、みたいな状態がずっと続いていましたね。
そんな時に、遠野でNext Commons Lab遠野の募集があるという話を聞きました。遠野は寒いから、移住するのはちょっと厳しそうだなと思っていたんですが、やっぱり頻繁に通ってしまうくらい、遠野の景色をすごく好きになっていたので「行くのもいいかもな」と思い始めて、実際に来てしまったという感じです。

------遠野に来てからはどんなことを?

今まで作ってきたものだと、まずは、遠野産のホップを使用した「ホップシロップ」のパッケージ。水やお湯、お酒などで割って飲むシロップで、ホップを味わうことができます。さらに、市内にある小友地区の「小友ようかん」。小友ようかんは約40年前に途絶えてしまった羊羹屋さんが実際に製造していた羊羹です。その想いを引き継いで、もう一度みんなに喜んでもらえる小友の銘菓として復活させたいというお話を受けて、商品のコンセプトを考えるところから羊羹の味を思考錯誤するところまで、長期的に関わらせていただきました。あとは東京で働いていた頃から、紙媒体をメインとして仕事をしていたので、そういったご相談やお仕事をいただくことも多いです。
東京で働いていた頃もそうだったんですが、フリーランスになってからは「広告」というより、商品のブランディングをするお仕事が増えてきていますね。ロゴデザインからパッケージデザイン、そのあとPR用のグラフィックも作って。商品のブランド力を育てる、開発するとか、事業として成り立つまでの一連の流れに伴奏するようなお仕事も出てきました。コーディネーターやコンサルタントのような仕事に近いかもしれません。

------デザイナーとして、何かをつくる仕事ではないのですね。

デザインってそもそも「成果物をつくる」ことが目的ではなくて、「問題解決の手段」だと思っているんです。でも、遠野に来てからは問題解決の手段として、私に仕事の依頼が来るわけではないんですよね。「デザインをしたら、なにかいいことにならないかな」みたいな感じで依頼が来ることが多いです。
東京でデザインをしていた頃は、デザインを依頼する企業側が、ある程度何が問題かを意識していて、その解決方法を練った状態で「デザインの力を貸りたい」と依頼が来る。それは事業内容を考える上で、それぞれの分野に長けたプロがいるからってことなんですよね。だから都会的な働き方だと、分業された「デザイナーとしての職能」が必要とされて仕事をすることがほとんどでした。
今は予めどこが問題なのかが見えない状態で、デザイナーとして仕事に入ることが多いです。分業化された職能よりも、その事業をまるごとすべてカバーする能力が必要とされている感じがします。なので、まずは何かを形づけるデザインをする前に、どこが問題なのか、ひとつひとつステップを踏まなければいけないことを一緒に考えていくことから始まります。まとまらないアイデアや意見を、デザインの手法を使って整理して、解決の糸口を見つけることもデザイナーの仕事のひとつだと思っています。

------「デザインの手法を使って整理する」ということを詳しく教えてください。

やっぱり言葉だけでは、みんなが考えていることをまとめにくかったり、がんばろうと意識する気持ちが持続しづらかったりすると思うんです。
でも、みんなが「なんとなくそうかも」って抱いている想いをイメージとして形にできると、みんなで意志を統一して、目標に向かいやすくなると思っています。
例えば、「小友ようかん」のパッケージは小友ようかん特有の「しゃりしゃりする食感」を伝えたくて、このデザインが使われています。商品を買う人にPRする目的ももちろんありますが、つくり手の人たちが改めてパッケージのデザインに目を通すことで、自分達の商品の強みや目標を再確認することができる。そうすることで、ちゃんと自分たちの商品を誇る気持ちが持ち続けられると思うんです。デザインによって、みんなの想いが力になりやすいんですね。
最近やっと、こうしたデザインの価値みたいな部分を遠野の方々にも、感じてもらえている気がします。
これからも遠野の方々と一緒に仕事をすることで『デザインってどんなことなんだろう』と考えながら、それを間近で体感してもらえる人を増やせたらいいなと思っています

------これからしていきたいこととして、他に意識していることはありますか?

NCLでは地域おこし協力隊制度を活用しているので、協力隊としての任期は最大3年になります。だから、3年というのが一つの指標になっていますね。私は残りの13ヶ月は「丸3年経ったあとどうやってデザイナーとして稼いでいくか」を考えないようにしてクロージングしようと思っているんです。
本当はこの場所でデザイナーとして生計を立てて行くためには、遠野以外の都市部の仕事をもっと積極的に取っていった方がいいと思う。でもそれって結局、私の今までの東京での働き方と一緒になってしまう。この3年間は、私の今までの働き方とは違う遠野のような“地方”に主軸を置いた働き方にシフトしていく、チャレンジ期間としてやり切ろうと思っています。

------最後にNCLに興味がある方にメッセージをお願いします。

移住って、働き方や遊び方、人間関係、様々な環境が一気に変わるので、大変ですけど、もし、「都市以外の場所で働く」ということにチャレンジしたい気持ちがあったらやってみたほうがいいと思います。挑戦してみた結果、だめになるっていうことももちろんあると思うけど、チャレンジするための仕組みはNCLから得ることができると思います。一緒に活動をする仲間が増えることとか、都市集中型じゃなくて人が緩やかに地方へ移動する、みたいなことの体現者になるということは、幸せな未来をつくっていくための着実な一歩になると思っています。

橋本さんはNCL遠野に加入してからの3年間を「働き方をシフトする修行のような期間」と捉えながら「『幸せを感じる人』が増えるような仕事に関われている実感があります。楽しめてやっていますよ」ともお話してくれました。
デザインを「問題解決するための手段」として意識する橋本さんの働きから、デザインに対する人々の意識が少しずつ変化していくことで、地域の価値はこれからさらに引き出されていきます。


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2016年、遠野を皮切りに始動した「Next Commons lab」。日本各地の地域資源と起業家を掛け合わせ、新たな事業やコミュニティの創出をめざすプロジェクトです。遠野では、15人のメンバーが遠野に拠点を移し、ビール、発酵、食、テクノロジー、デザインなどに取り組んでいます。
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