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堀 宏行 インタビュー

今回お話を伺ったのは、Local Tech Labプロジェクトに携わっていた堀宏行さん。長崎県佐世保市の出身で、フリーランスのエンジニアとして活動をしながら、2016年9月にNextCommonsLab遠野(以下NCL遠野)に参画。遠野市に拠点を持ちながら、2017年10月に東京・渋谷に事務所を置く、汎株式会社を設立しました。2018年8月末に、地域おこし協力隊としてのNCL遠野での活動は卒業。現在は、汎株式会社として、Next Commons Labのネットワークで、市民同士の助け合いをマイクロワーク(小さな仕事)という形で実現するためのプロジェクト「Commons OS」の立ち上げに向けて開発を進めており、NCL遠野との関わりは続いています。インタビューを行ったのは地域おこし協力隊とを退任する前の2018年6月。東京と遠野等の地方を行き来する働き方をしていた堀さんに、これまでの活動についてお話をお聞きしました。

------NCL遠野に加入するまでのなりゆきを教えてください。

まず、僕がプログラミングを行うようになったのは、音楽がきっかけです。音楽をプログラミングで作り始めるようになって、どんどんのめりこんでいきました。
プログラミングによる作品制作や表現の仕方を学ぶために、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーに入学して、卒業した後に就職した会社では、入社当時、企業の広告やウェブサイトの制作をする仕事に携わっていました。年数が経つにつれて、仕事の内容は変化していて。もともと僕がプログラミングで音楽制作をしていたり、表現分野、作品制作に関わっていたこともあって、ライブコンサートの演出や国際的なアートイベントに出展するような仕事に携わるようになっていきました。

そういう仕事を続けている時に、「こういう仕事は都会だからこそできる仕事」だと思いながら、地方でも、技術的に面白いことだったり、チャレンジングなことを続けていくことはできないか、と考えていたんです。都会で働き続けるだけではなくて、地方でもできる仕事をつくりたいなと思っていました。
そんな時にFacebookでNCL遠野の募集を見て、その後、代表の林さんと出会いました。
当時、林さんが話ししていたのは「定住人口を増やすんじゃなくて、流動人口を増やす」ということ。ひとつの土地に住み続ける必要はなくて、いろんな土地を動きながら、生活をすることができやすい世の中になった方がいいんじゃないかという意見に、僕も「それはそうだな」と共感していたんです。
もちろん、地方に住む、田舎暮らしをするって人も必要だと思います。だけど、僕は結構都会も好きで。面白いこともいっぱいあるし、情報がたくさんあるし、都会は都会でやっぱりよさがあるんですよね。
それに、様々な価値観に触れるために、いろんな場所に動くことは魅力的だなと思ったんです。
だから僕は「横浜にいる家族と生活をしたい」、「遠野でやりたいこと、チャレンジしたいこともある」という考えから二拠点生活のような形で、NCL遠野に入ってみようかと決意して、2016年9月から加入したという感じです。

------NCL遠野に加入してからどんなことをしているのですか?

もともとは「Local Tech Lab」という名称ではなく、遠野で「Data Visualization(※データ数値等の情報を図やグラフ等を用いて可視化すること)をするという募集で加入しました。遠野の資源を可視化することで、課題解決の糸口を探っていくというものです。
僕はどちらかというとデータは揃っている前提で、それをどう見せるか、可視化できるかということにフォーカスを当てて考えていました。だけど、着任してみたらデータ化されている情報があまり多くなくて。データを集めるところから始めなければいけませんでした。データを集めるにも、僕は二拠点で生活をしていて、ずっと遠野にいるわけじゃないから、遠野でなにかに気づく機会というのもそんなに多くなくて。結構途方にくれていた感じがありました。どうしようかなって。
遠野に来た当初は、まだどんな地域なのかわからない状況だったので、遠野でデータを収集するとっかかりをいまいち得ることができずにいました。なので、まずは生産者の方々に役立つ「効率化」をテーマにしたアプリを作ってみようと考えました。できることを進めていきながら、Data Visualizationをするためのきっかけが掴めればいいかなという気持ちもありましたね。
それから、Data Visualizationとして、遠野市内を通る猿ヶ石川から水が流れこんでいる領域で、どういう土地の利用がされているかを可視化するマップを作成しました。さらに、最近では田んぼの土をかき混ぜて、水を濁らせることによって、雑草を生えにくくする合鴨ロボットの導入サポートを行っています。


------堀さんは東京でも自分の会社を持って事業をされていますね。

フリーランスとして活動していくことに限界を感じて、よく一緒に仕事をしていたパートナーと2017年10月に汎株式会社を設立しました。
クライアントからお仕事をいただくような形式が多くて、インスタレーション制作、商品開発のコンサルタント業務、広告案件を主にやっています。

------東京での事業とNCL遠野でのことに何か意識的な区別はありますか?

東京での仕事のひとつの母体として、汎株式会社があります。そこから視野を広げるための活動のひとつの拠点としてNCL遠野としての活動があります。僕の場合はどうしてもNCL遠野だけにフォーカスを当てることができないなと思っているんです。
テクノロジーを使って制作したものをサービスとして成立させて、多くの人に利用してもらうためには、労力がかなり必要になってくるんですね。その労力はなかなか一つの小さなまちでペイできる規模ではなくて。どこかの地方で作ったものが、その地域だけでしか使えないという感じになると、採算がとれないんですよ。どこかの地域で生まれたサービスでも、そこからスケールアウトしていって、他の多くの地域で使えるようにするという考え方でやっていかないと、事業として成り立たせることは難しいです。
だから僕自身も、遠野でやっていることが、遠野だけのことではなくなっていくんですね。遠野をきっかけに生まれるものはあるかもしれないけど、遠野以外でも使えるものにするために、他の地域のことを考える必要がある。実際に今は山口県や石川県との関わりもあります。だから東京や遠野と区別する線引はどんどん曖昧になってきてる感じはありますね。

------遠野には実際どれくらいきているのですか?

遠野には実用実験の時とか、必要がある時に来るような形にしています。なので頻繁にくる時期もあれば、まったく来ない時期もあります。
将来的には、やっぱり自分たちのペースで、自分たちのやりたいことをやっていきたいなっていう気持ちを持っているので、遠野に来て、いろいろなものを見たり、いろいろな人と話をすることでその可能性が広がっていくと思っています。遠野で得ることが、必ずしも仕事に直結しなくてもいいのかなと。自分のあり方とかアンテナの広げ方のひとつとして、遠野があると思っています。遠野に来てみないとわからないことは多くありました。都会で生活しているだけだと、やっぱり閉じているような感覚があるから。どうやって地域の人たちが生活をしているかとか、人口が減っていく中でどんな気持ちで過ごしているのかとか、これまで知らなかったいろんな世界を見ることができたのは良かったです。
やっぱり何かの分野だけで閉じこもりたくないんです。自分の活動できるフィールドを広げるためには、いろんな側面から物事を見れるようになったほうがいいですよね。


------NCL遠野に興味がある人へ、コメントをお願いします。

NCL遠野は地域おこし協力隊の制度を活用しているので、地域の方々からは「地域おこし協力隊員」として見られることも多いです。そのため、地域内での活動だけが地域内の方々からの評価になってしまうといった側面もあると思いますが、NCLの制度を上手く利用しながら、自分から積極的に動いていけることが重要だと思います。受け身だと何も出てこない。そういう状態だと、自由だからこそ、何をやっていいかわからないってことになりかねないので、自分のモチベーションを高めて、動いていける気持ちが重要なんじゃないかなって思います。

インタビューの終盤には「NCL遠野のメンバーとして遠野での活動だけにフォーカスを当てるっていうのは僕の場合はできないなと思っていて。たぶんそうすると僕の切り取られ方としては適切じゃないと思うんです」とお話してくれた堀さん。
堀さんの働き方や生活の仕方は決して、NCL遠野の「Local Tech Lab」メンバーだからということではありません。
堀さんらしい働き方や暮らし方を続けながら「一定の分野だけでなく、様々な価値観に触れていきたい」と、堀さんはこれからも「おもしろいこと、より楽しくなっていくこと」に邁進していきます。


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