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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンを見てきたけど

映画館、ついに隔席規制が解除されたんですね。隣に女性の方が座ってきたんですけど、映画が始まって5分ぐらいでもう泣いてました。上映直後に劇場にすすり泣く声が響く映画ってあんまりないんじゃないでしょうか?

お客同士の間隔が詰まっていると、劇場全体の泣いたり笑ったりのリアクションがダイレクトに伝わってきますね。映画館で見る醍醐味だと思った。

そして映画が始まる前、しれっと動く劇場のカーテン。またか...と。海獣の子供や、ロンド・ロンド・ロンドなど、頭がおかしい(褒め言葉)アニメ映画は最近シネマスコープで上映される傾向がありますが、本作もやっぱりシネスコでした。

シネスコの効果の一つとして、「はじっこ感の強調」があります。キャラクターを画面の一番端に配置させると、信じられないぐらいはじっこ過ぎて不安定な画になりますよね。市長とヴァイオレットが対面したときのシーンは、まさにこの効果が生きていました。

僕がこの映画で一番良いなと思ったのは細かい映像表現です。といっても、かなり本編と関係ないところです。

たとえば街灯が自動点灯するのを寂しく眺めているおじさん。特に説明はありませんが、見ればすぐにガス灯に明かりを灯すための仕事をしていた人だと分かります。時代が変わり、必要とされなくなった仕事をしていた人です。ドールの仕事も識字率が上がったことで必要とされなくなりましたが、こんなところでさりげなく時代の移ろいを表現しているの、上手すぎる...。

ついでにぐっと来たのがレストランの看板です。そこには「レストラン」の文字はなく、高速道路のサービスエリアのレストランのアイコンみたいな絵が描かれているのみです。文盲の人でも食事処とわかるようにしていたわけですね。ドールが必要とされるぐらい識字率が低い時代だと分かります。

感想とか

すご〜く、京都アニメーションらしいアニメでした!京都アニメーションらしいとは何か?僕は「省略せず全てを描き尽す」ことだと勝手に思っています。

よく京アニと比べられるシャフトはこの真逆で、「省略することで全てを描こうとする」んですよね。どちらが良い悪いとかはないんですけれど、本作はやはり省略せず、全て描くところは描くということを徹底していたように思います。

だって、上映時間おかしくないですか。140分!!140分はやばいですよ。普通アニメ映画って100分前後が多いと思いますし、この前見に行ったスタァライトの総集編映画でも120分。新作映画で、あの悲惨な事件があって、このコロナ渦で、140分。140分間、一切の手抜きなく、全てのキャラクターが、背景美術が、タイプライターが、現代の日本の、いや世界の最高水準のアニメーションで描かれ続けている。

僕は、これだけでもうこの映画は評価されるべきだと思いました。内容の良し悪し以前に、これだけのクオリティが140分も続くこと、それを可能としている京都アニメーションの仕事が凄すぎる。

じゃあなぜこんなに長くなったのかと言えば、やはりユリスが亡くなるシーンとギルベルト少佐のシーンが、とにかく長い...。
前にもこんな気持ちになったな...と思いました。「さよならの朝に約束の花をかざろう」です。うろ覚えなんですけれど、出産シーンみたいなところ、めちゃくちゃ長く描写されてましたね。吉田玲子脚本らしいところなのか分からないのですが、いかに正しく実時間で描くかに挑戦している気がします。

ユリスが亡くなるところって、きついものがあると思うんです。非常に感動的なシーンなのは間違いないけれど、同時に見ていて辛すぎる。だから、おそらく普通のアニメなら少しぼかした表現にすると思うんです。例えば、そもそも死相が出ている顔を出さなかったり、お別れのシーンもさっと済まして終わらせたり、そもそも亡くなったことを直接描かず、風が吹いたとか、ドアがバタンとしまったりとか、花が落ちるなどの比喩で描いたり...。

それを、ド直球で描いちゃうところがやばすぎる。一切逃げてない。

そしてギルベルト少佐と会うシーンも長い。新海誠の映画か、と思いました。

早く会ってくれ!!!!!!!!!!

以外の感情を無くしてしまった。いやいやいや分かってはいるんです。一度は死んだことにされていた人間が、実は生きていた。罪を背負いながら生きていた、そんな死んでいる人間が、自分の罪の象徴であるヴァイオレットと出会うためには時間が必要。

これが普通の映画なら、多分本当に一発ギルベルトをぶん殴って終わり!!ってこともできるわけですけど、本作はまじで実時間で描いてる感があるんですよね。

一切逃げず、全ての表現を余すところなく、全て描き切った。だからこそ、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという一人の女性の人生を描きました、と製作陣が胸を張って言えるのでしょうね。その点に関しては本当に、完璧すぎるほど完璧でした。

終わりに

今年のアニメ映画もやばいですね。年初からメイドインアビス、夏にはロンド・ロンド・ロンドとFate、そして本作。

ちなみに、ヴァイオレットが船から飛び降りるところは普通に笑いました。京アニだから飛び降りるところをめちゃくちゃ詳細に描くのかなと思ったら、あまりにもあっさりと海に飛び込む。このあっさりさが、ギルベルトに会うためなら当然海ぐらい飛び込むで?という感じが出ていて良かった。

そして、船に一人取り残されたホッジンズ.........。”親”としての役割を終えた瞬間の出来事。わりとここが一番泣けたところかもしれないです。

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