高円寺で飲んだくれ阿佐ヶ谷でよその猫に浮気した③ 串カツビリー

あんなに来ていた抱瓶の場所がてんで思い出せない。
自分でも怖くなりながらiPhoneに恐る恐る聞いてみた。遠くは無さそう。古本市をのぞきながら向かう。


クラフトビールの味比べ3種、
そのうち気に入った銘柄をパイントで1杯、
仕上げのパクチーレモンサワーでほろ酔いだった。


駅から放射状に伸びた商店街を進むと
急激に宙を飛び上がり24歳のわたしを空から眺めた。
家人に、
 昔一緒に行ったよね〜
なんて口にしたがハッキリと思い出した。

うん、違うね。ありゃもっと昔の頃の彼だ。
 ふふっ
と唇を結びながらお店に近づくと扉に小さな貼り紙をみつけた。

コロナ陽性のスタッフが出たためしばらく休業とのこと。
配達にきた業者さんへどう対応して欲しいかも記されている。
よっぽど急なことだったのだろうなあ。


今日の宴はお開きかな・・・
と思いつつ散歩を続け、ディナータイムにはまだ早いこの時間に開けてくれているお店を発見。

いいねぇ、久しぶりに串揚げ食べようか。

不思議な空気を纏った店主が招き入れてくれ我等は千鳥足でビリーに吸い込まれて行く。

お寿司と同じく、なにから始めて何でしめるのか。
食通気取りで注文し意気揚々とかじりつく。


揚げたてサイコー!
サクサク軽い!何本でもいけるわ、これ!!


って、そのうち
おやおやぁ?と手が止まりだす。
揚げ物をもろともせずに食べていた頑丈な胃はどこへやら。
おやおやぁ?

カウンターでMacBookを触りながら1人で飲んでいる若者をふふふんっと一瞥し
まだまだ飲めるんだ!食べれるんだ!と鼻息を荒くしたものの、二週目のオーダーを食べ切ったところで尻尾を巻いて退散することにした。

こんなにも美味しいのに
まだまだ食べたいのにお腹が応えてくれない。
非常に切ない。

MacBookの彼は、iPhoneの着信と共に
店を去った後だった。
満腹で帰る我らのつむじからは敗北感が湯気となってのぼっていたに違いない。

夕焼けが、楽しい時間の終わりを告げているようで、眉毛の辺りがキュッとなった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?