『紅い月』

えーなに?窓の外見てって?
知ってるよ、今日皆既月食なんでしょ?
そんなのいちいち盛り上がらなくても……。
月が赤くなって綺麗?
うーん、キレイかなぁ?私は別にいいや。
……んもうしつこいなぁ!私は別にいいんだってば!
そうでなきゃ……君を……。

えっ、わ、うわっ!ちょっと強引だよ!
あ……ああ、見ちゃった。見ちゃった……!
見ちゃダメだったのに!君のせいだよ……。ああ、ああ、ああああ!

あ~あ、ざぁんねん。
折角「表の私」が我慢してたのに、あんたが「紅い月」なんか見せるから……。
あたし?あたしは夜の眷属ヴァンパイア。
「表の私」は頑張ってあんたのためにあたしの人格を封印してたみたいだけど……アンタのせいで――「紅い月」のおかげで封印が解かれたってわけ。
アンタの愛しいあの子はもう戻ってこない。残念だったわね?
ふふふ、おめめまんまるくしちゃって。かわいいわねぇ。
解放してくれて、ありがとう。それじゃあ――いただきまぁす。

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