『雨宿りする男』

いやぁひどい雨ですねぇ。あなたもここで雨宿りですかぁ?
そんな露骨に変なやつに絡まれたみたいな顔しないでくださいよ〜。同じ屋根の下に集まった者同士、仲良くしましょう?ね、ね。
そうだ、面白いお話を聞かせてあげますから、ねっ。

その昔、とある男女がおりましてね。
それはもう仲睦まじくて世間では評判でした。
でね、それが女性の方は世界的にも有名な歌手でね?それはそれは綺麗な歌声をしていたんです。
その歌声に誰もが夢中になりました。
ーーそう、とある男も例外ではなかったのです。
あるところに、人を殺すのが楽しくてしょうがない男がおりました。
その男がとある日オペラ座に忍び込んで聴いてしまったのですその姫君の歌を!
なんと哀れにもその男は、歌姫の歌声に取り憑かれてしまいました。
その男はいつしかその歌姫の歌声を独り占めしたいと思うようになりました。
そしてその男は劇場に忍び込み……そして舞台の上でその歌姫を手にかけた!

ーーなんて、そんなことあったら面白いと思いません?
……なんか私、さっきより距離置かれてません?おかしいなぁ。
まぁ、今日あなたに出会ってこの話が出来たのも、この土砂降りのおかげですね。これもご縁ですね。いやぁ助かりましたよ。
……あなたの悲鳴は、この土砂降りにかき消されるのですから。いひひひひ!

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