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成仏してもらおうの話/前編

皆様、こんにちは。
私の記事によく登場するソムリエさん、道具のお方さん、お坊さんが全員集合しました。

私たちは、私の作ったプランに基づいて寺町を観光するつもりが、大きく方向を逸れていきます。

長くなりますので、とりあえず今回は前編として切らせて頂きます。

登場人物

  • ソムリエ
    神社の狛犬や木々など、様々な存在の声が聴こえる不思議なお方


  • ソムリエさんと道具のお方さんとお坊さんが大好き

  • 道具のお方
    お菓子作りから、仕事としての土地の浄化まで何でもこなすお方

  • お坊さん
    西の高名な霊山の僧侶


東京都某所

私たちは、都内屈指の寺町を巡ろうと予定を立てておりました。

朝集合して、まずはとある大寺院へと向かいました。
おみくじで凶が出やすいと噂で、実際に私たちの中でも、何度引いても凶が続く人がいました。

私はふだんおみくじを引かないのですが、今回、そこで何故か引いてみることにしました。

私「。。。これ、大吉だ・・・」
道具のお方「え、すごい!!!」

おみくじの文章は、周りの素晴らしい人との交流の中で、幸せや発展を得るという内容が繰り返し書かれていました。

私「・・・」

顔を上げると、そこには私の大好きで尊敬する、ソムリエさん、道具のお方さん、お坊さんがいました。

私「えー今目の前にいるんだけどぉ!」

このありがたい大吉みくじを、私は、ソムリエさんからプレゼントされたばかりの新しいリュックサックに詰め込み、数時間後にくっちゃくちゃの状態で取り出すという失態を犯します。

(数時間後に私を励ます道具のお方さん「大吉にこだわらない女、かっこいいぞ!」)

ひとまず、大吉みくじをリュックサックにしまってから私たちは、次なる目的の寺院に向かって歩き始めました。

お坊さん「僕、子供の頃に家族旅行に行くと毎回体調を崩してたんですね。特に海が・・・大学生になって、克服したかなと思って出かけても、また同じでした」

私「何か連れてきてしまうのかもしれないですよね。
憑く、というか・・・」

お坊さん「今思えば、そうですね」

ソムリエ「あのさぁ、ちょっと寄り道していい?」

この一言が、私たちを思わぬ出来事へと連れだしていくのでした。

お坊さんだからこそ

ソムリエ「お坊さんにお願いしたいことがあるんですけど、いいですか?
関西から東京までわざわざ来て下さって、観光しようというときに悪いんですけど」

お坊さん「ええ、どうぞ。僕にできることでしたら」

ソムリエ「この先に、〇〇橋というのがありまして、空襲のときに橋の両側から人々が押し寄せて大勢亡くなったという悲惨な歴史が残っているんですね。

そこが、アタシ、子供の頃からずっと気になってて・・・。
お坊さん何か見えたり感じたりしたら、供養してもらってもいいですか?」

お坊さん「分かりました・・・」

その橋は、私も昨年、空襲記念館にて資料を見ていました。
私の家から、バスでそう遠くないのですが、とはいえ、ほとんど通らない橋でした。

そういえば、そういえばですが、バスのルートにこの橋の名前が付いた停留所があるけれど、実際の橋を迂回するのです。

何か理由があるのかもしれません。

道具のお方「あー、〇〇橋ねぇ。私も遠出するときに車で通らなきゃいけないから、来るたび気になってた」←ピンと来ている

ソムリエ「あの橋、土台が今でも空襲のときのもののままなんですよ。

・・・良かった、お坊さんが来てくれて。もう、小学生の頃もそうだけど、そうじゃなくっても20~30年くらい気がかりだったから・・・」

道具のお方「小さい頃から空襲のあった場所を気にしてるって、どういうこと?!

ソムリエさん、道具のお方さん、お坊さんはそれぞれ、清めることをずっと続けてきた方々です。

姿勢がいいお三方は、道をふさがぬよう、なるべく縦列になってきびきびと歩いていきます。

観光で来たとか全然気にしておらず、やることをやるのだとして、空気がグッと深く変わりました。

軽口を叩いていた私も聞き漏らすまいと付いていきます。

橋に到着

私たちは、橋の前の交差点にたどり着きました。

ソムリエ「ここで、何か感じますか?」

お坊さん「。。。」

ソムリエ「あ、ウケる!お坊さんもうお礼言われてる!

道具のお方「わはは!ホントだ~やる前から!」

交差点の角には、「かたじけない」という看板がありました。

橋の欄干は重厚な石造りで、空襲当時のものと思われる、黒く焦げている跡、なんとも言えない色合いに変わっている部分があります。

私たちは、ゆっくりゆっくりと橋を渡りました。

ソムリエ「やるなら、欄干か、橋の真ん中だわ・・・」

私たちは橋の真ん中まで歩き、下側を見ましたが、高さがありすぎて、下にある戦争当時の土台が見えませんでした。
ただ、広い水面が流れています。

先頭を歩くソムリエは渋い顔をしています。

ソムリエ「重い~うわ~・・・うようよいる。。。

私が子どもの頃よりかは本当に雰囲気が良くなった。きっと地元の人達が、何か、気持ちを向け続けてくれているに違いないよねえ。
それでも、まだ多い。。。」

私(都会だから、空気が悪くて不快で、重い雰囲気に感じるというのとは違うのかな???)

そして反対岸まで行き、私たちは思い切って欄干の下におりました。
するとソムリエと道具のお方が何やら話し合っています。

ソムリエ「空襲で焼けた人達が、今でも、苦しいよ、と言っているのが聞こえるから、お水を供えるのはどうでしょう」

道具のお方「それがいいね」

反対岸の欄干の下は、小さな自然公園のような様相で、木々が生えていました。しかし、ほとんど人がいないのが印象的でした。

道具のお方「水、どこで買えるだろ」

ソムリエ「あちらに自動販売機がありそう

私は見回しましたが、一切、自動販売機のようなものは目に入ってきませんでした。欄干と、コンクリートの壁や木々ばかりです。

一体、ソムリエは何を見て言ったのだろうかと深く考えませんでしたが、とりあえずソムリエの歩いて行った道を私も追いました。

・・・そこには実際に自動販売機があったのです。見えなかったはずなのに。

ソムリエ、道具のお方、お坊さんは事情が呑み込めているようでした。

ソムリエ「1人1本ね?」

ペットボトルの水をガコンと買って、私に渡してきます。

私「? 私、お茶ありますから(水筒を見せる)」

ソムリエ「それ捨てないで!これ!」←有無を言わせず渡される

ソムリエは自分のぶんを買い足しました。
お坊さんと道具のお方も後に続きました。

ソムリエ「(水を3分の1くらいまで飲んで、私を見る)これ、飲んでもいいからね?」

私はいちおう頷いて、同じくらい飲みました。

引き続き、私だけ事情が呑み込めていないまま、その、エビアンのペットボトルを持って、3人の後に着いて行きました。

曇り空だけれども、真夏日の予報通り、ジリジリとした白い日差しが頭を熱していました。

私たちは、欄干の下を通って、今度は道路の反対側の欄干に出てきました。

ソムリエ「ここ、この欄干に水を捨てましょう」

空襲の頃からある、やはり怖いような気のする欄干には、たいへん好都合なことに水が流れやすいような溝が作られていました。
ソムリエは、そこにペットボトルの水を少量、しかし丁寧にかけていきます。

他の2人もそれに続きました。

私(お水をお供えするって、こういうことか・・・)

私はようやく理解したものの、何だかまだ水をかけたくなくて、ひとまず様子を見ておりました。

だって、たくさんの方々が戦火で焦げたり、もはや、体が溶けたりして苦しんだ場所です。

ソムリエさん「3月だったんですよね・・・それが起きたのは」

この日は、6月とはいえ夏らしい暑さでした。
ただし戦火はもっと激しく、煙でむせ返るような、息も熱いようなものでしたでしょう。

今回ソムリエさんがやりたいと思っているくらいの供養が終わるまでに、4人のペットボトルの水が全て無くなってしまったら怖いな、と思ったのです。

一度水を流したソムリエ「・・・ほらやっぱり、やるのがいい、いや、望まれている感じがする。自動販売機、あっちって言われたもん」←何かしらの見えない存在から

私(全然ピンと来なかった・・・)

ソムリエ「実際、行ってみたらあったでしょ。自動販売機」

私「はい・・・」

ソムリエ「お坊さんに、お経、どこで頼もう・・・あの欄干がいいかな?」

私たちは橋を渡って、また元の岸の欄干に行きつきました。

ソムリエ「あ、だめだ!ここは!」

後からソムリエが語ったところだと、その欄干の周りにホームレスの方々がたくさん丸まって眠っていらっしゃったのですが、そこでの読経を、今回の供養対象の霊たちが嫌がったのだそうでした。

そこでも私以外の3人は欄干に水をかけていまして、道具のお方は、慰霊碑を見つけてぱーっと駆け寄っていき、えいっ!と水をかけて、横にいたホームレスらしきおっちゃんに「お!」とびっくりされ、「すみません!」と明るく声掛けしていました。

私はこの時点でまだ、自分が何をやるべきなのか見えてきていません。
とりあえず、曇り空とはいえじりじりと暑い中を一列に歩きながら、私の体は、その会話を記憶しようと訴えかけてきました。

すべて覚えておいて、noteに投稿するのが私の役割だと実感がありました。

これで橋を一周しましたが、ソムリエはまだ厳しい顔をしています。

ソムリエ「もう一周、行きましょうか」

次回へ続きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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