公開できない卒業制作のおかげで、望み通りの部屋に引っ越せた話(その2)

1.大学1年生、引っ越す。


大学に入学した私は、諸事情が重なり、入学後3ヶ月住んだ部屋からの引っ越しを決意します。

唯一、車を持っている知り合いということで、新しく知り合った友達に「引っ越しを手伝ってほしい」と連絡すると、「僕の副業は引っ越し屋です。君の話を聞いた感じだと、僕の車で十分だろう」という返事をいただきました。新しい暮らしを、目に見えない存在や宇宙から祝福されているような気持ちになったものでした。

新しい住居は、「家賃ができるだけ安いこと」と、「風呂とトイレが別れている」という2つの希望条件を満たした場所でした。他にも2件見たものの、この部屋は何だかとても懐かしい暖かい感じがしたのです。

荷物を運び入れてみると、備え付けの靴箱が壊れていたり(自腹で処分)、床の一部が腐っていたり、換気孔の修理を頼んだところハリボテであったと判明したりなどなど、トラブルが絶えない物件でした。

隣の部屋のおば様が、毎日めずらしい笑い声をしているナ、と思っていたところ、それは旦那さんとの夜の営みであったことに気付いたり…。

また、床はフローリングで、床と壁の境目は洋室ならではの仕切り飾りがついているのに、押入れや和天井、引き戸という和洋混在の部屋。

私は気持ちが落ち着かず、ぐるぐると船酔いならぬ部屋酔いを始めていました。朝目覚めるたびに、ため息をつきました。

私の「(来年も、大学に在学し続けるのかが定まらないため)半年で退去しても良いか」という条件を飲んでくれた唯一の大家さん。その恩がありながら、部屋の細かい部分を生理的に受け入れられない自分へ嫌悪感まで抱き始めていました。

また家賃も格安だったので、隣の部屋の奥様が毎晩桃色の大絶叫を続けていることなど、到底告発できないのでした。


(続きます)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?