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ウクライナ・ロシア戦争 情報との接し方

謎々帝国のT・Oです!

ウクライナとロシアの間の戦争、刻一刻と状況が変化している。
そして、それを取り巻くメディアの情報も錯綜して、みんなが混乱していると思う。そんな情報の渦の中、まずはこれを押さえておくべき、といえる三人の識者の見解があったので、自分なりにそれらを要約したので、今回はそれらを紹介したいと思う。(ようやくする過程で本人の意図と変わってしまっている可能性があるため、リンクを貼っておくので彼らの原文も見て欲しい。)

歴史学者 ユヴァル・ノア・ハラリ

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まずはホモサピエンズ前史の著者として有名な歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが今年2022年2月28日にイギリスの新聞ガーディアン紙に緊急寄稿した記事から紹介する。

ハラリは戦争で勝利することよりも、その後征服し、統治していくことのほうがはるかに難しいことを指摘している。それはアメリカがイラクで、ソビエトがアフガニスタンで学んだことだ。
これは当然今回の戦争にもあてはまる。

ウクライナ人が殺されるたびにウクライナ人のロシアに対する憎しみは深まっていく。そして、抑圧された国にとって憎しみは何世代にもわたって抵抗を続ける力となる。で、ハラリが言ってる一番重要なことは、「国家は最終的に物語の上に築かれる」ということ。そして、今この戦争で起きていることは、何十年、何百年、何世代にもわたって語りつがれていく物語を増やしている、とハラリは指摘している。

首都キエフからの脱出を拒み、アメリカに対して「今必要なのは車ではなく弾薬だ」と言った大統領ゼレンスキー。
ロシアの軍艦に対して「くたばれ」と言ったスネーク島の兵士。
ロシアの戦車を阻止しようとして道路に座り込んだ民間人達......。長い目で見れば、こうした物語は国創りにとって戦車よりも重要なんだと。国をつくっていくのはこのようなことだ、とハラリは言っている。

そして、プーチンはこのことを誰よりもよく知っているはずだ、とも言っている。なぜならプーチンは子供の頃、ナチスの残虐行為や、ロシアがレニングラード包囲において勇敢に戦った物語を聞きながら成長したからだ。

でも彼は今、自らをヒトラー役にしたてあげることで、同じような物語を作ってしまっているとハラリは言ってる。

チベット仏教僧 マチウ・リカール

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次に紹介するのは、パスツール研究所で、分子生物学の博士号を取得後、ヒマラヤに渡り、チベット仏教僧となったフランス人、マチウ・リカールが、3月4日に書いた自らのブログ
先に断っておきたいのがこのブログには、戦争のことも、ウクライナのことも、ロシアのことも、一切書かれていないということだ。
でもこの戦争にもあてはめられるような内容なので、ひょっとしたら遠回しにこの戦争に対する自らの見解を述べたたのかもしれない。

最近のメディアは、プーチンの一連の行動を、彼の「信念」と関連付けて語ることが多いが、マチウはこのブログで「信念」について言及し、

信念とは、「証拠なしに何かを受け入れること」である。

と述べている。そして、

信念に固執することは、事実に対して公平な調査を行った結果として導かれる結論にいたるよりも、ずっと簡単である。

とも述べている。
信念と、その派生物である偏見や判断、認知バイアス、自らが所属する集団やリーダー、噂、ドグマなどが持つ意見など、こういったことに固執することは、確かに努力をほとんど必要としない。

バイアスに関してはもっと切り込んでいて、マチウはイギリスの心理学者で神経科学者のアンドレア・カッペスの見解を引用している。

自分の信念を明らかに否定する証拠を提示されても、脳は、自らの信念を確認できない情報を利用することができない。

自分が持つ判断や偏見が信頼に値するかをチェックすることは、そもそも不可能であることを観察している。同時に、脳は信念を確証する情報を記録し、利用していく。そうなると、人間は自分の意見を確認するものだけに注意を払う方向へ向かうから、有効な知識を得ることがさらに難しくなる。心理学では、これを「確証バイアス」と呼ぶそうだ。

こんな感じで、人間は過去の選択や判断を否定するような情報を無視する傾向がある。このバイアスは、政治から科学、教育に至るまで、多くの分野で大きな影響を及ぼしている。また、最近ではフェイクニュースが氾濫しているから、確証バイアスが生み出す問題はより深刻になってきているといえると思う。

現代仏教僧 松本紹圭

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最後に、インド商科大学院でMBAを取得し、ダボス会議への出席経験もある、日本の現代仏教僧・松本紹圭さんが3月7日にnoteで書いたことを紹介する。
松本さんはこのnote記事で、プロパガンダとどう向き合きあうべきかを提示している。ちなみにウィキによるとプロパガンダとはこう定義されている。

プロパガンダとは、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する意図を持った行為の事である。 通常情報戦、心理戦、もしくは宣伝戦、世論戦と和訳され、しばしば大きな政治的意味を持つ。 政治宣伝ともいう。

で、松本さん曰くプロパガンダは、欲望や、恐れを巧みに利用して、僕等にはたらきかけてくる。そしてプロパガンダが僕らにハッキングしてくる入り口は、僕らの自我であり、僕らの執着心とのことだ。

ブッダは、執着を滅することで、いかなるものにもハッキングされない自由な心を手に入れた。しかし、執着から離れることのできない「凡夫」つまり「普通」の人である僕らが、ハッキングを防ぐにはどうするればいいのか。
それに対して松本さんは、そもそも「防ぐ」という発想から離れることが必要だと述べている。防ぐどころか、自分はすでに完全にハッキングされているということを認識することから始めたい、とも言っている。

結局のところ、僕らにとって危険なのは、生半可に防衛手段を講じることで、一つのプロパガンダ一色に染まり切ることだ。あらゆるプロパガンダは、侵入が完了した瞬間、今度は、他のプロパガンダが入ってこようとすることを、防ごうとする。その時、僕らが中途半端に持っている「防衛手段」を利用して、プロパガンダは門を閉めてしまおうとする。僕らにできることは、門を開けておくこと。いや、初めから門を壊してしまうことなんだ。そうすれば、あらゆるものにハッキングされながらも、全ては通り過ぎていくだろう。なぜならプロパガンダはお互いが戦い合う性質を持っているからだ。その性質を利用するんだ、と松本さんはそう述べている。

以上が、僕が取り上げたかった、戦争が始まってから発信された3人の発言だ。ここでとりあげた内容はウクライナ・ロシア間の戦争だけでなく、あらゆる戦争、ひいては喧嘩からコミュケーションに流用できることだと思う。
それから、戦争はウクライナ・ロシアの間だけで起きているわけではないということも大事だよね。
アフリカや中東でも絶えず紛争が起きている。
誰かが誰かのために犠牲になることで循環しているこの世界の構図。
どうにかして変えていきたいよね。

謎々帝国の今後の予定は未定だけど何かアップするにしてもウクライナ・ロシア問題とは限らないと思う。世界ではいろんな問題が起きているわけだから見過ごちがちな問題に注意しなければならない。それにこういう時だからこそ芸術やエンターテイメントの火を絶やしてはいけないとも思ってる。だからその辺からのアプローチもあるかもしれない。

最後にウクライナとロシアの被害者たち、それから中東やアフリカ、いや苦しみを抱えながら生きているすべての人たちの痛みが少しでも減ることを願ってます。

[参考資料]
ユヴァル・ノア・ハラリのGuardian紙への寄稿文
https://www.theguardian.com/profile/y...

マチウ・リカールのブログ
https://www.matthieuricard.org/en/blo...

松本紹圭さんのnote記事
https://note.com/shoukei/n/n0e811353f6f4

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