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完全監視社会と化した中国、その概要をざっくり解説

謎々帝国のT・Oです!
今回のテーマは、「完全監視社会と化した中国、その概要をざっくり解説」でお送りします。

中国の監視社会は凄いことになっている、とよく耳にはするものの、実際どう凄いのかイメージが漠然している人も多いのではないだろうか。
だから今回は、中国の監視システムをザザザっと紹介しようと思う。

■ 監視カメラのネットワーク化
 「プロジェクト スカイ ネット」(天網工程)

中国政府は今、中国全土に2億台以上設置された監視カメラのネットワーク化プロジェクトProject Sky Net「天網工程」を進めている。
これは、天網ティエンワン(ネットワーク化)、天算ティエンスヮン(画像高速処理能力)、天智ティエンヂー(人工知能の応用)の三つのテクノロジーで構成されている。

この3つを駆使すると例えば以下のことが可能になる。(*注1)

1. 顔認証技術
これはみんなもご存知の有名なシステムだ。
すでに市民の顔画像データベースは身分証登録データから取得できており、一定解像度以上の監視カメラであれば、映り込んだ人物の氏名、身分証番号などの個人情報を1秒以内に特定できるようになっている。
ちなみに広東省深セン市などでは、横断歩道のないところで道路を渡った人物を監視カメラで発見し、顔認識技術を使って個人を特定。
街中の大型ディスプレーに顔写真と氏名などを晒す取り組みを実施している。

2. 映像定位人流量分析技術
監視映像から人の密集度を計測し、それが単なる混雑なのか、暴動につながりかねない異常な密集なのかを判別することができる。

3. 禁止区域異常侵入警報技術
監視カメラ内に禁止区域をバーチャルに設定し、その中で写真撮影などの禁止行為が行われるとアラートを発することを可能にする。

4. 人員異常行為警報技術
喧嘩などの暴力行為を検知して、アラートを発することができる。

5. ボディサイン識別技術
監視カメラに向かって手を振ると、緊急事態発生と認識し、警察や救急にアラートを発する。

6. 携帯物体識別技術
その人が手にしているものを判別する。
カメラ、スマートフォン、刃物などを瞬時に識別することが可能だ。

その他にも、ネットのライブ配信も監視対象となっていて、公序良俗に反する行為が行われるとアラートが発せられる。

監視カメラ

■ 密告制度

インターネットの監視と言えば、国家インターネット情報弁公室とネット警察が監視員を駆使し、インターネットの検閲に毎日勤しんでいる。

元ネット監視員、劉力明さんによると、中国当局の下請けの検閲専門民営企業の監視員の人数は100万~200万人いるという。
「五毛党」ことネット評論員も同じ規模でいるようだ。
ネット評論員とは、中国当局の命令を執行し世論操作を行っている人達で、共産党の内部のメンバーで構成されている。

また、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)での投稿、SNS・微信(ウィーチャット)でのやりとりは、発言のフィルター機能で常に監視されている。

一方、未だに中国のいくつもの地域で思想調査のためにアナログで古典的な監視制度を条例で行なっている。

それが密告制度だ。

内容に応じて細かに報奨金学が決められている。
凄いのは広東省の例で、「最も讃えるべき密告者」三人を迎えて警察署で表彰大会を行うことになり、お盆に大量の賞金を並べてそれを持たせて記念撮影まですることになった。
密告者のプライバシーを公にするのはマズイということで、なんとパンダのマスクをかぶらせて記念撮影した。

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■ 社会信用システム

今、世界中で注目されているのが社会信用システムだ。
これは国民や企業をAIによるビッグデータの分析を駆使して評価していく。
個々人の「信用」は、各地方自治体が収集した、行政処罰、司法判決、社会保険料納入情報、交通違反情報などが集まった中国全国信用情報シェアプラットフォームを活用して判断される。
その結果、「失信被執行人」に該当してしまうと、政府サイトやメディアで名前やIDを公開され、航空機や高速鉄道の利用の禁止、子供の私立学校への進学制限のペナルティなどが課せられる。
現在、中国で新たな商取引をする際にはこのリストで名前を検索することが通例になっているようだ。

目隠し

また、民間では芝麻信用に代表される信用スコアが普及し始めている。
芝麻信用はアリババグループのアント・フィナンシャルサービス傘下のサービス機構で、信用スコアは5つの観点から評価されている。
学歴や職業、居住地域の「身分特質」、消費面の際立った行動の「行為偏好」、SNS上の交友関係、友達の数・質などの「人脈関係」、一般的なクレジット履歴の「信用歴史」、過去の支払い能力の「履行能力」の5つだ。
評価に必要なデータはアリババグループが手がける決済アプリや SNSからも引っ張ってきているようだ。
信用スコアの範囲は350~950点で5つのランクに分けられている。
中国では個人の信用を担保するものがなかったので、特に都市部の若者においてこの信用スコアが社的信用度を評価する手段として注目されてきている。
信用スコアが高いとアリババグループの金融関連会社でローンの金利が優遇されるという大きなメリットがある。
また、一定スコア以上の人しか参加できない婚活パーティや就職試験などの機会を得ることができたり、ビザ取得手続きが簡単になる、などの特典もあるようだ。

ただ、この芝麻信用、日本を含め世界中が誇張して報道している傾向がある。

中国人の多くが芝麻信用の信用スコアを基に生きているような記事も見受けられるが、実際にはまだそんなに普及していないようだ。
そもそも中国の人口が14億人であるのに対して、芝麻信用のユーザー数は2017年末時点で4,150万人しかいなかった。
そして、それ以降の人数はまだ発表されていない。
今後浸透していく可能性はあるけどね。(*注2)

ごま信用


最後に、現在のウイグル自治区の管理状況はこれまで紹介してきた中国の監視システムをフル活用した、その更に上にある。
これに関してはまたいつか動画を作れればと思う。

というわけで今回はここまで。
しばらく更新できなさそうなんだよね。
でも、いつの日かI'll be back だよ。

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ではでは謎謎帝国T・Oでした。
またね。

■ 注記

*注1
https://www.google.com/amp/s/ascii.jp/elem/000/001/846/1846766/amp/
*注2
悪しき監視社会制度として伝えられることが多い社会信用システムだが、発端は真っ当な理由だった。

経済成長のためには効率的な金融サービスが欠かせない。
しかし、中国は金融履歴を持たない人が大多数を占めるため、国民の大多数にサービスを提供することができないという問題があった。2015年末においても人口カバー率は35%にとどまっていた。

そこで、クレジットヒストリーに代わる融資の判断材料として、信用スコアが登場した。

2015年に民間機関8社にその設立準備の許可が出され、そのうちのひとつがIT企業大手アリババグループだ。

芝麻信用の広報担当者は、「学生や農民など、これまで金融サービスを享受できなかった人もカバーするのが狙い」だと話していた。
しかし、設立準備を認められた芝麻信用を含む8社だったが、最終的には正式に認可を得ることはできなかった。どの企業も客観的かつ公正なサービスを作れなかったというのが政府の建て前だが、これまで中央銀行が独占してきた個人信用情報の管理を民間に手渡したくなかったのでは、と勘ぐる人も少なくない。

その代わり、8社と中国インターネット金融協会が共同出資して「百行征信」という個人信用情報機関が設立された。クレジットヒストリーを活用した信用評価は従来通り中央銀行の個人信用情報データベースが担当し、それがカバーできない層、すなわち芝麻信用がターゲットとした層については百行征信が担当する。具体的な運用については明らかになっていないが、各社の収集した情報を統合して評価するものになるという。

芝麻信用をはじめとする信用スコアは金融機関の融資判断に材料を提供することはできなくなったが、百行征信へのデータ提供という形で関与するほか、自社の金融サービスで活用されている。
また、一部地域政府でも信用スコアが取り入れられはじめているようだが、こちらもまだ影響力は低いようだ。

詳しく知りたい人はジャーナリスト高口康太さんの記事を読もう。
https://www.google.com/amp/s/media.dglab.com/2019/03/30-sesamecredit-01/amp/

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