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コロナで加速する監視社会 -アニメ・PYCHO-PASS「シビュラシステム」が現実に?!

謎々帝国のT・Oです!

今回のテーマは、
コロナで加速する監視社会 -アニメ・PYCHO-PASS「シビュラシステム」が現実に?!

シビュラシステムとは、アニメ・サイコパスに登場する「包括的生涯福祉支援システム」のこと。
アニメでは、このシステムが国民一人一人の精神状態を常に分析し、数値化している。

その数値には「犯罪係数」というものがあり、100をこえると未だ犯罪を犯していなくても公安局によって隔離や処刑されてしまう。
作品の中では「ドミネーター」という銃のような形をしたデバイスで犯罪係数を測定するという設定になっているが、実は、同様のシステムがとっくに僕達の社会でも出回っているということをご存知だろうか?

■ 犯行前に不審者を検知する防犯システムの登場


その名も、DEFENDER Xというロシア政府機関が開発したセキュリティシステム。このシステムは、カメラに映った人間の精神状態を自動的に解析し、不審者を犯行前に検知する。

上の映像は2014年ソチオリンピックのものだから、今から6年前には世に出ていたということになる。
ちなみにソチオリンピックの会場でDEFENDER Xが検知した不審人物のうち、92%もの人たちが入場違反の条件を持っていたそうだ。

DEFENDER Xは、身体全体の振動をはじめとする膨大な基礎データによって精神状態を解析しているわけだが、なんと開発のために十万人以上を人体実験した。
犯罪を引き起こす可能性の指数を検出するわけだから、当然、膨大な数の囚人も実験しているだろう。
日本では絶対に作れないセキュリティシステムだ。

しかしこのDEFENDER X、なんと日本でも手に入る。
株式会社シールドのホームページによると、本体価格は250万円で購入できるようだ。
リースだと6年リースで月々39,800円。
すでに設置実績もある。(*注1)

■ コロナ対策で各国に広がる監視システム

実は新型コロナの影響で、国によってはDEFENDER Xのような防犯システムが国家主導で設置される可能性が出てきた。

例えばイスラエルのネタニヤフ首相は、テロ対策に用いている監視システムを、コロナ感染患者の追跡にも使用することを宣言した。
議会の当該小委員会がこのことを拒むと、ネタニヤフ首相は「緊急命令」を出してこの方針を押し通したのだ。
ロシアのモスクワでは、顔認識テクノロジーを搭載した10万台のカメラのネットワークを駆使して、検疫下に置かれた人が路上に立ち入らないようにしている。
中国は、コロナ騒動が起こる前から中国全土に2億台以上の監視カメラを設置していたし、顔認識テクノロジーなどの監視システムも導引していた。
もちろんコロナ対策でもそのシステムをフルに活用している。
なんと、フランスでもパリやカンヌで、マスクの着用をチェックする監視ソフトウェアを試験的に設置した。
アメリカも、4月にカナダのDraganfly社が開発した「パンデミックドローン」のテスト飛行をコネチカット州ウェストポートの警察署が行った。(*注2)
このドローンには、最大50M以内にいる人の体温、呼吸、心拍数を測定するセンサーが搭載されていて、カメラを通して咳やくしゃみをしているかのチェックもできる。
他にも、インドポーランドドバイ韓国台湾シンガポールなど、コロナのために監視システムを強化した国はたくさんある。

緊急事態になると、大なり小なり国家の独裁化が進む。
そして国民は健康とプライバシーを天秤にかけられたとき、どうしても健康を優先してしまう。
コロナ渦において、国家と国民の意向が合致したため、一気に監視システムの強化が進んだ。

■ 進む国家による個人情報の収集

そしてまた、コロナの影響で治安が急激に悪化しているため、今後この監視システムは治安対策にも使われていく可能性がある。

たとえば、8月3日にニューヨーク市警察が発表した今年2020年7月の犯罪統計を見てみよう。次に示されるように、去年7月の件数に比べて増加傾向にある。

強盗事件:989件 → 1297件(131%増加)
殺人事件:34件 → 54件(158%増加)
銃撃事件:88件 → 244件(277%増加)

もちろんNYの治安の悪化には警察によるジョージ・フロイドさんへの圧迫死事件も影響しているが、そもそも人種差別はコロナによって増加している社会問題の代表例である。

そしてさらに、治安の悪化は経済が回復がしない限り今後も増していく。
だから、コロナのために強化された監視システム、もっというと、コロナのために行われている個人情報の収集とその情報の利用は、コロナという非常事態の間だけの一時的措置として発令されたとしても、治安対策のために継続される可能が高いと思われる。
このような時に発動される一時的措置は、その後も残り続けるのが世の常である。
そして、国民がコロナ対策で個人情報を提供する動機と、犯罪抑止のために個人情報を提供する動機は、どちらも「安心安全」だ。

このことは、日本も無関係ではいられない。
なぜなら、失業率が上がると犯罪率が高まるということは、日本も例外ではないからだ。(*注3)
法務省の犯罪白書が、バブル崩壊やリーマンショックが日本の犯罪率を増加させた事を指摘している。(*注4)
しかも、日本人は世界でもとりわけ安心安全を求める傾向にあり、コロナの経済的なマイナスインパクトはリーマンショックよりはるかに大きい。よって、コロナ不安に治安の急激な悪化が加わると、日本にも今までにない国家による監視システムが設置されるかもしれない。

そして、そこにもしDEFENDER Xのような精神測定が可能なシステムが追加された場合、日本特有の恐ろしい事態が生じうる。日本には、「医療保護入院」という大問題を生んでいる強制入院制度があるからだ。(*注5)

■ 世界に類を見ない日本の強制入院制度問題

これは、本人の許可ナシで精神保健指定医1名の判断と家族1名の同意さえあれば、精神病院への強制入院が公権力によらずにできてしまう制度だ。
裁判所などの関与無しにこんなことができてしまうのは、世界でも日本だけだ。
そのため、監視カメラによる精神測定が公に導入されてしまうと、罪を犯していないのに、突然医師と警察が押しかけてきて治療名目で拘束され、強制入院させられてしまう、なんてこともありうるかもしれない。
また、国家にとって都合が悪い人間の精神指数を恣意的に操作して、治療名目で拘束し監禁する、なんていうこともありうるかもしれない。

ちなみに、日本の精神病床の数は世界の約2割を占めている。
また、強制入院の数はヨーロッパが人口100万人辺り73人しかいないのに対し、日本はなんと約15倍の1,000人超という驚くべき状況だ。
そして、2018年度の東京都における退院請求審査206件のうち、精神医療審査会が退院を認めたのは、なんとたったの1件だけ。
これは、医療保護入院で強制的に入院させられた場合、自分や家族の意思で出てこられる可能性はほぼ0%という事を意味する。

■ 皮下監視社会の到来

コロナ対策の監視システムといえば、アプリ型のものもある。
これに関しては、いま世界で最も注目されている知識人の一人、ユヴァル・ノア・ハラリ「皮下監視」を警告している。(*注4)
皮下監視とは、指の温度や血圧など、スマートフォンやスマートウォッチに触れる事を通して得られる生体情報の監視のことだ。
ハラリは以前より、「これからは、ITとバイオテクノロジーの融合が進む」ということを主張していたが、コロナの影響でこの皮下監視が一気に進むことを警告している。
生体情報というと、健康にまつわることを想像するかもしれないが、ハラリは生体情報を収集していくと、もっとすごいことが分かると言っている。

それは何かというと、「感情」だ。

感情も生理現象だから、生体情報とITを組み合わせればリアルタイムで個々人の感情を把握することができる。
SFじみた話に聞こえるかもしれないが、例えばApple社を例にとってみよう。
アップルウォッチでは、すでに心拍数を測定することが可能。
心拍数がわかるだけでもユーザーが興奮や緊張状態にあるのか、それともリラックス状態にあるのか、感情を判断することができる。
ということは、アップルウォッチをつけている人がアップルTVのどの番組のどの場面で興奮したり緊張状態に陥ったりしたかのリサーチをすることが、技術的にはすでに可能だということだ。
そしてテクノロジーの発展が進み、より正確な感情を分析することができるようになると、さらにすごいことが起きる。
つまり、スマートウォッチを身に着けながら政治系の番組を見ている人が、とある政治家に対して、とある政策に対して、どのような感情を持っているかを、企業が、場合によっては国家が把握することが、技術的には可能になってくる。
具体的に言えば、例えばニュース番組に菅さんや枝野さんの姿が出てきた時、あるいは憲法改正案の話が始まった時、君がどのような感情を抱いているかのデータを収集することが、技術的に可能であるということだ。

最後に、もっとすごいことを言うと、このようなデバイスを身に着けることを例えば北朝鮮のような独裁国家で義務付けられたら一体どうなるか。金正恩委員長が現れる大集会で、周りが敬礼する中、怒りのシグナルを示してしまったら一体どうなるだろうか。そのデバイスの持ち主はただではすまないだろう。

という具合に、テクノロジーの進歩によって個人情報の収集が進むと、僕らの感情まで監視される可能性が出てくるのだ。

その結果、AIの方が僕らより僕ら自身のことについて、より多くのことを知りうる時代がやってくるかもしれない。
たとえば、レストランでどのメニューを選ぶべきか、将来のためにどの分野の学校へ進むべきか、なんてことも、AIに頼った方が満足度の高い決断ができる時代がやってくるかもしれない。

■ 一人一人によるチェック機能の重要性


ただ、言うまでもないが、この便利さの裏には強力な監視体制も同時に存在しているということだ。
そして、それはプライバシーが強烈なリスクにさらされる事を意味する。
でも、だからといって、そのリスクのために管理システムを全拒否しようと考えるのはナンセンスだし、監視システム強化の波を止めること自体、もはや不可能だ。
じゃあ、プライバシーをすべて明け渡すべきかといえば、それも違うと思う。
オール or ナッシングでは、ダメなのではないだろうか。

では、どうすればいいのだろう。

ザックリいうと、現時点でどのような監視システムが存在し、それは自分たちにとって必要なものなのか、そしてそのシステムが暴走せず正常に稼働しているかを、僕らユーザーや国民側がちゃんと把握しておく必要がある。
そして同時に、どのような監視システムが自分たちには必要で、現状の監視システムはどのような状態にあるのか、という目線でのチェックも必要だと思われる。
めんどくさい話だけれども、監視システムは僕らが生きている限り永遠についてまわる大きな問題だから、この問題から逃れることはできないだろう。
また、監視システムというと国家からの監視を連想しがちだが、民間のシステムもチェックした方がいい。
例えば、Googleアカウントがどんなシステムで、どんな歴史を経てきたのかを一度ちゃんと見直してみることをお勧めする。(*注7)
Googleアカウントは事実上世界最大級の監視システムだから。

というわけで、今回はここまで。
次回は「宗教で読み解くエヴァンゲリオン」をお送りする予定だよ。

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ではでは謎謎帝国T・Oでした。
またね。

■ 注記

*注1
defender xについて詳しく知りたい人は本システムを開発したロシア政府機関elsys社の日本法人がのホームページを見て欲しい。
*注2
ACLU(アメリカ自由人権協会)の講義を受け、実験は中止された。
*注3
日本はまだNY警察のような今年の犯罪に関する細かい統計データを発表していないが、コロナの影響で特に詐欺、空き巣(店舗やオフィスなどへの)、サイバー犯罪が増加しているので警察は警戒を呼びかけている。
*注4
バブル崩壊と犯罪情勢の関連性について
リーマンショックと窃盗犯罪の関連性について
*注5
医療保護入院問題は、日本の医療政策とそれに基づいた病院経営が生んでいる問題であるため医師側に自浄作用は見込めない。
国民が問題視し、政策を変えない限りこの問題はなくならないだろう。
医療保護入院問題は、1996年に精神科急性期治療病棟が、2002年にスーパー救急と呼ばれる精神科救急病棟が始まったことに端を発する。
まず注目すべきは、精神科救急病棟の報酬が精神一般病棟の3倍であるという事実だ。
加えて、精神科救急病棟の施設基準として、一つの病棟で強制入院を年間30件以上(現在は20件)受けることが必要なのである。
これでは、年間で3~5件しか措置入院を受けていなかった規模の病院が、精神科救急病棟を設立することを欲した場合、要件を満たすべく患者を無理くり強制入院させる事態が生じてしまうことは想像に難しくない。
また、
・新規入院者の6割以上が医療保護入院・措置入院などの非自発的入院(強制入院)でなければならない。
・個室あるいは保護室が病床数の半数以上でなければならない。
これらの基準を維持するために、実際には8割以上の強制入院を目標にしないと維持が難しいことになるようだ。
結果、医療保護入院と措置入院の届け出件数はこの16年間で倍増し、それにともない10年で隔離件数が33%増加、身体拘束は倍増した。

精神保健福祉法における入院形態には、大きく分けて①任意入院、②措置入院、③医療保護入院がある。

強制入院とは②と③を指し、繰り返し述べているように現在とりわけ問題視されているのが③の医療保護入院だ。
医療保護入院は、本人の同意がなくても、
・精神科病院の管理者が、
・家族等のうち、いずれかの者の同意があり、
・精神保健指定医1名の診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護の入院の必要があり、
・任意入院が行われる状態にないと判定された
場合に行われるとされている(精神保健福祉法33条1項)。
つまり、精神保健指定医1人が取り調べから裁判まで全てを担っているのような状態なのだ。
このプロセスで裁判所の令状を必要としないのは日本だけである
しかも、刑期の決まっている刑事事件に対して、医療保護入院には入院期間の定めがない。
この制度に詳しい小笠原基也弁護士は
「刑事法になぞらえて言えば、医療保護入院は、入院期間の決定をすべて指定医の判断にゆだねる絶対的不定期刑に等しく、近代法では罪刑法定主義の原則上、許されないとされているもの。本人の不利益があまりに大きすぎる制度だ」。
と述べている。
また、同じ強制入院でも、自傷や他害のおそれがある場合に適用される措置入院は、2人の指定医の診断を受け、都道府県知事が入院を決める制度だ。複数の医師と行政が介在することで、ある程度は第三者の視点が入りやすいが、医療保護入院にはそれもない。
つまり、医療保護入院は、ある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で、実際その件数は年々増加している。厚生労働省によれば、2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件(「衛生行政報告例」)。6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる。
さらに家族1人の同意が必要というのも、入院する時点に限ってのものだ。いったん入院してしまったら、その後家族が同意を撤回しても、入院継続の必要性の判断はあくまで指定医に委ねられることになる。
主治医の指示で、家族とも一切の面会、そして通話すら禁止された場合、家族は本人の意向を確認することが難しく、結局は医師の判断に委ねざるをえない。
つまり医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。

精神科病院の管理者は、入院後10日以内に保健所経由で入院届や入院予定期間を記載した入院診療計画を提出し、また、12か月ごとに定期病状報告を提出することになっており、精神医療審査会が審査することになっている。
しかしながら、入院継続不要と判断される割合は0%に近い(2016年度の衛生報告例)。
2014年では、医療保護入院の届出・定期報告267,000件のうち、入院形態変更になったのは、わずか18件。そして入院継続不要になったのは5件。
東京都の精神医療審査会が2018年度の退院請求審査206件のうち、退院を認めたのはたったの1件である。
医療保護入院の決定権限は、精神保健指定医に委ねられているが、指定医をチェックする精神医療審査会が機能していないのだ。
精神医療審査会の委員が日本で一番多い大阪でも40名で、年間18,000件の強制入院について、しっかりとチェックできるわけがない。
審査会の法律委員を務めた経験のある佐藤弁護士は、「審査会は非公開で、あたかも本人の出席を原則としないかのような運用で、請求しても認められないことが多く、しかも事実認定が裁判基準からすると緩すぎる」と、批判する。

この問題をより詳しく知りたい人は下記参照
https://toyokeizai.net/articles/-/331577
https://www.psy-jinken-osaka.org/archives/saishin/2967/
*注6
ハラリの皮下監視に関する記事を読みたい人は下記参照
http://web.kawade.co.jp/bungei/3473/
*注7
2012年3月1日、Googleがプライバシーポリシーを変更し、世界に衝撃を与えた。
同社の全サービス上で収集した各ユーザーの個人情報を全て統合することを宣言し、実行したからだ。
忘れてしまった人も多いかもしれないが(そもそも知らない世代もいるかもしれない)、昔はGoogleは各サービスで得られた個人情報は各サービス内のみで運用し、他のサービスと連結していなかった。
なぜならGoogleの各種サービス(検索、メール、ドキュメント、YouTube、カレンダー、マップetc)で得られた情報を統合してしまうと、ユーザーのプライバシーがGoogleに筒抜けになってしまうからである。
今ではこのような個人情報の取り扱いは当たり前となったとなっているが、当時のネットユーザーの感覚からすると衝撃的であり、脅威であった(EUはこの事態に対し、Googleの新プライバシーポリシーはEU法に違反するとして激しく非難した)。
中でも一番恐れられていたことは、アメリカ政府がGoogleの情報を利用し、世界中を監視下に置く可能性であった。
そして1年後、その脅威が現実となっていたことが明るみにされた。
アメリカ国家安全保障局(NSA)がグーグルのサーバーに密かにアクセスしていたことが、エドワード・スノーデンによってリークされたのだ。


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