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蘇る動画 ノーカット版

下記は、以前、かすみみたまさんのチャンネルでの怪談募集に応募した『蘇る動画』のノーカット版原稿です。
読んでいただけた動画のリンクも冒頭に置いておきます。朗読開始時間はその動画のコメント欄のタイムスタンプからどうぞ。
応募作品とノーカット版の違いも楽しんでいただけましたら何よりです。

かすみみたまさんの配信アーカイブはこちらになります。
様々な投稿者さんの怪談もとても興味深いので、是非どうぞ!

うちのチャンネルで公開している再生リストの中に、『『何か』さん関係動画貯蔵庫』というものがあります。
『何か』さんというのは、うちで発生してる怪奇現象を
『どうせなら、目に優しいデザインで、捉えられる状態にしておいた方がまだ安心出来る』
と思って、アプリを用いて擬人化したものです。私は霊は見えないのでそうしました。
外見はロングの黒髪に、グラマラスな長身の、額と両頬に走る刀傷が痛々しい、おしゃぶりをくわえたお姉さんです。
おしゃぶりは
『これまで私の知る範囲で、『何か』さんは喋った事がない』
という点を強調する為に付けましたが、総合的に正体不明な点を強みにして、スリラーSF系動画、ホラーPV、イメージ写真などで活躍していただいております。


『活動者を応援して下さっている方々は、ちょっとした事でもお祝いしたいものだから、その気持ちを大切にしてあげて』
というツイートをどこかで読み、深く同意した私は、毎月、活動記念日として定めた日に、何かしらのお礼を込めて配信、もしくは動画をアップする事にしています。
その時には、『何か』さんの動画も結構、数が増えて来ていたので、ピックアップまとめパート1を作る事にしました。
びっくり系は私も嫌なので、じっとり系ホラーの予告編をイメージ。
『新規撮り下ろしシーンもちらほらあると楽しいかも』
という事で、スマホのムービーモードを利用し、人がなるべく映らない様に注意しながら、ロケをしました。
入り込んだ人達にはバッチリモザイクをかけています。これからもロケハンする事はあるでしょうから、そこはきちんとしたい。
アプリの、モザイクをかける対象の範囲追尾機能などに助けられながらの、結構大変な作業です。

さて。
うちでは作業に入る前に、まず、お香を炊いておきます。ホラー関係の動画編集の場合、ジャンルのせいか、炊くと炊かないとでは、作業の安定性が大きく変わって来るのです。
また、これをする事で、左肩に妙な重みや、指が食い込む感じの痛みが走る事も無くなったり、動画に妙な声や音が入る事も減ります。
前者はホコリを払う様にはたくと大抵軽くなり、後者は音声を抜き出してカットしたりしているはずですが、その辺の記憶が抜け落ちています。
現状、生活に支障はないので、それくらいの霊障で済むなら、かえってありがたいくらい。

作業です。
これまでの『何か』さんのそれぞれの動画からカットしたものを、なるべく、びっくり系にならぬ様に並べて繋げます。
一時保存するにはドラフトという項目を選択します。
一本の動画としての保存はまた、別にモードがあります。
動画データが重いせいか、編集アプリは固まりやすいので、こまめにそうする必要性がありました。
例を挙げますと、例えば30分の動画としてまとめたい場合、先に10分ずつの動画を三本用意し、一旦保存。そして、最後に全部を繋げて保存する流れにした方が安定します。
『保存ミスったからまた保存してみて』
という内容の表示が出る事もありますので、その待ち時間は、ゆったりしてても緊張します。

途中、妙な事に気付きました。
『【例によって】『何か』さんのお盆【謎MV】』(以下、『お盆』)
という動画から切り出した部分、それも他の動画と同じ様に切り貼りしているはずなのですが、ドラフト後、編集モードを除くと、カットする前に戻っているのです。
その動画から抜き出した一部パートが、途中、ずっと続いてる状態。
『作者びいきで変なとこだけ長く残す』
というのはありがちですし、嫌です。
編集中の部分の元動画を見た方は明らかにダレるでしょう。
そんなものは作りたくありません。
ですので、またカットして、全体にバランスよく散りばめます。
そしてドラフト。
今度はOKでしょう。そう思って、休憩に入りました。


作業を再開。いじってたデータを開きます。
映像部分をフリックして、中断した場所を見ます。

各所に切り貼りしたはずの『お盆』の一部が、またも、元の状態になっていました。
全体をざっと見ます。そこだけが散りばめる前に戻っている、などというのはこれまでになかった事なので、流石に首を傾げました。
動画の中、しれっと映っている、基本的に真顔のおしゃぶり怪異を見据えます。
(ちょっと今回は、かまちょが過ぎるんじゃないですか)
過去にこう問いかける事で進行がスムーズになった事があったのです。
それと、例の、お稲荷様と恵比寿様のお札、それと、仏前に別のお供えをして、手を合わせました。
(記念動画をきちんと完成させたいので、お守り下さい)
と。

『何か』さんがこのお二方と拮抗しているからなのか、一向に進みません。
この流れがしばらく続きました。
(これは進まないパターンだ)
そう思い、やむを得ず、その日はアプリを閉じて休みました。


翌日、作業をしながら、原因を考えてみました。
『何か』さんは日頃は所謂恐ろしいキャラだと認識しています。
が、今回の動画では被害者ポジ。つまり、まな板の上の鯉状態にされている訳で、あちらも大変に不本意なのかも知れません。

(そうだとしたら、それで、
『刻んでも刻んでも復活する動画』
として、邪魔してるって事かな……)


正体不明ながら、『何か』さんも生命体っぽい所があるんだな、と感じました。


その上で、心の中で『何か』さんに拝んでみたり、お供えを可能な範囲で豪華にしてみたりするなどして、どうにか動画は出来上がりました。
不意にスムーズに進んだのです。理解を得られたのかもしれませんし、何か後で、強烈なのを喰らわして来る可能性もあります。
危険を回避すべく、日々、お札と仏前に手を合わせ、同時に、『何か』さんの得体のしれなさを布教すべく、ちょいちょい動画制作をさせていただいております。


さて。
動画投稿完了から少しして、海外のスラングで、
『白人至上主義者』
と、揶揄するコメントが付きました。
それはもう消しましたが、『何か』さんが白人キャラに見える様です。
見た感じ、それも無理はないのですが、その上で、
『『何か』さんは私が制御してる訳ではないから、バチが当たっても知らんよ』
と思いました。

ご存知の方はお分かりでしょうが、『何か』さんの肌だって、白いのではありませんもんね。

青白いのですから。

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