幸せになりたいと呟いて飛び降りた私の背中が目に焼き付いた。

下を覗き込めば既にその姿は無く、私は白昼夢でも見たのだろうかと首を傾げる。

目線を少し上げると、道向こうに二人連れで寄り添って歩く私がいた。幸せで仕方ないといったように笑うその内側で、本当は愛だの恋だのを信じていないことを私は知っている。

二人の世界を作り上げるかのような姿を見ていられず顔を背けると、部屋の片隅には膝を抱えて蹲る私がいた。自分には価値が無いだとか、もう嫌だ死にたい、とか言ってる癖に、自ら命を断つつもりなんて更々無いことを私は知っている。

私は何て可哀想なんだ、と独りよがりで悦に浸っている姿を見ていられず扉を開けると、そこには何処かの教室の真ん中でいじめっ子からいじめられっ子を庇う私がいた。人を傷付けるのは止めなさい!と言っているその本心が、ただ正義を振りかざす自分に酔っているだけだと私は知っている。

自分こそが正しいのだと胸を張るその姿を見ていられず、私は思わず目を瞑った。


脳裏に浮かぶ私の顔。顔。顔。


笑った顔のその目の奥がとても冷たく光っていた。

腕で隠した泣き濡れた顔は見えないように口角を上げていた。

眦を吊り上げ悪者を見据えた顔は頬を薄赤く染めていた。

どいつもこいつも。
取り繕うばかりが上手くなりやがって。

全部見様見真似で覚えただけだろう。

本当の私は何も持っていない癖に。

ただただ空っぽの身の内を満たす何かが欲しいだけの癖に。

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