好きな平均律を探そう!【044】
こんにちは、こんばんわ、ユートピア!
変拍子兄さんです!
今日は、平均律ってたくさんあるけどどれを選べばいいの?
というお話です。
結論から言うと、とりあえず31平均律だーー!
と言いたくなってしまいますが、
それはさておき、自分の好みの雰囲気を探し出そうというものです。
この話を理解すれば、12平均律で下書きを作って、
好きな平均律に乗り換えることが容易にできるようになりますし
N平均律、あ~こんな系だろうな~といった予測もつきやすくなります。
さて、今回のお話は通常の1オクターブ12音の鍵盤を基本として語っていきます。
微分音を使うとはいっても、
鍵盤の配置が12音音律から離れすぎていると直観的に音を配置しづらくなってきます。
(もちろん、鍵盤の構造を無視した配置でも慣れてしまえばどうにかなります。)
そのため今回は、何の平均律を選ぶにしても
12音選抜されたものが出てくると考えてください。
・シャープスタイルとフラットスタイル
次に任意の平均律から12音を選抜する際、黒鍵の5つは#なのか♭なのか
という話があります。
12平均律では、一致するのでどっちでもいいね、ってことで終わるんですが…
その他の平均律の場合、D#とEbが違うといった、両者が異なるということがほとんどです。
そして
黒鍵すべてをシャープとしよう、というものをシャープスタイル
黒鍵すべてフラットとしよう、というものをフラットスタイル
と呼ぶことにしています。
ごちゃまぜにするのは、KeyC以外でやるときに混乱するのでおすすめできません。
シャープスタイルとフラットスタイルのどっちを採用するかは、
皆さんが普段作る音楽によくシャープが付くかフラットが付くかから判断すると良いでしょう。
そんなの知らんわって人は…。
シャープスタイルにしましょう!
今日の解説も、シャープスタイルで話していきますので。
理由は割愛しますが、僕は完全にシャープスタイルで作曲しています。
たまにフラットスタイルでスケールを作ってて事故が起こるので、
もし作曲をする際は、必ず一途にどっちか決めてください。
・音律の硬い/軟らかい
さて、ここからが本題です。
突然ですが、音律に「硬い(Hard)」と「軟らかい(Soft)」があります。
中心を12平均律として
硬い音律ほど、完全5度・長3度が高くなり、イカレた感じになっていきます
逆に軟らかい音律ほど、低くなり、渋く、無表情な感じになっていきます。
感じ方には個人差があると思うので、実際に聞いてみるといいでしょう。
その際、テイスティングのひとつの評価軸がこの見方になっています。
ちなみに平均律に限らず、ピタゴラス音律やミーントーンも
これと同様の聞き方で区別がつきます。
もうちょっと厳密に聴き方をお伝えすると
・5度、2度、4度
・3度、7度、6度
この2グループに分けて、うなり具合、明るさ・暗さを聞き比べていきます。
そして、
基準の平均律からHard・Softに変化させていく思考法を
「トーンハンドル」と呼んでいます
最終的には、作ったメロディを曲想に合わせてトーンハンドルしていく
あるいは曲中でトーンハンドルしちゃうという技もきっとできるようになるでしょう。
(トラックが増えて面倒ですけどw)
・Scale Workshop
さて、次に実際にどうやって聞くのか?という話ですが
Scale workshop というWebツールを使います。
https://sevish.com/scaleworkshop/?mode_type=intervals
ここになんやかんや入力していって音律を作っていくのですが
僕があらかじめシャープスタイルで代表選手を作っておきました。
こいつを開いて、キーボードで音が鳴りますので、
好きに音を鳴らしながら、聞き比べてください。
また、気に入った平均律のsclファイルやtunファイルをエクスポートして、
SerumやVitalに適用しても使うのもいいですね。
・極端な平均律は?
硬さのお話をしましたが、端っこにいる平均律は何者なのでしょうか?
最硬が5平均律
最軟が7平均律
です。
Hardな平均律は5度がどんどん大きくなり、4度がどんどん狭くなります。
完全4度=オクターブ ー 完全5度 ですからね
最終的に、デカくなる長3度と縮んでいく4度が一致します。
C#はDに、D#はEに、DbはCに、EbはDに 追いついていきます。
12音のあらゆるピッチが5音に集結していくわけです。
反対側に進んでいくとどうなるか?
Softな平均律は長3度が縮み、4度が伸び
最終的に、C-D-E-F-G-A-B が等間隔になります。
C#はCに、D#はDに、DbはDに、EbはEに 縮んでいきます。
シャープフラットの幅が0になっていくイメージですね。
この現象をお伝えするために、
5平均律、7平均律ともに、ピッチが重複したスケールを作成しています。
(これをオーバーラップ配置と呼んでいます)
実際のScale Workshopでは
スケールデータの下方に数直線として、スケールがプロットされているので
これの変遷を観察してみるのもよいでしょう。
・トーンハンドルツアー開始!
さて今回用意した平均律はこの9種類です
とりあえずこいつら十分だろうと思ってます。
万が一、痒い所に手が届かない!って方向けにいいますと
中間の平均律、実は両隣を足し算すると出せます。
これとこれの間ほしい!って時に計算してみると良いでしょう。
(要するにこういうことね)
それでは、最軟の7平均律から最硬の5平均律に向かって順番に見て、聞いていきましょう!
(ちなみに、以下全てシャープスタイルです)
先述のとおり、一番極端Softな平均律です
ここからスタートすると何のことかわかりませんが、
逆走するとC#→Cとなる様が理解できるでしょう
この音律ではメジャーとマイナーが一致し、区別がなくなります。
3度は342¢なので、まあニュートラルというべきですかね。
26平均律ではC#(0¢=Cとすると)が半々音ぐらいの幅になっています
SoftやHardが過ぎると、構造上の#と絶対値的#が合わなくなるという現象が起こります。
長3度は純正の386.3¢よりも下回り、ややニュートラルのような音程です。
19EDO
https://sevish.com/scaleworkshop/?name=19EDO&data=63.1578947368%0A189.4736842105%0A252.6315789474%0A378.9473684211%0A505.2631578947%0A568.4210526316%0A694.7368421053%0A757.8947368421%0A884.2105263158%0A947.3684210526%0A1073.6842105263%0A1200.&freq=523.251131&midi=72&vert=5&horiz=1&colors=white%20black%20white%20white%20black%20white%20black%20white%20white%20black%20white%20black&waveform=semisine&env=organ
19平均律は1/3ミーントーンに近く、古典調律的な雰囲気があります。
マイナーが純正315¢に近く綺麗なマイナーが鳴らせます。
(シャープスタイルにはありませんが、長6度がほぼ純正884¢であることから分かります。)
5度系の音程は、やや暗い感じがするものの問題なく使えそうです。
31EDO
https://sevish.com/scaleworkshop/?name=31EDO&data=77.4193548387%0A193.5483870968%0A270.9677419355%0A387.0967741935%0A503.2258064516%0A580.6451612903%0A696.7741935484%0A774.1935483871%0A890.3225806452%0A967.7419354839%0A1083.8709677419%0A1200.&freq=523.251131&midi=72&vert=5&horiz=1&colors=white%20black%20white%20white%20black%20white%20black%20white%20white%20black%20white%20black&waveform=triangle&env=organ
僕がオススメしている31平均律です
長3度が純正の386¢に近く、A#も7倍音:969¢に近い
そして1/4ミーントーンとほぼ同じで
ニュートラルスケールも一意に決まるという優れものです。
12EDO
https://sevish.com/scaleworkshop/?name=12%20equal%20divisions%20of%202%2F1&data=100.%0A200.%0A300.%0A400.%0A500.%0A600.%0A700.%0A800.%0A900.%0A1000.%0A1100.%0A1200.&freq=440&midi=69&vert=5&horiz=1&colors=white%20black%20white%20white%20black%20white%20black%20white%20white%20black%20white%20black&waveform=square&env=organ
中間地点の12平均律ではC-C# C#-Dまでの距離が揃います。
Soft側ではC-C# < C#-D
C-C#-Db-D という風に#と♭はスワップしません。
僕がSoft側を勧めるのはこっちの方が分かりやすいからという理由もあります。
Hard側では C-C# > C#-D となり
C-Db-C#-D といった風に#と♭がスワップします
ここがSoft側の音律とHard側の音律を切り替える際にややこしいところですね。
ここからはHard側の音律になります。
軽めのHardの場合は完全5度が純正の701.9¢に近い値になり
パワーコードやsus2が澄んだ響きになります。
ちなみに完全5度が純正に近いと名高い53平均律は
29よりもSoft、12よりちょっとHardの位置にいます。
17EDO
https://sevish.com/scaleworkshop/?name=17EDO&data=141.1764705882%0A211.7647058824%0A352.9411764706%0A423.5294117647%0A494.1176470588%0A635.2941176471%0A705.8823529412%0A847.0588235294%0A917.6470588235%0A1058.8235294118%0A1129.4117647059%0A1200.&freq=523.251131&midi=72&vert=5&horiz=1&colors=white%20black%20white%20white%20black%20white%20black%20white%20white%20black%20white%20black&waveform=semisine&env=organ
サイケデリックな雰囲気がでてくるのがこのあたりから
3度も5度も高めでイカれた感じがでてきます。
そして#の幅が強半音(3/4音)に近づいてきます。
この辺のHardが#・♭の感覚を保てるギリギリのラインでしょう。
22EDO
https://sevish.com/scaleworkshop/?name=22EDO&data=163.6363636364%0A218.1818181818%0A381.8181818182%0A436.3636363636%0A490.9090909091%0A654.5454545455%0A709.0909090909%0A872.7272727273%0A927.2727272727%0A1090.9090909091%0A1145.4545454546%0A1200.&freq=523.251131&midi=72&vert=5&horiz=1&colors=white%20black%20white%20white%20black%20white%20black%20white%20white%20black%20white%20black&waveform=square&env=organ
3度は436¢となり、もはや純正音程9/7に近くなっています。
メジャーというよりは、スーパーメジャー
ダイアトニックスケールを鳴らしたら、大体レッドノートみたいな音律で
基本的にイカれた響きがします。
22平均律は、E=436¢の1Step下に純正に近い3度もあります。
こいつをダイアトニックスケールとして扱えないという歯がゆさはあります。
5EDO (オーバーラップ配置)
最終形態の5平均律です。
スレンドロ音階もだいたいこんな感じなので、エスニックな雰囲気も出せます。
Aが7倍音:969¢に近づくという特性もあります。
12平均律を5平均律にコンバートすると音のカブリが多くて難しいので
50平均律(ややSoft)に移して、そこからペンタトニック的な部分を5平均律にすると運用が楽だなって考えたりしました。
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お好みの平均律は見つかりましたか?
ひとつの平均律に絞り切れなくてもSoft←→Hardの直線上でこの辺!
とかあたりが付けるだけでも構いません。
僕がオススメするのは31平均律です。
微分音の基礎として取り組むべしと提唱していますが
ひとつの音律を使いこなせば、トーンハンドルであらゆる平均律に拡張できるというとことです。
・12音音律だけの確認で果たして良いのか?
実は今回のお話は、ダイアトニックスケールのみの観点で品定めをするお話でした。
結局、ダイアトニックスケールを核として作曲するのが一番現実的なので、絞っていましたが
もっと別の観点でも考えてみたいという方もいるでしょう。
例えば、7倍音・ブルーノートは音律上にあるのか、とか
これはSoft側の平均律の シャープにあたるピッチが、7倍音系に近い値になります。この性質を利用して、ブルーノートの良しあしを決めると良いでしょう。
では、11倍音は?
これはSoft側ではF#が11倍音:551¢に近いかを見ると良いでしょう
Hard側ではF#が下方11倍音:648¢に近いかを見てください。
ダイアトニックスケールに11倍音が含まれているかどうかがわかります。
残念ながら12音以外のピッチが倍音に合ってるかは今回の検証ではわかりません。
この検証方法のアラですね。
加えて、ダイアトニックスケールではない別のスケールに関しては
今回の検証方法では全く分かりませんし、Hard-Softの直線も別途作成する必要があります。
その比較がしたいのであれば手始めに
基本のMOSスケールについてお話することになりそうですね。
・シームレスにすることもできる
今回のトーンハンドル、平均律限定で話してましたので
全音:半音 が整数比になります。
これを実数に拡張する、というトーンハンドルも理論上は可能です。
実際にGolden MOS という、全音:半音を黄金比にしてみました!みたいな微分音もありますので
その時は焦らず、トーンハンドル直線のどの位置にいるんや?
っていう見方で捌いてください。
でもまあ、とりあえず先ほどの9種類だけでも結構多いですから
無茶は禁物ですよ!
・どうやって12音を選んだのか?
今回しれっと、シャープスタイルの12音を用意しましたが
それは、一体どういう風に作っていたのかを話しましょう。
この図で大体分かるかと思いますが
①平均律から5度のステップ数=ジェネレーターを割り出す
②12音それぞれジェネレーター何回分か決める
③それを合わせる&オクターブ内に戻す
という風にエクセル上で計算します。
フラットスタイルの場合はこうですね。
◆〆
実際に作曲中にトーンハンドルをやってみようとすると、フラットがどこかわからなくなったり、セミクロマチックはどうすればいいとか色々面倒ごとは起きます。
N平均律の特性を活かすというレベルで作曲しようとするとまたひと手間かかり、音名のネーミング方法も考え直そうかと思ってるところです。
トーンハンドルについてもっと語りことはあるんですが、
気になる方は、変拍子ラボか変態音楽理論アカデミーの配信でお会いしましょう!
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