見出し画像

ピアノで微分音を鳴らすな!キモリティ理論【034】

こんにちは、こんばんわ、ユートピア!
変拍子兄さんのお時間です

今回は微分音作曲のための楽器・音色選びお話です
世の中には様々な楽器があり、微分音との相性というものが
少なからずあります

奏法上、微分音が出しづらい楽器で微分音を出すと
聞き慣れないことから、不気味さを感じさせたりすることがあります
そのため、微分音で作曲するには
楽器と微分音の相性を考えたうえで作曲に取り組む必要があります

タイトルではピアノで微分音を鳴らすな!と強気に出ましたが
これはピアノと微分音の相性を考えたうえでのこと、
それでは今日は、微分音と楽器の相性について考えてみることにしましょう

◆キモリティとは

まず初めに
僕が提唱する概念「キモリティ」について解説していきましょう

キモリティ」とは楽器や音色がもつ微分音のキモさのことを指します
そのまんまですね。
キモリティが高い音色というのは、微分音のキモさが目立ちやすく
キモリティが低い音色は、さりげなくなります
実際の音程にもキモリティの差がありますが、今回は置いておきましょう

微分音の刺激が強すぎて、作曲をする気になれないという場合は
キモリティの低い音色を使ってみるとよいでしょう
逆に、微分音を使ってるのに、実感があんまりって場合はキモリティの高めの音色を使いましょう

ミキシング(EQやコンプ)の影響で、キモリティが変化してしまうこともありますので
ざっくりとした性質であると考えてもらってOKです


◆キモリティのクラス分け 


キモリティをざっくりロー、ミドル、ハイと分けてみましょう
ロー→エレピ・笛・ベース
ミドル→ギター・ストリングス
ハイ→ピアノ

楽器はざっくりとこんな感じで把握しておくとよいでしょう


・ローキモリティ

音が揺れやすく、なめらかな音色は微分音を演奏したときの
キモさが少ない部類となります
ベースはそもそもが、低く音程感が弱めなためローキモリティとなります
微分音を使っても自然な仕上がりなることが多く
場合によっては一体化して、音色として聞こえてくることもあります


・ミドルキモリティ
音の揺れ/揺れないを使い分ける系統の音色は、キモさは状況次第となります
ローキモやハイキモとの比較でキモリティが変わるといったところでしょう
ローキモリティと比べると悪目立ちする可能性もありますから
メインの音色に対して譲歩できてるか?
それとも目立たせるか?の対比がミドルキモを扱う醍醐味となるでしょう

・ハイキモリティ
音の揺れを想定した構造ではない楽器の場合、微分音を鳴らしたとき
かなりキモいです
音感が鋭い人なら悲鳴を上げるレベルの破壊力を持っています
微分音アピールをしっかりしたい場合はハイキモリティの音色を使用しましょう。
そうでない場合は、控えめに使いましょう。
要するにピアノはこの部類に当てはまりますので、要注意な音色となります


◆キモリティの尺度

さて、ここからはキモリティがどのようにできているのか
詳しく解説していきましょう

キモリティの尺度となるのは「音程感」です
具体的に言うならば、「ド」なのか「ド#」なのか判別がつく場合
音程感があるといえます
そうではなくて、ある音域のどのあたりかが鳴っているといった場合は
音程感はありません

音程感が緩いと微分音とコモントーンの差が曖昧になりますので
音程感がはっきりしているものほどキモリティが高く
音程感が緩いものほど、キモリティが低くなります

それでは、音程感の要素を細かく見ていきましょう
主に6つの要素がかかわってきます

①倍音成分が少ない
②非整数倍音が多い
③ピッチが揺れる(揺れても違和感がない)
④サステインが短い
⑤主要音域が低め/かなり高い
⑥インハーモニシティが高い

これらを満たすものが多いほど、ローキモリティになっていきます
具体的に見ていきましょう

①倍音成分が少ない
・性質
倍音成分が少ないというのはまろやかな、丸い音色のこと
印象としては素朴・純朴といったところ
スペクトラムアナライザで見ると、線(ピーク)が数本しかないように
表示されます。
逆に倍音成分が多いと派手な印象になり
スペアナ上では、線(ピーク)がぎっしりした感じになります

素朴というのは、地味であるわけですから
微分音も地味な印象になり、目立ちづらくなります

・例
柔らかめな歌声や笛(ウィンド系)、エレピなどがこれにあたります
シンセでいうと、サイン波や三角波なども該当します


②非整数倍音が多い
・性質
非整数倍音成分が多い音色というのはカサカサとした質感を出しているもの
こちらもまた、音程感を曖昧にするのでキモリティが低くなります

スペアナ上で見ると、線(ピーク)の合間合間に小さなピークが点在しています。
正確な倍音上にないというのが非整数倍音です。

・例
ささやき声やティンパニ、
ノイズにレゾナンスフィルターをかけた音色などが該当します


③ピッチが揺れる
・性質

楽器の構造上、ピッチが揺れるものであったり
コーラスなどの揺らし効果が加わっているものも同様に
微分音判定が緩くなります
逆にピッチが均一なものは、微分音判定が厳しくなるため
ハイキモリティによって行きます

中間的なところでは
「ビブラート」と「ノンビブラート」の違いが明確な音色は
ややハイキモよりに感じることが多いでしょう

ピッチ揺れに関しては、経験的な印象が関わってくるため
聞き手の慣れ具合によって左右されるところでもあります

・例

これも歌声や笛などが該当します
バイオリンやギター・金管なども該当しますが、
「ビブラート」と「ノンビブラート」の違いが分かりやすいのでハイ寄りになります。まあ、ミドルキモリティと考えるとよいでしょう

逆にピアノやオートチューンボイス、マリンバなどは
本来音程は一定のはずなので、ハイキモリティになります

④サステインが短い

・性質
サステインが短いと、
音程を感じる時間が短くなるのでキモリティが低くなります
応用として、音価の細かいものものキモリティが低くなります

サステインが短い音色に対しては、リズムの方に気が向くという心理も働くことから音程感が緩くなります

・例
ナイロンギターやウクレレなど
すぐに音が消えてしまうものは、キモリティが低くなります
アコギ、ギターのディストーションのように
音が太くなると音程感が増すためキモリティが高くなります



⑤主要音域が低い/結構高い

・性質

音域が低いと、音感が鈍りますからキモリティは低くなります
また結構高い音域の楽器は
倍音になじみやすく、一体化し音色に溶け込みやすいためキモリティが低いです

・例

ベースがまさに該当しますね
ただし、シンセベースのように、倍音成分がしっかりとしていて音程感がしっかりしている場合はこれには該当しません

また高音側ではグロッケン
微分音で重ねても、一体化して単音に聞こえてしまうことがあります
金属系の高音楽器は特に一体化しやすい傾向にあります


⑥インハーモニシティ

・性質

倍音の列の乱れ具合をインハーモニシティと呼びますが
乱れ具合が大きいほど、ローキモリティになっていきます。

倍音列が乱れているわけですから、音程感が緩くなるのもうなずけるでしょう。
感覚的には、自然な音色ほどインハーモニシティが高くなっています
印象としては渋いといった感じ。
さらに具体的にイメージするなら弦楽器がイメージしやすく
弦が太い・弦が短いほどインハーモニシティが高く
弦が長い・弦が細いほどインハーモニシティが低くなります
低いものの究極系は電子音(主にスクエア波)となります

・例
ベースのハイポジの音、太い管楽器などが該当します

倍音がそろっている、スクエア波・ノコギリ波・ピアノはこれにはあてはまらないためキモリティが高くなります。

◆ピアノはやばい

ピアノは、①~⑥のどれにもあてはまらない、
最狂のハイキモリティの音色です。
そのため、ピアノの微分音はキモイという印象にすべて持っていく可能性があるので、微分音作曲では注意して使いましょう。

僕の場合、リバーブを強めにしたり、ドラムのキメと同時に鳴らしたり、他の楽器と重ねたりして
ピアノだけが目立つのを避けるようなアレンジをしています。

ちなみに、オクターブで重ねた微分音フレーズはキモリティ最強です。
ピアノ+微分音+オクターブ、これがピアノのキモリティを最高に高める方法です。

◆キモリティ印象論

ここでもうひとつ「Xen」という言葉についても触れておきましょう
これもあくまで僕独自の表現なのですが
微分音な雰囲気がでてると思った場合「Xen」な感じという感想をよく言います
人によってどのような言葉を当ててるかは異なりますが

Xenは完全に主観ですので、ここでは聞き手の感想ということにしましょう
それに対して「キモリティ」は楽器や音色のスペックを指します
キモの基準もまた主観ですが、こちらは作り手側の感想ということにしましょう

まとめますと
キモリティ:ある音色や楽器がもつ、微分音発した時のをキモさ
Xenな:微分音を使用していることを感じた様

この2つの軸から、このように謎の図を生み出します

画像2


ここからは、僕の価値観ですが、各ゾーンの解説を。

①ハイキモ/ Xen

これに対する感想はEwww!、オエー!
これを狙っていったのならいいですが、聞き手はドン引きしてますね
初めに微分音作曲をするなら、あまりもらいたくない感想です
要するに良くも悪くも「露骨ゾーン」ですね

②ローキモ/Xen
これに対する感想はCool!
微分音が目立たない楽器を使って、聞き手に微分音だと気づかせる
それはナイスですね!これを「粋ゾーン」としましょう

ドリーミー・ファンタジック・ノスタルジック・異世界感・非現実感をうまく世界観に取り入れたりすると粋な演出ということで微分音が生きるでしょう。
最近はやりのMicrotonal Lofi hip hopなんかはまさにこれですね。


③ハイキモ/Not Xen
これはWow!
しっかりと微分音を使っておいて
聞き手に微分音を通り越してインパクトを与えました
こちらを「インパクトゾーン」としましょう

ホラー系ならこのゾーンを狙いやすく、
狂気やエキセントリックな雰囲気を出したい場合
微分音の凄みで鮮烈な印象を残しましょう


④ローキモ/Not Xen
これは残念、So What?
微分音を控えめにしすぎたせいで、微分音を使ったという事実くらいしか残りません
これでは印象に残りませんね
こちらは「影薄ゾーン


微分音作曲では②または③を狙って曲を作りたいものです
僕のポリシーでは全体的に粋ゾーン②
キメ所でインパクトゾーン③というのが理想です。


◆〆

微分音で作曲をする上で、キモリティという概念を作りましたが
通常の作曲でも、音色によって音程感が異なるというところは、
作曲に慣れてきたならなんとなく分かってくる現象でしょう。

それが、微分音になると顕在化してくるというだけなのです
微分音作曲にかかわらず曲の印象を考える際には、このキモリティ印象論が効いてくるでしょう。

微分音の存在によって、音程感について深堀する必要が生じてくる
現状の音楽を見直す」という微分音のメリットの一つでしょう
以前僕が考えた微分音をやる4つの意義のうちのひとつです。

画像3

ということで、ピアノで微分音作曲する際はお気を付けください。というお話でした。
キモリティ検証編として、様々な音色での微分音を聞き比べてみるというのも今後やってみようかと思いますので乞うご期待。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?