第四章「ありのままで」
第4章
壁にはシャープな作りの丸い時計が掛けられ、長針と短針がまるで弟をおんぶするお兄さんのように10の数字の上で仲良く重なり合っている。床は安価な長尺シートではなく高級感のある木目調のフロアパネルが敷かれており、壁や天井もそれに合う様に茶色のチェック柄で統一されていた。裸の白熱灯と間接照明がとても良い雰囲気で、備え付けられているテーブルや椅子も、その光沢感からきっと良いお値段がするものなのだろう。店内のBGMであるJAZZ風の洋楽に紛れて聞こえる機械音さえなければ、ここはさながら更けゆく夜に佇む小さなカフェだ。
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