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美しい偶然

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わたしが出会った映画・小説・音楽・アートなどなど…についての記録
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#小説

あの匂い…まぎれもない匂い…

プランニング用の資料をまとめていると… 開け放った窓から冷たい雨音と湿った微かな匂いが忍び込んだ マウスから指を離し、心をしずめて嗅いでみた あの匂い…まぎれもない匂い… この上なく微妙で、こまやかな匂い… 随分前になるがテレビの中直木賞を受賞した又吉直樹さんが 「海外小説で好きな小説はなんですか?」 という問いに『香水』と応えたので ビックリして画面の又吉さんを見つめてしまった なぜならわたしが大好きな小説の一つなのだ 『香水~ある人殺しの物語(Das Parfum

蜜のあわれ

『おじさま、人を好くということは愉しいことでございますという言葉は、とても派手だけれど、本物の美しさでうざうざしているわね。』 
「それ以上の言葉は先ずみつからないね、女の人の言葉としては正直すぎているくらいで、だれでもそうは書けないものがあるね、大胆な表現でしかも極めて普通なところがいいね、どんな人なの。」 
『おじさま、言ってごらん遊ばせ。』 
「いやだよ、いい歳をしてさ。」 
 『ね、一ぺんこっきりでいいから言って見て頂戴。男の人の口からそれを聞いてみたいんだもの、人を