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ウルトラセブン推し②聖地探訪~慶元寺(第8話「狙われた街」)

マニアの対象には様々な分野があるものだが、「ロケ地」もその一つである。「ウルトラセブン」も同様、山中まで探索に向かっている方もいらっしゃるのだが、私はその分野は比較的緩い状態である。

いっぽうで私は東京都世田谷区の小田急線沿線という主要ロケ地至近の場所に住んでいるので、いくつかの聖地には足を運んだことがある。今回はそのなかでも、あの名作「狙われた街」の撮影に使われた慶元寺に行った時のことを書いてみたい。

「狙われた街」放送終了後、上がったテンションのまま慶元寺に向かう

「狙われた街」のあの葬儀のシーンの舞台となったお寺が、自宅最寄りの祖師ヶ谷大蔵駅から下り電車で二つめの喜多見駅より徒歩二〇分の距離にあるということは、迂闊にもかなり最近まで知らなかった。

二〇二一年四月にNHK-BSにより「ウルトラセブン」の再放送が始まり、「狙われた街」放送日前日の五月二二日、ふと『ウルトラセブン撮影日誌』を読んでいると、ロケ地に慶元寺と記載されているのが目にとまった。気になってネットで検索したところ、訪問された方の記事に行き着き、初めて場所を知ったのだ。

翌二三日午前八時半、「狙われた街」放送終了後、上がったテンションに乗じてそのまま慶元寺に向かう。小田急線のお寺最寄りの喜多見駅の一つ先、狛江駅からは、一時間に一、二本出ているバス便があった。

小田急バス(狛12)の「宇奈根」行きに乗り、揺られること一〇分弱。「喜多見中学校」のバス停に降り立つと、その界隈はとても隣り街があの高級住宅街の成城学園とは思えないような、のどかな佇まいである。バス停から細い道を歩くこと五分、左手にお目当ての慶元寺を発見した。

あの何度も何度も観てきた参道を歩き始めると高揚感と至福感に覆われる

そして一歩敷地に足を踏み入れると、私は目の前に蜃気楼が立ちのぼってくるようで軽い眩暈を覚えた。両側に林立する高い樹木にはさまれた参道。それは五四年にわたり何度も何度も「狙われた街」で観てきた光景そのものだった。

まさにあの第8話の光景が眼前に!!

この場所で、喪服のアンヌ隊員が泣き崩れるおばさまを介抱し、ダンは行き交う人のつぶやきを聞きながら振り返り振り返り歩くのである。そこに自分が茫然自失して佇んでいる。

私は「時をかける少女」の主人公のように来し方五四年をタイムリープし、さまざまな出来事を思い起こしながら一九六七年に舞い戻っていた。臨死体験をした人が、死ぬ前の一瞬に見るという自分の一生の映像を見たかのように、私も次々に記憶の断片が怒涛のように押し寄せてきた。

よくある現象だが作品の映像でのほうが広い空間に感じられる

そしてゆっくりとあの参道の路を歩き始める。すると徐々に高揚感と至福感に覆われてきたのである。

私はスピリチュアル的なこととは縁遠い人間なのだが、このときばかりは非日常で崇高な異世界のなかで霊験というものを感じ、自分の魂が何処か異なる次元へと押し上げられてゆくのを体感していた。

参道のなかばを過ぎたあたりで、来た道を振り返ってみる。するとお寺の入り口付近が樹木に縁どられた狭い四角形の空間となって、そこからきらきらと煌めく光が零れてきている。

私はふだん意識をしない「光」というものの確固とした存在と、その光から生じる然る場所への「導き」というものを感じていた。繰り返すが、私はふだんそのようなこととは無縁に生きている人間なのである。

人生に迷いを生じている方はぜひ行ってみてほしい

さて参道を抜けて境内に足を踏み入れ、そこで慶元寺の全貌をつかむに至る。よく「行ってみると意外と小さい」という体験は皆さんもあると思うが、慶元寺についてもイメージの七~八割程度の大きさだった。

中門横から本堂を臨む

いっぽう、参道から右手にある墓地の広さと拡がりは、これもまたどこか自分の知らない未知の世界へとつながる空間性を感じられるものであった。

その後も三〇分ほどここから去り難く敷地を行ったり来たりしていると、私と同様、歩いたり佇んだりしている方がいらっしゃる。おそらく今朝の「狙われた街」をご覧になってここを訪れた方なのだろう。

二度目にすれ違ったときには、どちらからともなくお互いに会釈をし合い、セブンファンスピリットの交感が行われたように感じられた。

帰りは行きとは逆方向に向かい、喜多見駅まで二〇~三〇分ほど歩いた。同行してくれた昭和の芸能界に強い妻から、喜多見駅に程近い桜田淳子さんの出身である国本女子高校を教えてもらった。慶元寺とあわせて、まさしく「兵(つはもの)どもが夢の跡…」といったところだろうか。

さてこのコラムを読んでいらっしゃる方に、「ウルトラセブン」に興味がない方はいないと思う。もし時間的物理的に可能なら、ぜひともあの「狙われた街」の舞台となった慶元寺を訪れてみてほしい。とくに人生に迷いを生じておられる方には、何らかの効用があるかもしれない。

私もこのときは、コロナ禍のなかで自分に近しい人が続けて四人亡くなったり、その春だけで対人トラブルによる絶縁案件が何件も続いたときだったが、慶元寺にて煌く光を浴び、確かに運気が変わったことを感じていた。

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