見出し画像

ウルトラセブン推し③第26話「超兵器R1号」とM49「死の悲しみ」

脚本:若槻文三 監督:鈴木俊継 初回放送日:1968年3月31日

ストーリー

瀬川博士、前野博士をメインスタッフとして、惑星攻撃用の新兵器R1号が開発された。新型水爆の8,000個の爆発力を持つという。実際の侵略者に対してはこれを使用すればいいし、保有していることを知らしめるだけでも、全宇宙に対する侵略の抑止力となる。

そのためには、実験してアピールする必要がある。核実験の場所にはシャール星座の第七惑星ギエロン星が選ばれ、実験は成功。ところがギエロン星には生物がいた。

鳥のような風貌のギエロン星獣は、復讐のために地球に降り立ち、R1号の放射能の灰を撒き散らす。登場したウルトラセブンは右腕にダメージを受けるが、ギエロン星獣の腕をもぎ取り、投げつけ、アイスラッガーを手に首をかき切る。

この件を契機に、タケナカ参謀はさらに強力なR2号の製造中止を提案しようと考えを変える。

私感

まさに当時の米ソ英仏、世界の大国をイメージングしたストーリーだ。核の開発競争についてダンが独白する「それは血を吐きながら続ける哀しいマラソンですよ」という台詞は、全編を通して有名な台詞の1つである。

ウルトラセブンとギエロン星獣の戦闘の舞台に、黄色や赤の美しい花が咲き乱れているのが、印象的だ。美しい自然のなかで超兵器実験の犠牲となったギエロン星獣を倒すことで、戦いの悲惨さが浮彫りとなり、開発競争の虚しさが露わになっているように感じる。

ちなみに前野博士役の田村奈巳さんは、「ウルトラQ」の「ぺギラが来た!」、「ウルトラマン」の「怪獣墓場」に続くウルトラシリーズのゲスト出演で、このあと「怪奇大作戦」の「光る通り魔」にも登場する。

音楽

1. M49「死の悲しみ」

『ウルトラセブン・スコア・リーディング~冬木透の自筆楽譜で読み解くウルトラセブン最終回』(冬木透・監修、青山通・著/アルテスパブリッシング/2015年12月発売)より

先の「それは血を吐きながら…」のくだりでも流れる楽曲は、M49「死の悲しみ」である。この作品中で合計4回使用されており、「ウルトラセブン」全作品のなかでも、この曲に限らず同一曲がこれだけの回数しっかり使用された例は、なかなかないだろう。トータルでの使用時間は4分を超え、この作品のトーンの基調を成すと言ってよい。

ちなみに以下がそれらの4シーンである。

①ダンとフルハシとの超兵器に関する問答(03;09~04;16)
②ギエロン星爆破成功の連絡後、アンヌがダンの台詞を思い出す(07;00~7;30)
③宇宙を飛ぶウルトラホークの中で自分の選択を後悔するダン(09;10~09;24)
④瀬川博士、前野博士、タケナカ参謀、キリヤマの4人での話~ダンの病室(22;27~24;37)

本作では、直接的な誰か個人の「死」やその予感については描かれていない。しかし超兵器開発競争がもたらす宇宙の行き着く先は、「全体の死」に到達せざるを得ないだろう。そのようなテーマの作品の基調にM49を置くことで、そこから「象徴的な死」が彷彿され、音楽は作品のなかでより重みを持ってくる。

ちなみに、M49は「ウルトラセブン」全編で7作品に使用されているのだが、ほかの6作品はいずれも個人の「死」もしくは「死の予感」として使用されている。本作のような「象徴的な死」としての使われ方は唯一であるので、ここで3つに分類して見てみよう。

(1)具体的な個人の死と悲嘆
・第8話「狙われた街」(1、2回目)/・第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(2回目)
(2)具体的な個人の死の予感と苦悩
・第13話「V3から来た男」/・第22話「人間牧場」/・第31話「悪魔の住む花」/・第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(1回目)/・第38話「勇気ある戦い」
(3)象徴的な死のイメージ
・第26話「超兵器R1号」

なお既刊書にも書いたが、M49は7作品にて使用されたうち5作品が、鈴木俊継監督作品である。本作ほか、「V3から来た男」、「人間牧場」、「悪魔の住む花」、「盗まれたウルトラ・アイ」。
鈴木監督×冬木音楽監督コンビの結晶を象徴する曲と言っても良いだろう。

『ウルトラセブン・スコア・リーディング~冬木透の自筆楽譜で読み解くウルトラセブン最終回』(冬木透・監修、青山通・著/アルテスパブリッシング/2015年11月発売)より

2. 本作で使用されたその他の楽曲

さてM49以外の音楽のことも少し。ギエロン星獣が地球に降り立つと、M-14「怪獣」が始まる。M-14は、M-15のティンパニ・ソロに重低音を施した曲だ。
誤って生物がいる星を超兵器の実験対象として選んでしまったことで、復讐のために巨大生物が夜の地球に降り立っている・・・そんな「悲劇」としか言いようのないこのシーンに、M-14はよく似合う。

ウルトラセブンが美しい花のなかでギエロン星獣を倒すシーンでは、本作のモティーフである「死の悲しみ」ではなく勇壮で明るいウルトラセブンのテーマがかかる。ここの選曲意図について冬木氏に伺ったのだが、記憶にないとのことだった。
私見であるが、ここであえて本作の基調とはアンマッチな音楽を用いることで、かえって悲痛なストーリーを浮彫りにする効果を狙ったのかもしれない。

ラスト、タケナカ参謀によりR2号の製造中止の提案の話が出たところからは、それまで2分以上も流れていたM49に変わり、M55「ほっとしたよろこび」が流れる。第15話「ウルトラ警備隊西へ 後編」でドロシー・アンダーソンが正気に戻ったときの音楽だ。
本作が未来への明るい兆しを見せて終わるところが視聴者と人類への救いである。しかし今その後55年経った未来世界にいると、残念ながらやはり人類全体がお互いを尊重するのは難しいと思わざるを得ない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?