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私が考えた最強の夏休みガチスケジュール

小6くらいですかね

7/20 終業式後に結成した「宿題序盤で全部終わらす同盟」は仲のいい友達四人で構成された。四人は我が家に来て、この日は全員で宿題をやる。まずは漢字ドリルや計算ドリル、夏休みの友等の単純作業をこなしていく。電卓も用意する。単純作業なのであまり関係はないが、一応、どちらかと言えば数字を見てる方が好き、漢字の方が好き等の特性をふまえて理系文系で分担をする。氷の入ったカルピスを飲み、好きな音楽をかわりばんこにかけながら、午前中に単純作業系の全てを終わらせる四人達。お昼はみんなでカレーを食べた後、集中力の切れた四人は畳の部屋で雑魚寝をする。扇風機は首を振り、風鈴が鳴り、おばあちゃんはタオルケットをかけてくれる、そんな心地よい午睡。起きたらみんなで桃鉄をやり、夕飯前に解散。

7/21 この日は読書感想文のためみんなと図書館で待ち合わせ。私は文系なのでちゃんと楽しもうと思う。なんなら賞を取る気で行く。「豚の死なない日」とか「君たちはどう生きるか」「ガンバの大冒険」あたりがいいすね。3時間程で私と親友の文系女子二人はさっさと終わらせ、横山三国志、はだしのゲン、海のトリトンあたりを読んだりお菓子作りのレシピブックや子供向けの洋裁の本を読んだりする。4時間経った頃、理系男子二人に救いの手を差し伸べる。すっかり昼ごはんを食べそびれた四人は、少ないお小遣いでおませにも外食を決め込むことにした。近所の駄菓子屋で食べられるお好み焼きである。暑いのでかき氷も頼もうかみんなで迷った結果、2-2でシェアすることにする。好きな男の子が「俺はレモン味がいい」と言うので、「私も」と言う。駄菓子屋のキヨ婆は「サービス」と言って、かき氷二つ分の値段で四つ出してくれた。余計なことを。

7/22 四人寄れば文殊の知恵で結託してねじ伏せてきた頭脳系の宿題が終わり、日記や観察日記等コツコツ系をどうやっつけるか、私たちは悩んでいた。理系男子の一人(仮にAとする)が朝顔の観察日記を終わらせよう、と提案してきたのでAの家に集まる四人。Aはお父さんを連れてきて、「朝顔の育て方」を聴く。語り出すA父は筋金入りの植物好きで、職業植物医であった。オタク特有の情報量の洪水に面食らいながらもメモを取る四人。A父去りし後、我々には「江戸と朝顔団十郎」「チョウセンアサガオと危険ドラッグ」で小論文が書けそうな情報量のメモが残った。観察日記クリア。ちなみにA家は温室がありちょっとした植物園みたいで楽しかった。帰ってそうめんを食べた。

7/23 宿題序盤に終わらせる同盟の一人、理系男子のBは兄の野球の試合の為家族で外出。抜け駆けをしないルールなんて取り決めてないが、シンプルに少し休みたい。私は11時くらいに弟(3歳 めっちゃ可愛い)に起こされ、庭でビニールプールを出して遊んだり、明日の集まりに向けてパンナコッタを作ったりする。明日は交通安全ポスター、図画工作等、美術系の課題を全て終わらせると四人で決めた。日記だけはどうしようもないと判断したので、親友Cちゃんと長電話しながら思い出しつつ四日分を執筆。

7/24 宿題序盤同盟、我が家に集合。家族は宿題を終わらせることには協力的なので、またお昼をうちで食べるのを前提として午前から集まる。クリエイターの母はノリノリでリビングに青いビニールシートをひいてそこはアトリエとなった。交通安全ポスター、図画工作、習字クリア。ちなみにだがAは毎年貯金箱を作って毎年郵便局長賞を取っている。今年もなんだか一筋縄ではない、ピタゴラスイッチ的なカラクリを込めたすごい貯金箱だった。一方Cちゃんと私は見た目の可愛さに全振りしたスイーツデコの貯金箱を作った。昼食はパエリア。

7/25 日本有数の規模を誇る地元の花火大会は、老若男女問わず基本的にみんな行くんじゃないかというくらいポピュラーな話題だ。友達と行くようになる、恋人と行くようになる等が子供たちの成長の指標のひとつにもなったり、行かなければ行かないでそれはまた苦酸っぱい思い出として何かしらあるのだ。我々もまたご多分に漏れず四人で行く約束を取り交わし、ピンクの撫子柄の浴衣と兵児帯を着てCちゃんと先に待ち合わせ。りんご飴を食べたり花火を見たりした。好きな子と二人になった時、射的をやって景品のぬいぐるみをとってくれた。

7/26 Bが招集をかけた。Bの家の大きなガレージは私たちから見て紛れもなく宝の山で、コンテナいっぱいのテニスやバスケの道具、フリスビーなどのおもちゃ、天井に括りつけられたサーフボードやスノーボード、もう使っていないらしいアコースティックギター、ソファやキャビネット等の粗大ゴミ。中でも私たちを一番わくわくさせたのは、ガレージの中央でダイナモに照らされて鎮座まします小さなキャンピングトレーラーだった。クレープ屋の屋台ほどの大きさのそれは、ところどころ錆び付いてボロボロで、ドアも機能してるのか解らないくらいガタが来ていたけれど、それは私たちをかえってわくわくさせる要因でしかなかった。「叔父さんがワーゲン買うから廃車にするって言うからさ、俺こいつを買い取ろうと思って。」Bがそう言った瞬間、我々の最後の宿題である自由研究はもう決まったようなものだった。「秘密基地作らない?俺たちだけの」

7/27 宿題序盤同盟は昨日をきっかけに秘密基地同盟へと変貌を遂げた。まさか宿題を早めに終わらせる集まりである真面目ちゃんな私たちが、こんなにワクワクする事をしてるなんてクラスメイトは思いもよらないだろう。ボロボロのキャンピングトレーラーは3万円ほどで、4人で割れば手の届かない値段じゃなかった。お年玉を切り崩したし、今までで一番大きな買い物だったけれど。でも、安いと思った。Bのお父さんが出した条件は、DIYは子供たちで全部やること。B家の所有する茶畑山の手前には手入れをさぼっている竹藪の一帯があって、そこなら自由にしていいこと。きちんと夜には帰ること。この日私達は一日がかりで竹藪の掃除をした。クタクタの体に染みる麦茶のおいしいことと言ったら。

7/28 トレーラーを牽引してもらいたかったけれど、Bのお父さんもいつも暇な訳では無いので、元々の所有者である叔父さんが来てくれた。Bの叔父さんは独身で自由人だと聞いていたが、アロハシャツ、サンダル、あごひげという出で立ちを見て、きっと本当にそうなんだろうなと思った。トレーラーを竹藪に牽引してもらって、おじさんの新しいワーゲンでホームセンターへ連れて行って貰った。ペンキやベニヤ板、屋外用延長コード、タッカーなど、叔父さんのアドバイスを参考に必要そうなものを買う。帰るとB父が居て「あのな、秘密基地は秘密だから秘密基地なんだよ。大人が手を出しちゃダメだろ」と言った。B叔父は「だって、俺らだってこんな夏休みしてみたかったじゃん」と言った。私達は大人さえも羨ましがる凄いことをしてるんだと思った。箒で中の掃き掃除や窓を拭いたりしながら、このトレーラーをどんなふうにしていくか話し合った。