駒井みどりはころされた備忘録
〇マザーグース「Who Killed Cock Robin'」という詩が元ネタのシナリオ。
全文はGoogle検索したら簡単に出てくるので割愛。駒鳥の死から葬送までを語る一編の詩で、以下ではシナリオ「駒井みどりはころされた」との関連を解説する。
前提として、マザーグースで出てくる動物(昆虫含む)の役割は以下のとおり。
・こまどり(被害者)・すずめ(殺人者・弓矢)・はえ(目撃者)・さかな(こまどりの血をうけた)・カブトムシ(経帷子を作成)・ふくろう(墓を掘った)・からす(牧師)・ひばり(葬式のおつき)・べにすずめ(たいまつで先導した)・はと(おくやみを述べた)・とんび(棺を運んだ)・ミソサザイ(棺に覆いをした。夫婦)・ツグミ(讃美歌を歌った)・牛(哀悼の鐘を鳴らした)
ここから、真の殺人者・人間「先生」を除く五名を選定した。(初期に投稿した媒体(アプリ・ボイコネ)で役者の上限が五名だったため)
駒井 みどり(こまどり)被害者。
鈴木 あやめ(すずめ)殺人者。みどりの死の要因をつくる。
坂本 なづな(さかな)信者。キリスト教の聖体拝領の流れから。
林 かのえ(はえ)監視者。
宇本 つくし(うし)時を告げる者。鐘をならす役割から。つくしが「正しさ」にこだわる役なのは、正確な時を管理する役割のため。
当初、先生の役割は少なく、物語は少女4人がクラスのアイドル「駒井みどり」に対して抱く、複雑な感情に焦点を当てた青春群像劇になるはずだった。が、女性五人のキャストを集めるより、女性3人、男性2人と割り当てた方がキャストが集まりやすいだろうと考え、宇本つくしと林かのえは性別を変更した。
以下は当初の女性五人を想定した、それぞれのキャラクターの内面を書いたフレーバーテキスト。
『宇本つくし』
坂本なづなは妄信的。みどりを神かなにかだとおもってる。みどりになりたくてみどりの真似をする。
林かのえは盲目的。みどりのことをねたんでる。みどりを監視せずにはいられない。
鈴木あやめは妄想的。あれこれ考えるくせに手がだせない。みどりのことを性的に愛してる。
そして、私、宇本つくしは駒井みどりが大嫌いだ。だから、きっと私だけが彼女のことを正しく見ていた。あの不自然な五角形の中で、私だけが正常だった。
だから、そう。この物語を告げる役目は私が受け持つのがきっと正しいのだろう。
「駒井みどりはころされた」
『坂本なづな』
彼女は私の神様でした。
美しくてかわいくて頭のいい私のかみさま。
彼女と知り合えたことが私の人生のなによりの幸運で、ラッキーで、恵みでした。
ねぇだって信じられます?あんなに目が大きくて肌が白くて笑顔がかわいい女の子が存在するなんて!
はじめて彼女をみたとき、私はもっと小さなころ、親になきわめいてねだったアンティークショップのビスクドールを思い出しました。ぱっちりと開いた黒目、自然に巻かれた波打つ黒髪、ニキビなんてしりませんっていうミルク色の肌。
あのときは結局買ってもらえませんでしたけど、もし彼女がウインドウに並べてたら、私、なにがあっても彼女を手に入れます。なにがあっても、です。
だから、みどりちゃんが死んだってきいたとき、私おもったんです。
今なら彼女を手に入れられるんじゃないかな、って。
『林かのえ』
なづなと私は幼馴染だった。
だから、なづなの「かわいい!」なんて聞きなれていたし、いまさら興味もなかった。あの女を紹介された時もそうだ。確かに美人だと思ったけど、それだけ。
『わたしのかみさま!かわいいでしょ』ふーん。よろしく。
『みどりちゃんはこのシャンプー使ってるんだって』へぇ、ためしてみれば?
『どう?髪型かえたの。みどりちゃんに似てるかな』まぁ、あってるんじゃない。
『バイトはじめようかな。みどりちゃんと全部お揃いにしたいの』そう、がんばれ。
みどりちゃんみどりちゃんみどりちゃん。なづなは次第にあの女に侵されていった。
駒井みどり。人の形をしたなづなの神様。
あんな女のどこがいいのかわからなくて、知りたくて、私はあの女の観察をはじめた。
女の好きなもの嫌いなもの。得意なこと苦手なこと。住所趣味性的志向エトセトラ。
だから、当然あの日なにがあったかなんてみてたよ。あの時間、あの女がバイトから帰ってくる時間だって知ってたから、つけてたんだ。もちろん、誰がみどりを殺したかも知ってる。
でもそれって重要なこと?あの女が死んだ。大事なのはそれだけでしょ。
『鈴木あやめ』
みんなして言いたい放題。好き勝手なことばっかり。
けど、そんなもんだよね、わかるよ。私もずっとずっと我慢してきたから。
みんな、もう知っているからいうけど、私みどりちゃんのことずっとずっと好きだった。
友達としてじゃない。女の子が男の子に恋するように……ううん。そんな一時な感情じゃない。もっとずっと深く濃く、溺れるくらい好きだった。
我慢できなくて何度かみどりちゃんに言ったよ。
でもみどりちゃん、いつもごまかしてばかりで…そのくせ私をつきはなそうとしないで。
ずるいよね。でもそういうところも、すきだった。
みどりちゃんが、だいすきだった。
『駒井みどり』
――みんな、うそつきね。
「駒井みどりはころされた」は上記のとおり、最初の想定とだいぶ違った着地点を得たシナリオになった。今後再考する機会があれば、原案に即したものも書いてみたいと考えている。
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