「花は咲かない」あとがき
こーんばんは!七枝です。
こちら、拙作の声劇台本「花は咲かない」https://natume552.amebaownd.com/posts/40662634のあとがきとなっております。下記あらすじを読んで気になった方はぜひこちらご参照ください。
忍は、金なし家なし仕事なしの30代。人生に絶望し、なけなしの金で買ったロープで首をくくろうしたところ、見知らぬ少年に目撃されてしまう。
「花が咲くまででいいから、僕に飼われなよ」
自殺に失敗し、帰る場所もなく、途方にくれた忍は少年の家へ。「花が咲くまで」という約束で、少年のペットになることになったのだった。
っていう、どっかの薄い本でみたような話です。BLです。嘘です。本当はBLにしよう!と思って書き始めたんですけど、筆が狂って家族愛的なそれで落ち着きました。それに伴って、性別変更しやすいように内容も変えました。なので忍も少年もどちらも性別変更可です。好きなように遊んでもらえたらな、って思ってます。
この話はリハビリのつもりで書きました。もともと私は小説書きでして、声劇台本の方は某声劇アプリから始めました。それで「誰かに作品を読んでいただく」という行為にドはまりしてしまい、およそ1ヶ月に2本のペースで書いていました。懐かしいですね。
まあ、そのアプリもアップデートで仕様が大幅に変更してしまい、大方の役者さんが移行してしまったため、私自身も声劇台本を書くのをやめてしまいました。
不思議なものです。小説を書いているときは、たとえ読んでもらってなくても書いていたのに、声劇台本は読んでもらえないと書く気がおきないのですから。
これはおそらく、作品の思い入れの違いによるものだと思います。私は小説を書くとき、登場人物の一挙手一投足細かく想定して書きますが、声劇台本は違います。誰がどこに視線をやろうが、その時立っていようが座っていようが、ふわっとした曖昧さを残して書いてます。
小説でいう、地の文が書けない為でもありますが、それらは役者さんが考えればいいこと、と思って放り投げているところもあります。
綺麗な言い方をすると、「誰かに演じて貰って初めて完成する物語をつくりたい」とでもいいましょうか。
綺麗すぎましたか?ともあれ、そんな未完成の物語をそのまま残しておくことにあまり意義を感じませんでした。使われない玩具に何の意味があるんでしょう?使われないとわかってる玩具を作る意味なんてあるんでしょうか?
私はないと思います。だってむなしいじゃないですか。
書くことに意義がある、と仰る方もいらっしゃるでしょうが、小説と違い、声劇は基本的に「演じることを想定して」書くものです。小説のように臨場感あふれる情景、登場人物の細かな心の動きの描写、時代背景の説明、そんなものは求められません。役者や演出家が作り出すものです。
少なくとも私はそう信じて書いてました。それに応えてくださっていたな、と感じていました。それが楽しかったのです。とても。
こうして某声劇アプリがリニューアルし、個人サイトに台本を移行して、以前遊んでいた方は散り散りになりつつも、拙作を使っていただけるとのお話は何本かいただきました。こっそり聞きにいったりもしました。嬉しかったです。私の作った台本は無駄じゃないと思う時もありました。
でも新しいものを作り出したところで、それがほぼ使われないだろうと思いました。
この歳まで趣味を続けていれば、自分の力量はおおよそわかっています。いいものを書いていれば、読まれるわけではないこともわかってます。
そうですね、長々と書き連ねて参りましたが、ようは寂しかったのでしょう。寂しかったところで、更に需要がないと思い知らされるのが嫌だったんでしょうね、きっと。
だからこの半年間、何も書いてきませんでした。
再開のきっかけとなったのは、とある小説です。少々過激な性描写のあるネット小説なので詳細は伏せますが、それは傷ついた人々の心の交流のお話でした。日常の中で、決していい方向には向かっていないものの、生きることをやめないお話でした。
その小説を読んだとき、私は自分が今まで書いてきたものが随分と行儀がいい、綺麗ごとを書き連ねたように思いました。
「誰かに読んでもらう」を意識して空回っていたといいましょうか。
小説を書くときのように、自分勝手に台本を書いてみたいと思いました。
優秀不断な登場人物たち、だらだらと続く日常、特に面白みのない台詞。そんなありきたりのものを並べ立てて、それでも日常を美しく描けたら、と思いました。
そうして、出来たのが「花は咲かない」です。
想定では、もう少し日常パートを長くし、終盤では忍が少年に執着を覚え、親に愛されずにさみしい想いをしている少年をそそのかし自分へ深く依存するように仕向ける悪い大人になる、闇落ちルートでした。そこまで書ききれませんでしたね。要修行です。
つまり私は、またしても結末を途中で放り出してしまいました。
一念発起して再開したのに現実はこんなものです。いきなり素敵なものが書ける技量が身についたりしません。物語の終わらせ方は、役者の皆様におまかせするしかないようです。
もし私が書きたいものをちゃんと書ききれた時、それを読んだどなたかが、演じて下さることを祈りつつ。
「花は咲かない」のあとがきでした。お粗末様です。
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