花盗人の罪は重いあとがき。
こちらはhttps://natume552.amebaownd.com/posts/52087867の後書きです。細かい裏設定とかも出てくるので、演じるまえにイメージ固めたくない方は先に読まない方がいいかも。
1.作成の経緯
ある日私は、1本の椿の木が女の子に恋をする夢をみました。椿の木は少女に振り向いてもらうために、花を落としたり梢を揺らしたり、時季外れに無理に咲いてみたりしますが、少女は振り向きません。当たり前ですね、言葉も通じないのですから。
憔悴しきった椿の木は、最終的に根の足を生やし、地中深くまで少女をさらってしまうというところで猫がハッピーに踊り狂い夢は終わりました。……ハッピーか?まぁ夢というものは不条理なものです。
この夢の原案はおそらくシエル・シルヴァンスタインの「おおきな木」という絵本です。私はわりと寝る前に読んでいた本の影響を受けて夢みる性質でして、こちらの絵本は木が無償の愛を少年に与え続けるお話でした。はたして無償の愛とはなんなのか?愛を与えることは幸福なことなのか?そんな哲学的な問いと猫ミームがぶつかった結果の夢だったと思います。
絵本は名作なので、ぜひ読んでください。
まあそんなわけで、夢の内容では猫以外はすべて無声だったんですよね。声劇台本にしようとは当初思ってなかったのですが、半年台本更新してなかったので、そろそろ何か書こうかと思い、書きやすい要素を足して作り直しました。
2.元ネタ
作中2人が読み上げる詩は、唐代の詩人于武陵の「勧酒」を井伏鱒二が訳したものです。詩の内容を詳しく知りたい場合は上記のサイトがわかりやすいです。
「枯れ木に花を咲かせましょう」は花咲爺さんですね。意地悪爺さんに殺された犬を木の根元にうめ、その木で作った臼が灰になり、灰をまくと花が咲いたという流れ。ラストシーンの伏線として入れました。
有原の名前は在原業平から。在原業平は平安時代の歌人で六歌仙のひとりです。容姿端麗で情熱的な恋の唄が多い方です。
在原業平の歌にこんな歌があります。
〈原文〉世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
〈現代語訳〉もし世の中にはまったく桜がなかったなら、春を過ごす人の心はのどかだっただろうに。
桜に浮かれ惹かれてしまう人の心を詠んだ歌ですね。
死者に心を寄せてしまう有原は、桜自体の美しさにも魅了されてます。
あとは一度地面に落ちたものを食べることだったり、振り返るなの禁をやぶることだったりは古事記からの発想です。有原は複数の暗黙の了解を犯した上で地中に引きずり込まれました。
3.裏設定
時代設定 昭和10年前後です。文芸復興期のあたり。
藤城直哉 男性。長男。祖父、父ともに軍人で本人も軍人になることを期待されていましたが、生来から身体が弱く中学の時に病に倒れます。その後自宅で療養していましたが、第2子が生まれたことでほぼ完全に家庭内での立場を失ってる状態です。ちなみに有原と飲酒したのは中学時代。有原のことは妬ましくて羨ましくて慕わしい。言わないだけで鬱々とした男です。
有原兼人 男性。次男。東京帝国大学理学部所属。裕福な庄屋の生まれで恵まれた体格をしています。藤城とは尋常小学校時代からの友達です。身体の弱い藤城を気遣って行動することが多い彼でしたが、それを本人から疎まれていることは知りませんでした。ちなみに藤城に引きずり込まれなくても、彼はこの後徴兵され戦地に派遣されます。
桜 ソメイヨシノ。60歳くらい。寿命が近くなっていたところで、悪霊にとりつかれてしまいましたが奇跡の化学反応で寿命が延びました。結果闇堕ち。今後も人間を捕食していく予定。
4.総括
久しぶりに台本書きあげて満足です。幽霊、ともだち、桜と好きなものつめつめセットでした。いつも同じもの書いてるなぁ、と時々いやになることもあるのですが、それでも書くのは愉しいですね。
よかったら台本使ってやってください。これからも皆様の声劇ライフが楽しいものとなりますように。
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