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うさぎの赤い靴(台本バージョン)

これまでも主催ライブの中で朗読台本を創作して発表したことはあったのですが、今なかなか外にも出にくい状況で、みんなに何か届けたいと思って書きました。

台本をここに書きますが、私は声優なので、一番皆さんに届くのはオーディオドラマにしたものだと思ってます。そっちもnoteに載せてます。聞いて下さい☺

またYoutubeにも同じものですが載せています。

https://www.youtube.com/watch?v=HAKpUUiPtEo&t=1s

もしかしたら見てくれるかもしれない、聞いてくれるかもしれない誰かに、今後はちゃんと形に残して発表していきます。

ちなみにTwitterメインでやってるのでTwitterも覗いてね♡


読んでくれてありがとうございます☺

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「うさぎの赤い靴」作:夏井彩華/natuko


「やばーい、朝練遅刻だ~!」

駅までの道のりにあるきつい坂を、私は駆け上った。

腕時計を見る。6時25分。次の電車は6時31分。

「はぁ、はぁ、はぁ、は----っ・・・」

坂のてっぺんから駅が見える。

駅までは、坂を駆け下りて歩いてなら10分ほど。

「ぜったい間に合わないー!・・・くう、ダッシュ!

・・・ん?」

道の脇を素早く動くものが目に入った。

「子犬?いや、うさぎ?

・・・っと!おっとっとっとっと、きゃ!あーー!」


「・・・は、はれ?」

「ねえねえ、なんでそんなに急いでるの?」

「え?」

「ねえねえ、行きたいところまで跳んでいければ楽チンたよね!」

「は?」

「ぼくみたいに、ピョンピョン跳んでいける、この靴いらない?この靴もらってくれる人探してるんだ。

その代わり、お願いもあるんだけど」

目の前に突然男の子が現れた。かわいいふわふわのうさ耳をしている。

「あれ・・・夢?」

「おねえさんね、この靴がぴったり合いそうだから、もらってほしくて呼んじゃった。大丈夫、時間は止まってるから安心して。それより、靴いらない?」

「くつ?」

「うん。僕みたいにピョンピョン跳べる靴だから、行きたいところまでひとっ飛び!どう?」

「あー・・・朝練に間に合えば」

「間に合う間に合う!」

「じゃあそれで」

「良かったー!使い心地が良かったらそれあげるから、そしたら僕のお願い聞いてよ。じゃあ、よろしくね!」


「・・・ハッ!」

私は坂の上に立っていた。

「なに今の・・・白昼夢?え、どっちが夢?」

手の感覚を確かめる。

うん、こっちが現実。足を見る。

「あれ?」

私は、見たこともない赤いスニーカーを履いていた。

「やっぱ夢?」

靴の感覚を確かめるために地面を蹴る。

「う、わっ」

体が浮く

「え、ええっ?!」

『ほら、行きたいところを思い浮かべて跳んでみなよ、ピョーーーンって!』

「わーーー!」

体が浮いたことに焦ってバタついた足が地面を蹴ったのと同時に、すごい勢いで飛び出して、空をぐんぐん進む。

(おいおいおい、何だこれは!)

ぐんぐんスピードを上げて、とっくに駅を飛び越えて、一直線に学校に向かっている。

―キラリ☆

「ねえお母さん、あれ飛行機?」

「え?」


「うわっ」

途中にあるビルの屋上を経由する

「っと!」

「ふっ、うわぁ、飛んでる。すご・・・

はっ!!おわあ・・・わーーー!」



「・・・着いちゃった。何この靴!!と、と、とりあえず、朝練~!」


キーンコーンカーンコーン


「うさぎ・・・あれ、うさぎだったよね。」

帰り道、私はあの坂のてっぺんに来ていた。

「・・・いない。おーい!うさぎー!うさぎー・・・くーん!」

しばらく探したが見つからない、もんはしょうがない。

「帰るか。

・・・ひとっ飛びでいってみるか。」

ピョーン

「おお!ほんとに思ったところに飛んでいけるみたいだ!」



「到着!なんかめっちゃ時間節約できるな。これ、どこまで飛んでいけるのかな?

行きたいところを思い浮かべればいいんでしょ。行きたいとこ、行きたいとこ・・・うーん、おばあちゃんち?さすがに遠いか。よいしょっと!」

ビヨーン

「う、うわ、うえ?ちょ、ま、まって!」

びよーーんと体が上へ上へと飛んでいく

「こ、これやばすぎ!ジェットコースター?いや、一人、生身宇宙旅行?

うわーー、あーーーーー!」



「っは、はあはあはあ、つ、ついてしまった。死ぬかと思った。いや、一回天に昇った。絶対死んでた」


おばあちゃんちの明かりが点いている。

「・・・うち、帰ろ。よっ!」

ビヨーン

「うむ、すでに少し慣れている。我ながらすごい順応力だ。どのくらいで移動したのかな?東京から兵庫だぞ。数分?ふつう新幹線なら3時間とかでしょ。おいおいおい」

「ねえねえーー!気に入った?」

「わ!」

空を駆けるうさぎの男の子が現れた。

「ふふふ、すごいでしょその靴!」

「あ、朝のうさぎくん?」

「うん。おねえさん、上手に跳ねてるね!」

「探してたのよ!ねえこれすごいんだけど、もらっていいの?何かちょっとやばすぎっていうか、全部夢なのか、それか明日死ぬのかなっていうくらい現実感ないんだけど」

「あははは、大丈夫だよ。おねえさんにはこれからお願いごとをして、きいてもらいたいんだけど、そしたらがんばって働いてもらわなきゃいけなくなるから!」

「ひぃ何それ!やっぱ何かやばいやつなんじゃないの!」

「大丈夫だって!あのね、その靴は、サンタさんのプレゼントを届けるための靴なんだ。トナカイさんが赤ちゃんができて働けないのと、サンタさんにも、今年くらいゆっくり休んでほしいなって話になって、代わりにプレゼントを届けられるように、ぼくらうさぎがその靴を作ったんだよ!」

「はあ?サンタ?」

「そうそう。いきなり世界中の子供たちにプレゼントを配るのは大変だから、今から始めて慣れてもらって、クリスマスに備えよう!いいかな?」

「いやいやいや、世界中の子供たちにプレゼントとか、いやそれ私がやっちゃっていいの?そんな徳を積めそうなこと、私がやっていいの?」

「うん。その靴にぴったり合う人を探してたんだ。ほんとは赤いブーツだったんだけど、ちゃんとお姉さんの履いてた靴に合わせてその形になってるんだよ。どう?ぴったりだよね?」

「このスニーカーね。確かに!いつも履いてる靴みたいにぴったりだよ!」

「良かったー!それに、おねえさんみたいに子供が大好きな人にやってもらいたいの」

「ちょ・・・なんで知ってんの?そ、そりゃちょっとやりたいけど、他にも一緒にやってくれる人いるんでしょ?」

「ううん、おねえさんだけ」

「いや無理。詰んだ。私が1000人いても無理」

「大丈夫!この靴、慣れるとどんどんスピードが上がるんだ。今は遠くからはキラッと光る飛行機みたいに見えてるんだけど、練習すれば、どこでもつながってるみたいに一瞬で飛べるから」

「ほんと?そんなに?や、やれちゃうかな・・・私それやったら絶対天国行けるよね」

「それはわかんないけど、クリスマス以外も、良いことをしてくれた人達に小さな幸せを届けるお仕事があるから、それで世界中を飛び回ったら、きっとクリスマスまでには立派にサンタさんのお仕事ができるよ!今年はぼくらうさぎもお手伝いするから、みんなでがんばろう!」

「何それ、メルヘン~。あとこの靴、海外にも行けんの?すごい!あっ、海に落ちたりしない?」

「もしも靴が脱げて落ちそうになったら、その時は近くのうさぎがぴょーんと飛んで助けに行くよ!」

「まじか!早速明日アメリカ行ってみるわ!」

「えーと、自分で決めるより、明日からはお仕事を頼みたいんだ。お届けで寝る時間も減っちゃうから、そこは羊さんに協力をお願いして、ぐっすり眠れるようにしてもらうね。

おねえさんがよければ、サンタさんとぼくらからのお仕事の依頼、引き受けてもらえますか?」

「わかった。やるやる、やってみる!明日起きて夢だったってオチも考えられるけどやる!」

「ありがとう!ではおねえさんを、今年のサンタ代理に任命します。その証として、サンタの赤い靴をプレゼントします。これからよろしくね。」

「はーい、かしこまりましたー!」


キラキラキラ~☆


「あ、うちか。無事帰宅!」

「メェ」

「やば、羊?!」

「はい。お仕事は明日からということですが、これからおねえさんの眠りと休息をサポートします羊です。よろしくお願いいたします。」

「わあ、ご丁寧にありがとう」

「さっそく寝ましょう」

「いや、晩御飯食べさせてよ」

「あ、ごめんなさい。おふとんで待ってます。では」

「はいー、ありがとう。

・・・ただいまー!おなかすいたー!」


―こうして私のサンタ代理生活は始まった。

お布団に入ると羊が現れて羊を数え始めたから笑ったけど、自分が本当に笑ったのか思い出せないくらいに、一瞬で眠りに落ちていた。

そして次の日目覚めても赤いスニーカーは存在していたし、学校から帰ると、私の部屋にうさぎからの幸せのお届け便の小包が届いていた。

私は夕闇の街を飛び越え、海を越え、夜も朝も飛び越えて、小さな幸せを届け始めた。来たる、クリスマスに備えて。

みんな、待ってろよ!今年は私が、サンタさんなのだーー!






もし内容を気に入ってサポートしてもいいなと思ったらお願いします。今後の自分の活動全般に活かします。ありがとうございます。