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福祉は誰でもできる?!【当事者体験】

発達障がい者Aさん「私、福祉の仕事を考えているんです」

 なっつん自身、ASD(自閉症スペクトラム症)の当事者でありながら重度の知的障がいのある人が暮らす事業所で支援員(現在、非常勤)をしています。

 以前、発達障がいカフェの「Neccoカフェ」に行った時、たまたまその時に出会った人が「私、福祉の仕事を考えているんです。」とおっしゃりました。

同じように福祉の仕事に魅力を感じてもらえていることに嬉しさを覚える一方で別のとても強い気持ちも同時に抱きました。

「マジでやめとけ!!」(超心配!!!)

そう、心の中で叫びました。


1.      「福祉は誰でもできる仕事」

 以前より、「福祉は誰でもできる仕事」と言われることがあります。

 これはある意味で正しく、ある意味で間違っています。

●「福祉は誰でも“チャレンジ”できる仕事である」
●「福祉は誰でも“問題なくできる”仕事ではない」

 と、なっつんは考えています。


2.      「福祉は誰でも“チャレンジ”できる仕事」

 福祉は誰でも“チャレンジ”できる仕事です。

 これは事実です。

 実際のところ様々な福祉・介護の求人情報があり、無資格・未経験の募集もあります。

 福祉は、国家資格を含む複数の資格があり求人条件になっていることもありますが、

医師や弁護士のように「○○の資格がないと、法律上この業種の仕事は一切できない」というものではありません。

 そのため末端の支援者であれば無資格・未経験でも応募できる求人があり、福祉業界の入り口は広く開かれていると言えるでしょう。

 また、実際の福祉・介護業界は人手不足とよく言われており、人生経験が豊富であったり、素質が認められたりするとと入職しやすいという現実もあると思われます。


3.      「福祉は誰でも“問題なくできる”仕事ではない」

 しかし、福祉の仕事は誰にでも問題なくできる仕事ではありません。

 どの仕事にも向き不向きがあるように、福祉にも合っている人・合っていない人がいます。

 なっつんが思いつく限りでも、、、

●人や社会に興味・関心を持ち続ける力
●冷静で分析的な視点を持ちつつ、利用者の目線に立って想像し共感する力
●職員自身の体と心を健康に保ち続けるための自己管理能力
●人と社会を理解し支援するための専門的な価値観・知識・スキルを習得し実践する力
●支援者自身の感情、思考、価値観、能力などに自ら気づき支援者として適切な振る舞いに調整する力
●利用者の状況は毎日異なる微妙な変化を観察して臨機応変に適切な対応をする力
●利用者が関係する家族・学校・職場・病院・福祉施設等と連携・調整する力
●職員同士の人間関係を円滑にし、その円滑な人間関係を支援に活かす力
●職員同士・関係者同士で円滑な支援を行うために臨機応変に対応する力
●職員自身も1人の生活者として一般常識や一般認識を身に付けていること

 などたくさんあります。

 これら限らず、他にも性格的なことなど、向き不向きに影響する様々な要素があると なっつんは考えています。


4.      「発達障がい者にとって福祉の支援者は厳しい」

 発達障がいと言えば、「ASD(自閉スペクトラム症)」「AD/HD(注意欠陥・多動性障害)」「LD(学習障害)」が有名ですよね。

 これらが福祉の現場で仕事を行う上で難しくなることは大いに想像できます。

●「ASD(自閉スペクトラム症)」

→利用者や同僚などの表情や仕草などから気持ちや考えを察することが難しく、利用者支援も同僚との人間関係に困難を抱えやすい

→マルチタスクが困難で、複数の利用者同時対応や電話応対などが難しい

 →見通しを立てることが難しいため、その時々の状況に応じて臨機応変に対応することが難しい


●「AD/HD(注意欠陥多動性障害)」

 →気づいたまま動いてしまい適切なタイミングで支援や業務ができない

 →どんなに意識しても同じようなミスや業務の漏れを繰り返してしまう


●「LD(学習障害)」

 →引継ぎノートや利用者の連絡帳などが手書きのため、書いたり読むことができない

 →利用者や同僚の話している言葉を聞いて理解することが難しい


 このように仕事をする上での困難が多くあります。

 それでも発達障がいがありつつも支援者として活躍される方は実際いらっしゃいます。

 しかし、それは障がいがあっても、その苦手さや困難さを補うスキルや工夫ができていることに加えて、自分の強みを十二分に発揮している方々であるでしょう。


「発達障がいがあっても支援者を目指すなら」

 それでも「発達障がいのある私でもどうしても支援の仕事がしたい」ということであれば、次のことを実践してみて欲しいと なっつんは考えています。

①     徹底的な自己理解

 障がいに限らず客観的な事実ベースで深く深く「ありのままの自分」を知りましょう。言葉にすると短いですが、一番大事です。

②     自己管理能力を高める

うつなどの二次障がい予防のためにも、ストレスや疲労を感じた時に自分がどうなるのか、そうなった時に健康的な生活が続けるための対処方法や生活習慣を身に付けましょう。

③     「障がい」という言葉を使わずに自分の障がい特性を人に話せるようにする

 障がいレベルの苦手さについても、「障がい」という言葉を使わずに「苦手さ」として人に伝えて、ある程度共感して理解してもらえるようにしましょう。そのレベルでの自己理解、障がい特性理解、障がい受容を目指しましょう。障がいを開示して合理的配慮を依頼するときにも必要です。

④     苦手を補う工夫を身に付ける

 障がい特性を自分1人で対処できるための工夫やスキル身に付けて、他の人のサポートやフォローがなくても、あるいは少なくても仕事ができるようにしましょう。

⑤     自分が働きやすい人間関係の築き方を身に付ける

 自分の理解者し応援してくれる人を見つけたり、そういった関係性の人が増えるような関わり方を身につけましょう。こうした理解者は障がいを開示しなくてもサポートしてくれる人になる可能性があります。また、苦手なタイプの人を見極め適切な距離感を取る力も大切になります。

⑥     自分の強みを理解して職場で適切に発揮できるようにする

 自分も同僚も「○○苦手だけど、△△は良いところだよね」と認められるようになりましょう。障がい等大きな苦手さや周囲の人が受け入れにくい要素がある人ほど、自分の強みなどで誰かにギブできるところがあるかが人間関係においても仕事においても大きな差に繋がります。

⑦     上記のすべてをクローズも選んで働けるレベルを目指す

 実際にクローズ(障がいを開示せず)で働くかどうかではなく、「クローズでも働けるくらいの自己理解・自己対処・人間関係の築く力を目標にしましょう」ということです。というのも、実際の福祉の現場は人手不足なこともあり障がいを開示しても周囲の理解や合理的配慮を思うように受けられるとは限りません。採用する側としては、仕事を円滑にするための合理的配慮の筈が、職員への配慮がメインとなり支援対象者が増えているような状況を避けたいからです。また、利用者が関係する家族や関係機関との相談や連携などの場面では、職員自身の障がいを開示して配慮を求めることは現実的には難しいと考えられます。そのため「障がい」という言葉を使わなくても、その場その場で苦手さに対応できる力が必要になります。


最後に

 今回は発達障がいのある人が福祉の仕事を目指すことについてフォーカスしました。

 なっつん個人としては、障がいに限らず、いろいろな背景を持つ人が福祉の仕事に関心を持ち多様な背景をお互いに活かして、利用者の幸せや生きやすさに繋がるお手伝い(支援)ができる世の中であれば嬉しいです。

 一方で、人間同士、生き物同士であることもまた現実であり、理想の世の中でないのも事実だと感じています。

 理想を今の世の中に求めるのではなく、「自分が変われば周りも変わる」の精神で、まずは自分自身が変わっていく・成長していくことが大切だと考えています。

 毎日少しずつ自分が変われる・成長できるよう自分と向き合っています。

 長文となりましたが、この記事が、皆様の気づきや参考になるなどお役に立てたなら幸いです。

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