コロナ禍、握手やハグの自粛

コロナは、デンマークでの日常の挨拶を完全に変えてしまいました。私たちは、 親戚や親しい友人との再会に「ワァ!久しぶり!」と握手やハグで歓び や親し みを表していたのに今は、自粛!。 
それに代わり、ひじとひじをこっつんこさせて「やあ、やあ!」と慣れないことでしのいでいます。
デンマーク生活上では距離を置いて挨拶するのって、結構寂しいし、味気ない気がしてコロナが、生活習慣まで変化させた、と戸惑いを感じているの は、私だけではないと思います。
各国で打ち出されているコロナ対策の遵守すべき留意事項は、その国の文化や習慣をよく表しているようです。
デンマークでは、手洗い/消毒の励行と並び、握手やハグの自粛が求められています。
握手は、デンマーク人にとって「あなたを受け入れます。」とか「会えて嬉しい。」とか手の握り具合にも気持ちを表す役目があって、差し出され た握手の手を無視すると、日本人がお辞儀をしたのにお辞儀が返ってこない、と同様に相手が気を悪くしかねません。
実は、数年前に「握手をする、しない」で政治的なディベートにまで発展した事例があります。デンマークでは、外国人がデンマーク国籍を取得する際 にデンマーク語はもとより文化・歴史を熟知したことを示す試験にパスする必要があります。晴れてデンマーク国籍を取得すると自治体主催で祝賀式が 開かれますが、数年前に、その祝賀会で市長が満面の笑みと共に「おめでとう!」と新デンマーク人に握手の手を差し出したところ、拒まれたというエピソードがあり、 大問題になりました。
新デンマーク人が握手を拒んだ理由は、その人が信じている宗教では異性と手を握らない教えとか。この場での握手は、今後、デンマーク国民としてデンマークの価値観を共有する、という同意を示すという意味があります。このエピソードは、政治 的な ディベートまで発展し、これを受け入れない者は、国籍を与える対象者ではない、と結論づけられ、結果2018年6月に新デンマーク人は、「手 袋なしで素手の握手で同意する」ことが法律で定められました。ところが、今年は、コロナ禍、国籍取得希望者向けのサイトには、「コロナ禍では、握手ぬき」の注釈がつけられていました。  
 ハグの自粛も全国民に戸惑いを与えました。今まで「会えてうれしい」「大好き」「がんばって」などの愛情表現にハグは大きな役割を担っていましたが、それが自粛。私の姪たちのチビッ子も再会する際に飛びついてきたのに、今は、小さな肘を向けてきます。
でも保育園児にハグ抜きは、大いに問題あり、だったようです。悲しい時、嬉しい時にスタッフに抱きしめてもらって育っている園児にとって、抱きしめてもらえないのは精神的によくないということで保育園でのハグは、例外になりました。
デンマーク人は「日本はおじぎの国だから感染率が低いのかも。」と評価してくれますが、それも一理ありかな、と好意的に受け止めています。
2020年9月

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