デンマークつれづれ日誌その2


デンマーク女性たちのMeeToo。政治家を辞任へ
「デンマークの女性がセクハラ被害の告発?」「今さらなぜ?」と我が耳を疑ったのは、他国より遅れて今年の10月に起きた「#Meetoo」旋風 でした。あれは、確か、2017年のハリウッドで「#Meetoo」運動がおこり、ヨーロッパにも流れ込んできましたが、当時デンマークでは、海外でのニュースとして傍観していたように思います。
 私はそれを、デンマーク社会は性に対して開放的であり、「性」を惑わず大らかに話し合える国民性なので、あえて世論に訴えることは不必要だか ら、と 思っていました。
 所がどうも現在の若い女性たちは、性的被害を受けていても声を出せずに訴える「きっかけ」を待っていたようでした。、
 デンマークを含む北欧諸国は、70年の初頭に古い概念を打ち破る女性解放運動の最中で、「フリーセックス(性の解放)」「トップレス」という言 葉がま かり通っていました。私は、まだ、日本から来たばかりで夏の海岸に老いも若きもが堂々とトップレスで横になり日光浴を楽しんでいる姿に目のや り場を困っていました。
 その70年代に青春を過ごしていた女性たちは、「性の解放」を叫び、避妊薬ピルの自由化や人口中絶法などを勝ち取ってきた人たちです。
 その世代を祖母や母をもつ現在の20~40代の女性たちは、どこでどうやって性の後戻りが起きているのでしょうか。 そういえば、最近の夏の海 岸で は、トップレスの女性は消え、色とりどりのビキニ姿に変わっています。
 若い女性たちが待っていた「きっかけ」は、今年9月上旬に到来しました。デンマークメディア界で売れっ子の31歳の女性司会者が担当する「コメ ディーの祭典」というショーの舞台で13年前に上司から受けた性的暴言のエピソードをコメディータッチで観客に暴露し、会場から彼女の勇気とユー モラスに訴える力に賛同の盛大な拍手が送られ、それからデンマークはMeetooの渦中に突入したのです。
 これをきっかけに1人で悩んでいた若い女性たちは、堰を切ったようにメディア業界や政党内で「#MeeToo」と声を挙げ、上司のセクハラを訴 え、10月のメディアを賑わせました。国会議員に至っては、急進自由党の44歳の党首が数名の若年女性党員にセクハラ行為を告発され、10月上旬 辞任に追い込まれ、更にその二週間後には首都コペンハーゲン市市長も数件のセクハラ行為を訴えられ同じく辞任に追い込まれました。現在59歳の元 市長は、10年間市長を務めすっかり コペンハーゲンの顔になっていましたが、メディアや世論に押され失脚に至りました。
 1人で「セクハラ」被害を訴える事に消極的だった若い女性たちは、SNSを駆使して仲間をつくり政治の重職に就いていた男性を失脚させたことは、現代版女性解放運動だという人もいます。
また、一方では、被害者の女性の告発が有利に動く事が多く、証拠も出にくいグレーゾーンの性問題は「法と秩序」を見直す必要があるのでは、どいう 声も聞かれるようになりました。男女同権が行き渡っているはずのデンマークで、男性がまだやはり上目線なのでしょうか。

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