小説版:未明の刻に

朝の4時。LINEの通知音が鳴った。バイブを消していなかったかと後悔しながら表示された送り主を確認した。

ああ、あの子か。あの子と言っても同級生だ。
変わり者と揶揄されて未明の夜空を撮ることに定評がある女の子。

大体の人は彼女を嗤う。変なやつ。不気味。近づきたくない。

前髪は目にまでかかり、少し青白い不健康そうな肌が目立つ。それにお昼休みはあまり話さず、狂気性を孕んだ純文学を読んでいる。

みんな彼女を誤解している。少し血色が悪いからか、話しかけづらいだけだ。少し前髪が長いから顔色を見えないだけだ。少しみんなと趣味が違うだけだ。

僕は今でも覚えている。

一度彼女は前髪を切った。切ったと言っても普通の人では判別できない範疇だ。

ところが僕は気付いた。正確には気付いてしまった。気付いた僕は朝の挨拶がてら、溶け込むように、「髪切った?」と聞いてみた。

「うん。」と答える彼女の顔は可愛かった。しかし他の人は気付いてもいないし、興味も無い。

僕はその日の放課後やけに彼女と会話が弾み連絡先を交換して、時折、趣味で撮っている写真を送ってくれる。
今日も例に漏れず写真を受信した。彼女が青と紫のグラデーションした未明の空を撮る理由は分からない。

残念なことに僕は彼女の理解者にはなれない。それが歯痒くて、そんな自分の無力感に苛まれている。

僕ができることは限られている。その一つがメッセージだ。
「上手く言葉にできないけど、君らしくて好きだな。」

僕は心の底から吐き出した。彼女からはにっこりした絵文字だけ送られてきた。

詩版はこちら

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