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【放送概論風味】この春から「放送概論」を学ぶだろうあなたへ

いよいよ4月。春から #放送学科 で学ぼうというあなたは、本来ならば入学の式典に参加し、多くの同級生や先生方や先輩方に会い、ガイダンスやオリエンテーションを受け、大学生としての学習を、そして新たな生活をスタートさせる緊張と興奮のなかにいたはずです。しかし本年度は、発表の通り、授業開始は大きく延期されることになりました。

ウイルスによる感染症は、人と人が接することで感染します。あなたが通学するために移動することで、不特定の人々と出会い、あなたが感染する危険はもちろん、あなたのご家族や友人、あるいはあなたとすれちがう多くの方々に感染し、その命を奪う危険があります。それはどうしても避けなければなりません。

でも4月1日から、あなたは放送学科の学生です。そこで少しでもあなたが大学生として、自分の「専門」をもった学習活動をしていただくお手伝いをしようかなと思い、きっとあなたが授業開始の月曜の朝から受講するはずの放送概論の担当者として、このnoteをはじめることにしました。まずはその「オリエンテーション」です。

言い方はなんだけれど、もしかしたらこれはチャンスかもしれない

本来始まるはずだった授業が大きく延期され、今はなんだか春休みが延長されたような気分でいるかもしれません。あるいは 毎日の報道などで、このまま大学は始まらないのではないかと不安に思ったりもするでしょう。どうにも落ち着かない日々、なにもすることのないような日々を送られているのかもしれません。でもよくよく考えてみれば、放送を学ぼうとする人にとっては、逆にこれは大きな学習の機会かもしれません。

大学とはいえ教室での実習・演習や講義など授業時間に縛られます。また課外での活動なども積極的にしていくと、放送学科の学生であるのに、テレビも見ない、ラジオも聴かない、という状況になってしまうことも、よくあることです。ところが今は時間はたっぷりとあるのではないでしょうか。キャンパスのある東京都では、特に若い方への外出の自粛などが要請されていますので、家にいる時間が必然的に多くなります。これはテレビをじっくり見る、ラジオをたっぷり聴くのに大変に都合が良いとも考えられるのです。

もちろんテレビ番組やラジオ番組だけでなく、テレビドラマの原作となった小説やコミックを読んでみる、映画を見てみる、配信でさまざまな作品を鑑賞するなどという時間も取れます。いままで触れてこなかった作品と腰を据えて向かい合う貴重な時間かもしれないのです。

それどころか重要な機会かもしれない

時間があるだけではありません。今、テレビを見れば話題の大半がウイルス関係のことだと思います。これはあなたの生活にも大きな大きな影響を与えてきています。あなたもご家族も大変な思いをされているかもしれません。しかしここで、ちょっと見方を変えることもできるかもしれないのです。
今この瞬間は、これだけの大きな事態のなかで、テレビやラジオはそれにどう立ち向かっているのかをリアルタイムで観察し分析することができる、きわめてレアな機会だ、とも言えるのです。

テレビのニュースやワイドショーは連日この話題に大きな時間を割いています。日々様々なことが起きていますが、実はその伝え方は、番組によって、放送局によって実に様々です。病気の実態、政府の対応、地方自治体の対応、予防の方法、経済の問題、世界との関係などそれぞれを、みな様々な角度からこれまた様々に取り上げています。

ある番組で伝えられていることは、他局の番組ではどう伝えられているでしょうか。あるいは朝のニュースとそれにつづく情報番組ではどのように異なるでしょうか。もしも新聞を購読しているのなら、その紙面とテレビのニュースはどのような違いがあるでしょうか。

またニュース以外の番組はどうなのか、CMではどうか、じっくりと観察していると実はさまざまなことが見えてきます。ラジオとテレビでは、伝え方も伝わる印象も大きく違うようにみえますが、いかがでしょう。あるいは動画配信やSNSではどのようにつたえられているでしょうか。それはテレビとどんな関係にありそうでしょうか。BSやCS放送ではいかがでしょう。そこではどんな伝えられ方がされているでしょうか?

時間だけはたっぷりとあるいまだからこそ、分析的研究的にテレビやラジオの番組を眺めてみることができます。特に今回のウイルスは極めて大きな事態ですから、番組制作者の力量や考え方がよくわかる状況でもあるのです。
もちろんテレビはぼんやりと見ていたいメディアの代表ではありますが、あなたはこれから放送を専門的に学ぼうとするのですから、ちょっと分析的に見てみましょう。『ぼーっと見てるんじゃねぇよ』という意識で放送と向き合ってみましょう。

分析的視聴のために

では分析的に見るにはどうすればよいか、ということですが、一言で言えば「単なる受け手」にはならないで、ということです。たとえばある番組で、ウイルスのPCR検査の精度(あまり正しい言い方ではないのですが)が取り上げられていたとします。それをただ黙って見るのではなく、PCR検査とは何か、検査の精度とはどういう問題か、ということをGoogle先生でも良いので調べてみる。検索すればさまざまな情報が出てくると思いますが、その中で「信用していいのはどれかな」「きちんと証拠や科学的背景などがあって書かれているものはどれかな」ということを考えながら情報を探してみます。(余計なヒントですが「調べてみました」「いかがですか?」などの言葉を含むサイトは他のサイトの情報を切り取ってつなげただけのものがほとんどなので全部無視してもいいと思います)

このとき『複数の情報源』を参考にするということをこころがけてください。検索などで得たり、書籍などで得る情報は誰かが作成したものですから必ず作成者の意図があります。単一の情報源に頼ると、その意図によって偏ることがあります。いくつもの情報を参考にしながら「PCR検査の精度」について調べてゆきます。

すると番組で取り扱っていたこととは異なる角度や、異なる側面も見えてくると思います。番組で言っていることは間違っているように見えたり、あるいは言い方が足りないと感じたりするかもしれません。では他の番組ではどう言っているでしょう。ニュースサイトや通信社の記事などではどうでしょうか。SNSやブログでそれについて語っている人、論じている人はいないでしょうか。あるいは研究論文もみつかるかもしれません。そうして探索を続けていくと、おぼろげながら今回の事態の中で「PCR検査の精度」が持つ意味が見えてくると思います。

雑記帳を作る

おそらくこんな面倒臭いテレビの見方をしたことはあまりないでしょう。でもこうしたことを、ニュースや情報番組だけでなく、ほかの多くの番組でも是非やってみて欲しいのです。面白いドラマがあったら、脚本は誰だろう、演出や監督は誰かな、と調べたり、CMの商品や企業、出演者について調べてみたり、バラエティでとりあげられた話題や場所、人物などについてもニュース同様に分析してみたり。

そのためにはテレビを見たりラジオを聴いたり、あるいはスマホを眺めていて「あっ」と思ったことをどんどん書き留めておくことが必要です。番組を見ている最中にスマホでググりはじめてもいいのですが、できれば後回しにして、とりあえず番組はきちっと視聴したいでしょう。しかし人間は忘れっぽい動物です。ふと思った言葉も、実は、はやければわずか数秒で消えていてしまうのです。

そんな時になんでもメモしていける雑記帳・ノートを一冊作るといいです。そこに気になったことを書いておき、またそれを調べてわかったことを書いたりしておきます。中身をきちんと整理する必要もありませんから、思いついたことを好き勝手になんでも書く雑記帳として、いつもあなたのそばにおいておくといいと思います。

実は頭に思い浮かんだこと、というのは「言葉」にはなっていません。輪郭のはっきりしないふわっとしたイメージのようなものです。それを雑記帳などに書いて「言語化」することで脳内の情報が形になって定着します。こんなことを調べよう、こんなことがわかったというイメージを言語化しておくことは大変有用です。

大学では「ノートをとる」ことは大きな学習スキルの一つです。大学の授業では、教科書もなく、先生がなにかについてディスカッションしながら解説していくような授業がやまほどあります。そこでは先生との対話や先生の解説をどんどんノートしていかないと学習が成立しません。そのための訓練として番組を見ながら気になったことをどんどんメモする、あとでその事柄をあれこれ調べるというクセをいまからつけておくと良いと思います。

なんでもかんでもメモするノートとして、1冊の雑記帳をつくることをお勧めします。いつも同じ1冊のノートであれば持ち歩くのもとても楽ですし、見返すのも簡単です。そして、そんなノートがどんどん溜まっていくと、あとで振り返るのもけっこう楽しいものです。

おわりに

というわけで、時間がある今を積極的に活用して
 ・できるだけ多くの番組や作品に触れる
 ・番組を分析的に視聴・聴取する
 ・雑記帳を作る
ということに、まずチャレンジしてみてください。
授業開始までまだまだありそうですが、番組分析などしていると1日はあっという間です。ぜひ有効に時間を使ってください。

この状況ができるだけ早く収束することを願っていますが、事態はどう動くかわかりません。みなさんも大学からの情報や住んでいる地域の自治体や政府からの情報にしっかりアンテナを張り、放送学科の学生として自覚と責任のある行動をとってほしいと思っています。
大学からはオンライン授業をはじめさまざまなアクションがあると思います。もしかすると教室での授業が早くに始められるかもしれません。そうなったときには笑顔でお目にかかります!
また残念ながら時間がかかってしまいそうなときにはこのnoteや、あるいは他の様々な方法であなたに学習情報をお届けしようと思います。けしてあなたを放ってはおきませんので、よろしくおねがいします。

それではまた次の機会に。

とてもぐうたらな社会学者。芸術系大学にいるがこれでも博士(社会学)。