文章力向上道場
聞いた話を”自分の言葉”で誰かに話す
・聞いた話を、誰かに話す。これは、”翻訳”の第一歩だ。p.43
・話すことによってなにが得られるか?僕は、”3つの再”と呼んでいる。
①再構築・・・言葉にするプロセスで話の内容を再構築する
②再発見・・・語り手の真意を「こういうことだったのか!」と再発見する
③再認識・・・自分がどこに反応し、なにを面白いと思ったのか再認識する p.43
・われわれは”翻訳”するとき、自分が対象のどこにピントを合わせているのか知ることになる。p.46
・どこにピントを合わせるかは、その人の自由であり個性だ。p.46
「地図・絵・写真」を言葉にしてみる
・「言葉でないもの」を、自分の言葉に置き換えてみるのだ。p.47
・たとえば最寄りえきから自宅までの道のりを、全く土地勘がない人にもわかるように言葉で説明してみる。説明のための文章を、頭のなかで考える。「改札を出て左手に、日ぐちの出口があります。出口までの距離は20メートルほど。そして西口を出ると正面にバスターミナルとタクシー乗り場があるはずです。右手には三井住友銀行と、その隣にマクドナルド。左手には自転車置き場が見えるでしょう。そのままバスターミナルを迂回するように右に進んで・・・」と、事細かに描写していく。pp.47-48
・また以前取材させていただいた日本語学者の金田一秀穂先生は、これに加えて「絵や写真を言葉で説明する」というゲームを提案されていた。たとえば、1枚の写真を見ながら、「テーブルの上に、小さなグラスが置いてある。逆光に照らされ、白く輝いて見える。大きさはちょうど手のひらに収まる程度。容量にして180cc。使い古され、やや曇っている。曇りをよくみると、それは小さなキズの集まりである」というように、言葉で説明・描写していくのである。そして金田一先生は、このゲームのルールとして「自分の意見をいっさい入れないこと」を挙げていた。自分の意見とは、つまり主観や感情のことだ。逆光に照らされたグラスを描写するときに「初夏の朝を思わせる柔らかな光に照らされ」と思い入れたっぷりに語っても、それが正しく伝わるとは限らない。初夏の朝についてのイメージは人それぞれだし、初夏の朝の光が「柔らかい」と感じる人がどれぐらいいるのかもわからない。鋭い陽差しを思い浮かべ、セミの鳴き声がけたたましく響き渡る、不快な情景をイメージする人もいるだろう。より詳しく説明しようと安易なレトリック(美辞麗句のようなもの)に走るほど、正確な描写から離れていってしまうのだ。p.49
「リズムの悪い文章」はなぜ読みにくいのか?
・リズムの悪い文章とは、端的に言えば「読みにくい文章」のことである。p.60
・パーツごとに見てみると、いずれの文も間違っていないのである。そしてパーツが間違っていないから、それをつなげても間違っていないと考えてしまう。論が正しく展開されているような錯覚を起こしてしまう。支離滅裂とは「ワニとは二足歩行の哺乳類である」というような、あきらかにおかしな文を指すのではない。文がおかしいのではなく、文と文の「つなげ方」や「展開の仕方」がおかしいとき、その主張は支離滅裂になり、リズムよく読めなくなるのだ。p.63
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