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ポスター制作力向上道場

◆参考文献を読む

──ポスターとパンフレットへのアプローチは連動しているのですか?
アプローチは全然違いますね。映画のポスターは、劇場とか公共のところでこれから観る人・観てもらいたい人のためのもの。クライアント、ひいては不特定多数のお客さんの方を向いて制作するものなので、大勢の前でスピーチするような緊張感を伴います。対して映画のパンフレットはすでに観た人に向けたツールなので、観賞したもの同士が共有する密やかな会話に近く、比較的リラックスしてのびのびできるかもしれません。

●ポスターとパンフレットで、考え方が異なる

・映画のポスターは、劇場とか公共のところでこれから観る人・観てもらいたい人のためのもの
・クライアント、ひいては不特定多数のお客さんの方を向いて制作するものクライアント、ひいては不特定多数のお客さんの方を向いて制作するもの

・映画のパンフレットはすでに観た人に向けたツール
・観賞したもの同士が共有する密やかな会話に近く、比較的リラックスしてのびのびできるかも

──ポスターは、だいたい何パターンくらい作るんですか?
多いと100近くになる時もあります。あれやこれやみんなで検討した挙句、結局元に戻ったりして(笑)。

●1つのポスターにつき、99の失敗がある

・多いと100近く

──本国(カナダ)のポスターやワールドプレミアされたカンヌ国際映画祭で上映時のポスターは、「友情」をテーマにした群像劇に見えるビジュアルでしたね。
映画を観れば、友情の物語である事は一目瞭然なのですが、意外にもドランが主題としてはこれまで取り扱ってこなかった恋愛の部分にフォーカスし、(主人公の)二人がソファで座っているキスシーンにしようと思いました。印象的なシーンで、ここから映画が始まるし、赤と青の服の色が作品全体を通して象徴的に使われているので。

●作品全体で使われている色をポスターの配色に取り入れる

・赤と青の服の色が作品全体を通して象徴的に使われているので。

──順番としては、ポスターとチラシが出来て、パンフは最後ですよね。どのくらいの期間で仕上げるんですか?
結構時間が無かったりします。公開前なので新聞広告などの最終の宣伝物と並行することもありますし。『ミッドサマー』などは結構というかかなり短期間で仕上げています。

●広報物は、つくる順番がある

・順番としては、ポスターとチラシが出来て、パンフは最後

──『マティアス&マキシム』は、トレーシングペーパーで2枚の写真を重ねて、さらに赤いトレーシングペーパーを上から被せていますが、この形にしようと思ったのは?
ふたつのシーンを重ねたら面白いんじゃないかというアイディアは、かなり最初の段階から持っていました。赤いトレペを重ねたら良いというのは、後から思いついたんです。(マキシムの頬の)赤いシミが消えるんじゃないかと思って。フランソワ・オゾンの『ふたりの5つの分かれ路』の試写状で、蛇腹状の透明なフィルムを折り畳んで、5つの話を重ねあわせると一枚のコラージュになるように作ったことがあって、それを発展させたようなアイディアですね。

●トレーシングペーパーを重ねると、同じ写真で異なる見え方を演出できる

・赤いトレペを重ねたら良いというのは、後から思いついたんです。(マキシムの頬の)赤いシミが消えるんじゃないかと思って。

──パンフレットのサイズについては、どのようにお考えですか?
最近はA5で作る場合が多いですね。A5はコンパクトで評判が良いです。ドラン作品は、少なくとも自分でやる限りはサイズを揃えようかなと。A4以上の大きいサイズだと、1ページに対して情報も盛り沢山で、雑誌っぽい雰囲気になる。『スター・ウォーズ』などの大作だとそのサイズ感だけでアガりますが、アートハウス系の映画だと貧相になったりするので避けるかも。『ブックスマート』は久々にB5変形にしました。モチーフがノートなので。

●映画のパンフレットはA5が多い?

・最近はA5で作る場合が多いですね。A5はコンパクトで評判が良いです。
●映画に登場する印象的なモノのサイズに合わせる。映画の登場人物と観客の文脈を接続できる

・『ブックスマート』は久々にB5変形にしました。モチーフがノートなので。

──デザインのアイディアは、どういう時に出てくるんですか?
締め切りギリギリに思いつくこともあるし、最初の試写を観た時からひらめくこともあります。『アメリカン・アニマルズ』のパンフレットの、手でちぎったようなビリビリの製本などは試写の時点で決意しました。『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』のパンフレットの深い焦げ茶色も、海外のポスタービジュアルを見た時からなんとなく想定していました。焦げ茶は地味な色だけど、その色味に綺羅びやかさが伴った用紙を使えば、映画の世界観にかなり合致するかなと。

●デザインを得るヒントは、ありとあらゆる情報から

・最初の試写を観た時からひらめく
・海外のポスタービジュアルを見た時からなんとなく想定

―数々の映画ポスターのデザインを手掛けている大島さんですが、いつもどんなところをポイントにデザインを進めているのでしょうか?

大島:案件によってまちまちです。たとえば『アメリカン・アニマルズ』(バート・レイトン監督 / 2018年)のように海外のビジュアルがすごく秀逸だと、日本版にローカライズする、翻訳していくという感じですね。

●翻訳という言葉は、編集の世界でよく耳にする

・海外のビジュアルがすごく秀逸だと、日本版にローカライズする、翻訳していくという感じ

―90分や120分という長尺の中から、その映画のポイントとなる部分やエッセンスはどのように見つけていくのでしょうか?

大島:見どころ自体がネタバレになる場合が多いので難しいのですが、ネタバレになりそうな部分を見せずにエモーショナルなところや、その映画が持っているムードを残していくことですかね。

●ネタバレにならないようにポスターをつくって、観劇したい欲を掻き立てるのは難しそう

・ネタバレになりそうな部分を見せずにエモーショナルなところや、その映画が持っているムードを残していく

◆次にやること

・参考文献を読みつづける
・スキマ時間に大島依提亜さんのTwitterを拝見する


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