見出し画像

ポスター制作力向上道場

◆やること

・参考文献を読む

◆やったこと

知られざる映画タイトルデザインの世界

『Dolls』『ウォーターボーイズ』『横道世之介』などをはじめ、誰もが一度はその仕事を目にしているであろう現代映画タイトルデザインの第一人者・赤松陽構造さん

●映画タイトルデザインのプロは、赤松陽構造さん

現代映画タイトルデザインの第一人者・赤松陽構造さん

『八重の桜』のオープニングクレジットも一人ずつ書いていて、「子」という文字ひとつ取っても同じものはありません。ゴシックや明朝のような既存の書体をレタリングすることとは違う作業なので、良いものができるまで一人の名前を何十枚も書き続ける場合もあります。

●同じ漢字でも、同じ書体ではない

「子」という文字ひとつ取っても同じものはありません

赤松:そう思います。例えば、『Shall we ダンス?』の題字は、あらかじめ書かれた文字を少しずつ消し込みながら、一コマずつ撮っているんですね。それを逆に回すことで、スクリーンにタイトル文字が書かれていくような動きになるのですが、準備と撮影それぞれに丸1日ずつ費やし、さらにそれを現像所で加工するので、実際に確認するまでには10日間ほどかかるんです。それだけ時間をかけているから当然失敗なんて許されません。いまはこうした作業がパソコンで簡単にできてしまうし、仮に失敗しても簡単に元に戻せますよね。でも、なんでも簡単にできてしまうと、人はものを考えられなくなるし、本当の意味で心を込めて何かをつくることができにくくなってしまうんじゃないかと思うんです。

大島:『Shall we ダンス?』のタイトルは、文字がカーブしているところでは筆跡の速度も変わったりしますが、パソコンでつくるとすべて一律になりがちです。そうした細かい部分にも手書きの感覚というものが反映されていますよね。また、特に映画の題字というのは、作品の個性やストーリーを集約させていく必要があるものなので、手書きで作字することが大切になってくるのかもしれないですね。

●手描きだと、筆跡の速度をコントロールできる

『Shall we ダンス?』のタイトルは、文字がカーブしているところでは筆跡の速度も変わったりしますが、パソコンでつくるとすべて一律になりがち

赤松:映画というのは何十人もの人たちが集まってつくるオリジナリティの高いものなので、題字に関しても基本的には手書きが良いと思っています。題字をデザインする時には、必ず映画の「色」というものを考えるんです。この映画にはどんな色が合っているのかなと想像しながら、文字をデザインしていきます。また、スクリーンに映るものは基本的に数秒で流れていってしまうので、細かいディテールよりも何よりも力のある文字というものが説得力を持つんです。そういう意味でも手書きの方が良いんですね。時間の制限ナシに、いくらでもディテールを見ることができる印刷物と違い、映画というのは常に動いていますからね。

●題字は、ディティールよりも、力のある文字を

スクリーンに映るものは基本的に数秒で流れていってしまうので、細かいディテールよりも何よりも力のある文字というものが説得力を持つんです。

大島:僕もエンドクレジットなどのデザインをすることがあるのですが、いまだにスクリーンの感覚がつかめていないところがあります。一応コンピューターで文字が流れる速度などはシミュレーションできるのですが、スクリーンでラッシュを見た時に全然イメージと違って恥ずかしくなることがよくあります(笑)。スクリーンには大きさの概念というものがなく、今回の展示でも、赤松さんが一コマ0.5mmずつ動かすというような指定の仕方をされていたことがとても新鮮でした。デザインを時間軸的な空間で考えるという感覚は、僕からするととても不思議に感じますし、グラフィックデザインとはだいぶ異なる特殊な領域なんだなと。

赤松:A3サイズでつくったものが10~15メートルのスクリーンに引き伸ばされると、手元で見た時の感覚とは大きく変わってきますし、動いている文字の行間と、止まっている文字の行間というのも全然違うものです。また、自分の視野の中に収まるパソコンのモニターと、目で追いかけていかなくてはいけないスクリーンでは、あるものが同じスピードで動いたとしても体感速度はかなり違って、スクリーンで見る方がだいぶ速く感じられるんですね。そうした感覚を覚えることがこの仕事の最も大切なことのひとつで、私も最初の頃は失敗を繰り返していて、10年ほどかけてようやく体得できました。

●動いている文字の行間と、止まっている文字の行間は異なる

動いている文字の行間と、止まっている文字の行間というのも全然違うものです。また、自分の視野の中に収まるパソコンのモニターと、目で追いかけていかなくてはいけないスクリーンでは、あるものが同じスピードで動いたとしても体感速度はかなり違って、スクリーンで見る方がだいぶ速く感じられるんですね。


◆次にやること

・PATU MOOK 創刊号「大島依提亜と映画パンフ」を読む
参考文献の一覧をつくる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?