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モモ ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳

主人公のモモは、年齢も素姓もわからない浮浪児です。ほんらい、現代のように完全に組織されてしまった社会は、浮浪児というものの存在を許しません。ですからモモは、管理された文明社会のわくの中に組み込まれていない人間、現代人が失ってしまったものをまだゆたかに持っている自然のままの人間の、いわばシンボルのような子どもなのです。あいての話をじっと聞くことによって、その人にじぶんじしんを取りもどさせることのできるというふしぎな能力、宇宙の音楽をききとり、星々の声に耳をかたむけることのできる能力を持ったモモは、人間に生きることのほんとうの意味をふたたびさとらせるために、この世に送られてきたのでしょう。(p.402)

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