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位相空間論入門(5)-内部・外部・境界・閉包と開集合・閉集合

以下では$${X}$$を位相空間とします.

内部・外部・境界・閉包の定義

まずは距離空間と同様に,位相空間に対して内部・外部・境界・閉包を定義します.

定義5.1
$${A}$$を$${X}$$の部分集合とする.点$${x \in A}$$は$${x \in U \in A}$$となる開集合$${U}$$が存在するとき$${A}$$の内点と言う.$${A}$$の内点全ての集合を$${A}$$の内部と言い,$${A^\circ}$$や$${\mathrm{Int}A}$$と表す.

定義5.2
$${A}$$を$${X}$$の部分集合とする.$${A}$$の補集合の内部を$${A}$$の外部と言い,$${A^e}$$や$${\mathrm{ext}A}$$と表す.すなわち$${A^e = (A^c)^\circ}$$である.また外部に属する点を外点という.

定義5.3
$${A}$$を$${X}$$の部分集合とする.$${X}$$の点のうち,$${A}$$の内部にも外部にも属さない点の集合を$${A}$$の境界と言い,$${\partial A}$$と表す.すなわち$${\partial A = X - (A^\circ \cup A^e)}$$である.また境界に属する点を境界点という.

定義5.4
$${A}$$を$${X}$$の部分集合とする.
$${A}$$の内部と境界の和集合を閉包といい,$${\overline{A}}$$や$${\mathrm{cl}A}$$と表す.すなわち$${\mathrm{cl}A = A^\circ \cup \partial A}$$である.また閉包に属する点を触点という.

$${\langle}$$ 注意 $${\rangle}$$
$${((A^c)^\circ)^e}$$のようになる場合は括弧を省いて$${A^{c\circ e}}$$のように書くことにします.

距離空間のときと比べてみると全く同じ定義の仕方であることがわかります.

内部・外部・境界・閉包の性質

まず,内部・外部・境界・閉包の関係を見ていきます.

命題5.5
$${A \subset X}$$とする.このとき次が成り立つ.
(i) $${(A^e = ) A^{c\circ} \subset A^{\circ c}}$$
(ii) $${(\mathrm{cl} A)^c = A^e}$$
(iii) $${A^\circ \cap \partial A = \emptyset}$$
(iv) $${A^e \cap \partial A = \emptyset}$$

証明.
(i) $${x \in A^{c\circ}}$$とすると$${x \in A^c}$$であるから$${x \notin A}$$である.ここで定義から$${A^\circ \subset A}$$なので$${x \notin A^\circ}$$となり,$${x \in A^{\circ c}}$$がわかる.
(ii) $${(\mathrm{cl} A)^c = (A^\circ \cup \partial A)^c = A^{\circ c} \cap (\partial A)^c = A^{\circ c} \cap (A^\circ \cup A^e) = A^{\circ c} \cap  A^e = A^e}$$である.ただし,最後の等号は(i)による.
(iii) $${A^\circ \cap \partial A = A^\circ \cap (A^e \cup A^\circ)^c = A^\circ \cap A^{ec} \cap A^{\circ c} = \emptyset}$$
(iv) $${A^e \cap \partial A = A^e \cap (A^e \cup A^\circ)^c = A^e \cap A^{ec} \cap A^{\circ c} = \emptyset}$$  $${\Box}$$

また,(ii)の両辺の補集合を考えることにより$${\mathrm{cl} A = A^{c\circ c}}$$がわかります.
(iii),(iv)は内部と外部と境界が交わりのない分割になっていることを意味しています.

内部と開集合

次に内部と開集合の関係を見ていきます.

定理5.6
$${U \subset X}$$が$${X}$$の開集合であるための必要十分条件は$${U^\circ = U}$$となることである.

証明.
$${(\Rightarrow)}$$ $${U}$$が$${X}$$の開集合なら,任意の点$${x \in U}$$は($${x \in U \subset U}$$となるから)$${U}$$の内点である.したがって$${U^\circ = U}$$である.
$${(\Leftarrow)}$$ $${U = U^\circ}$$なら,任意の点$${x \in U}$$は$${U}$$の内点である.したがって各$${x \in U}$$に対して$${x \in V_x \subset U}$$となる開集合$${V_x}$$が存在する.ここで$${U = U^\circ = \bigcup_{x \in U^\circ} V_x}$$であり$${(\ast)}$$,定義から開集合の任意個の和集合は開集合だから$${U}$$は開集合である.$${\Box}$$

証明中の($${\ast}$$)の部分について補足します.$${U^\circ = \bigcup_{x \in U^\circ} V_x}$$は次のようにしてわかります.
$${(\subset)}$$ 任意の$${x \in U}$$に対して$${x \in V_x}$$なので$${x \in \bigcup_{x \in U^\circ} V_x}$$である.
$${(\supset)}$$ 各$${V_x}$$は$${V_x \subset U^\circ = U}$$であることから明らか.

命題5.7
$${A \subset X}$$とする.$${A^{\circ}}$$は$${A}$$に含まれる最大の開集合である.すなわち$${U \subset A}$$が開集合ならば$${U \subset A^\circ}$$である.

証明.
$${x \in U}$$とする.定理5.6より$${U = U^\circ}$$であるから$${x}$$は$${U}$$の内点である.ここで$${U \subset A}$$であるから$${x}$$は$${A }$$の内点でもある.したがって$${x \in A^\circ}$$である.$${\Box}$$

閉包と閉集合

距離空間のときと同様に閉集合は閉包を用いて定義されます.

定義5.8
$${A \subset X}$$が位相空間$${X}$$の閉集合であるとは$${\overline{A} = A}$$となることである.

開集合と閉集合の間には次のような関係性が成り立ちます.

定理5.9
$${A \subset X}$$が閉集合であることの必要十分条件は$${A^c}$$が開集合となることである.

証明.
$${(\Rightarrow)}$$ $${A \subset X}$$が閉集合である,すなわち$${\overline{A} = A}$$であるとすると,$${A^c = A^{c\circ cc} = A^{c\circ}}$$となるから定理5.6より$${A^c}$$は開集合である.
$${(\Leftarrow)}$$ $${A^c}$$が開集合である,すなわち$${A^{c\circ} = A^c}$$であるとする.このとき$${\overline{A} = A^{c\circ c} = A^{cc} = A}$$となるから,定義より$${A}$$は閉集合である.$${\Box}$$

閉包と閉集合の間に,命題5.7に対応する命題が成り立ちます.

命題5.10
$${A \subset X}$$とする.$${\overline{A}}$$は$${A}$$を含む最小の閉集合である.すなわち$${(A \subset) F}$$が閉集合ならば$${\overline{A} \subset F}$$である.

証明.
$${A\subset F}$$のとき$${F^c \subset A^c}$$である.定理5.9より$${F^c}$$は開集合であるから,命題5.7より$${F^c \subset A^{c\circ}}$$が成り立つ.したがって
$${(\mathrm{cl} A)^c = A^{c\circ c c} = A^{c\circ} \supset F^c}$$
であるから
$${\mathrm{cl} A \subset F}$$
を得る.$${\Box}$$

位相は開集合を定めたものでしたが,同様の性質が閉集合についても成り立つことがわかります.最後にこれを紹介して終わります.

定理5.11
$${F(X)}$$を位相空間$${X}$$の閉集合を全て集めた集合とする.このとき次が成り立つ.
(i) $${\emptyset, X \in F(X)}$$
(ii) $${n}$$を自然数とする.$${F_1, \cdots, F_n \in F(X)}$$ならば$${\displaystyle \bigcup_{i=1}^n F_i \in F(X)}$$
(iii) $${\{F_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}}$$を$${F(X)}$$の元の族とする.ここで$${\Lambda}$$の元の個数(濃度)は任意である.このとき$${\displaystyle \bigcap_{\lambda \in \Lambda} F_\lambda \in F(X)}$$

証明.
(i) $${\emptyset^c = X \in O(X)}$$,$${X^c = \emptyset \in O(X)}$$であることからわかる.
(ii) $${F_1^c, \cdots, F_n^c \in O(X)}$$であるからド・モルガンの法則より

$$
\left(\bigcup_{i=1}^n F_i\right)^c = \bigcap_{i=1}^n F_i^c \in O(X)
$$

である.よって$${\bigcup_{i=1}^n F_i}$$は閉集合である.
(iii) $${F_\lambda^c \in O(X)}$$であるからド・モルガンの法則より

$$
\left(\bigcap_{\lambda \in \Lambda}F_\lambda\right)^c = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} F_\lambda^c \in O(X)
$$

である.よって$${\bigcap_{\lambda \in \Lambda}F_\lambda}$$は閉集合である.$${\Box}$$

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