見出し画像

秋晴れ

僕には不定期に、理由もなく泣きたい日がある。特に辛いことがあったわけでもなければ、緊張することもないのだけれど。とにかく、無性に胸が苦しくなるのだ。そういう日は立つことさえしんどい。蹲っていたい。布団の中に入っていたい。自分でもその正体が何なのかわからないまま、メランコリーな感情に襲われる。
ある日の朝、何の気無しにYouTubeを開いていると、Adoがマツコと対談している動画が出て来た。おそらく切り抜きの転載だったと思う。動画の中で、Adoが自愛について相談していて、自分のことをどうやって好きになればいいのかと尋ねる。それに対して、マツコが私も自分が嫌いだからわからない、だがそんな自分を応援してくれる人がいるからそれでいいんじゃないか、と答える。そのやりとりを見て、僕は泣いていた。泣きながら、何で泣いてるんだろう、と思った。そしてしばらくして、ああ、今日はそういう日なんだと気づく。
 今日はよく晴れている。遠くの山がよく見える。側から見れば今日という日は何でもない、些細な日常の一欠片。僕もその日常に紛れて、いつもの生活を送る。いつもの友達と、いつもの他愛のない会話をして、一日を終える。心の奥に一握りの苦しさを抱えながら、そうして「普段」に溶け込んでいる。その苦しさは誰にも共有できない。話してもわからないだろうし、話すつもりもない。今日がせめて晴れていてよかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?