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 長いようで一瞬だった六月が終わり、気づけばまもなく法規的に酒を飲める歳になろうとしていた。時間が経つのは恐ろしいもんで、こうやって定期的に文字情報として残しておかないと、いまの自分の居る場所とか、その時々の瞬間的な感情とか、そういうのが儚くも消えていく気がする。
 夏休みと被ることもあって、あまり誕生日を祝われた覚えがないのだけれど、最近誕生日ってそんなにめでたいのかと懐疑的になることが多い。そもそもケーキがあまり好きじゃないのも大きいが、欲しいものこそ無限にあれど「誕生日」という名目で物欲を人にぶつけることにちょっとした嫌悪感みたいなのがあって、好意で貰ったものはありがたくいただくものの自分から請うたことはなかったような気がする。烏滸がましいじゃん。自分だけ貰うのは申し訳が立たないから、何か貰った人には何かしらお返しをしようとするんだけど、物覚えが絶望的に悪いもんだから人の誕生日が分からない。とはいえ一度尋ねた事柄をもう一度尋ねるのは失礼にも程があるなと思い、結局永遠に相手の誕生日がわからないまま只管申し訳ない気持ちでいっぱいになったりする。
 10代の終わりが近づいてきて、焦りでいっぱいなのが正直な気持ち。やり残したことだらけな気がする。上手く背伸びができなくて、結局弱いところは何も変わってなかった。アイデンティティを追い求めて、存在価値みたいなもんに苦しめられ続けた。今ではもう、そんなもん考え始めること自体が不毛だと割り切ってしまうようになってしまって、どこか過去の自分が遠くに行ってしまうような、もの寂しさも拭いきれないでいる。普段の生活も、自身の中身も実際には変わりなどしないのかもしれないが、それでも僕には愛すべき10年間が間違いなくあって、それが終わってしまうのがとにかくしんどい。
 梅雨明けが発表されないでいるのに、外はもう蝉がけたたましく鳴き始めるようになって、毎年こんなだっけとか思いつつ日々を過ごしている。長い髪が暑苦しいからセンターパートに変えたんだけど、知らぬ間にその髪も伸びてきて、髪を乾かすのも一苦労だ。そういえば最近また髪を染めた。バイオハザードというゲームに出てくるレオンが好きで、ゆくゆくは彼のような髪色に染めたいなとかいうふんわりした野望を抱いている。
 20代という人生の一つの区切りで、一度過去の自分を追憶したり、今しかできないことをやりたい。それが本心。誕生日を迎える前に書けてよかった。

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