呉服屋がカードゲームを売り出した日
小さい頃にとあるカードゲームが流行した。わたしはそのカードゲームに、兄が興味を持ったことがきっかけでついでにハマることとなる。とはいえ、皆ゲーム自体を楽しんでいたのは短い間のことで、いつの間にかカードを集める行為に興味はすり替わっていった。スマホゲームのガチャなどでもそうなりがちだが、人間は最短で手に入れられる報酬へ流されていく傾向にある。
お小遣いが手に入り次第、友達と近所のコンビニへ駆け込む。人によっては「レアカードが入っているパックは感触が違うんだよな……」と言いながらパックの表面を撫で(全く分からない上に迷惑)、中身を確認した後にレジへと持っていき、皆の前でカードが入ったパックを開封する。YOUTUBERが世界へ配信しているような企画の、小規模で、しかしより熱狂的になった遊びがあの頃に世界には知られないまま行われていた。思い返すと今100万円の価値がついているカードも持っていたような気がする、そんなことは全員が思っているのだが。
我々がそうしてカードゲーム集めに熱中していたある日、大事件が起きた。近所の呉服屋のスペースの半分がカードゲームショップになったのだ。世の中をあまり知らない子供でさえ、ドン引きしてしまう出来事である。
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