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ヒグチアイ バンドワンマンライブ 2023【産声】ライブ備忘録 2023.6.11(復刻)

 2023年6月11日という日は、もうすでに過去のものとなり、今日もまたいつものように日々が過ぎている。

 素晴らしい一体感とパワフルでハートフルなヒグチアイ史に間違いなく残る最高に楽しいセットリストの行間から、今も、走馬灯のように美しい余韻が漂っている。

 そんな特別なひとときを、備忘録として残しておきたいと思い、記憶がまだ温かいうちに保存をしていきたいと思う。

 2023年6月11日(日)
 2時間弱の夢のような時間を求めて、片道4時間、日帰り弾丸で、東京まで足を運ぶ。
 翌日の仕事は寝不足必至であるというリスクを天秤にかけたとしても、何よりも得難いあの多幸感が、選択肢すら無くしてしまう。それほどまでに、ヒグチアイのライブパフォーマンスは自分にとって憧れであり、不思議な力をもらえる特別なものなのだ。それは、すなわち、アイさんが、そのひとつの公演にかける集中力とエネルギーが常に全力であり、真剣であり、まっすぐな思いが込められていることにほかならないと思う。

 今ツアーは名古屋以来、約1ヶ月ぶりで、ライブハウスからホールへどのように進化したか、また新しい発見があるかもしれないという期待感もあった。

 公式ツアーグッズの“マフラータオル”は、名古屋で使えず、寂しい思いもあったり、声だし解禁で、自分の声量をもっともっとステージに届けたいという思いもあったり、様々な思いを抱えながら、久しぶりの東京の街並みを、雨粒をかき分けて会場に辿り着く。

 渋谷はアイさんにとって、ホームグランドというイメージがもはや定着しつつある。ライブのMCでも『東京に長く住んで、街並みを見ると懐かしく感じる』というくらいに、その長い時間が決して無駄ではなかったと思わせるのは、大きなライブホールが完売で満席になっている光景だった。本当にいちファンとして幸せな光景である。(と言いつつ、自分は、アイさんのライブに通うようになって5年ほどのまだまだ新参者ではあるが・・・。)

 渋谷区文化総合センターの4階、さくらホールに詰めかけたファンは、午後5時15分の開場時間の時点で、フロアを埋め尽くすほどに長蛇の列になっていた。

 すっかり馴染んだ電子チケット、時折見かけるマスクを外した人、消毒義務の無い受付

 コロナの長い長いトンネルを抜けた先にこの光景がずっと待っていたような気がした。

 席は2階席だった。

 当初の予定では、名古屋1公演で終えるつもりだったのに、あまりにも名古屋のセットリストが良かったので、追加チケットを迷わず購入してしまった。最初から買っていれば・・・という後悔が少しだけ過ぎる。でも、また、あの幸せな時間を味わえるという幻想的な現実に目を向けると後悔する暇すらなくなる。

 自分はそんなに音楽に詳しいわけではないし、幅広いジャンルを聴いているわけでもない(サザンオールスターズは別格だが)、ライブ前に会場で流れていたBGMもサカナクションがかろうじて分かったくらいだけれど、本当に、そんな人生の中でヒグチアイに出逢えてよかったと思っている。

 午後6時、客電が落ち、ついに夢の時間が始まった。

M1.聞いてる
 名古屋でこのイントロを聴いたときに本当に嬉しかった。自分はここ1年くらい、過度なストレスが続いたこともあって、心身に不調をきたしていた。パニック障害のような症状が発作的に出てしまい、突然、動悸が起こることに対して常に不安を抱えて過ごしていた。動悸は自分にとって不安の対象だった。そんな中で、この曲は、鼓動がテーマになっている。『叩いた数だけ生きていける』『君よあなたよ胸に聞いてる』このフレーズを名古屋で聴いたときに、今まで不安の対象だった動悸が、歩み寄っても微笑んでくれるかのように親しく思えてきて、 考え方が180度変わったような、本当に運命的な瞬間を迎えた気がした。その日から、不安感も、なんとかなると思えてきて、随分、楽になった。アイさんには感謝してもしきれないくらい。だから、この曲は、もっと大好きになったし、自分の中でも特別な曲になった。
 あとから気付いたけど、この曲もコーラスがあったのだ。みんなとシンガロングしたい思惑がアイさんにあったのだろうか??・・・悔やまれる。

M2.縁
 ちょっとした緊張感と感動に包まれたオープニングのあとはノビノビと軽やかなあのリズムの、もはやライブ定番曲。♪自由気ままで♪という歌い出しのフレーズが本当にその言葉のとおりの旋律になってしまう、そのセンスから心を奪われてしまったのは、もう一昨年も前になるドラマ主題歌として聴いたあの瞬間だった。
 サビまで続く見事なメロディーラインは実に自然で、実に非凡で、聴けば聴くほどに唸ってしまう。
 ただ、ライブ中は、あの裏拍?の手拍子を合わせるのに必死で、自分のリズミカルの無さに幻滅してしまう時間でもある(笑)ただ、それもまた楽しい!

M3.ランチタイムラバー
 ここ最近リリースのご機嫌ナンバーが続く。総体的に“重い”ととられがちなアイさんのイメージを一般レベルで払しょくしたのは前曲だったが、この曲もまた、そんな位置づけで某CMタイアップとなったが、もっともっとCMで聴く機会があってもよかったし、歌番組でPRできたら、“ヒグチアイは『悪魔の子』だけじゃないんだ!”という違う側面も世の中に浸透するのに・・・と歯がゆい思いも感じてしまう。ともあれ、ライブ映えする、本当に素敵な名曲だ。

 ここで、いったんMCがあったと記憶している。確か、天気予報を気にしているアイさんが、今日の予報がすごく気になっていて、晴れたり、雨になったり、結局、雨になってしまったという話があったが、蓋をあけると、今回のツアーは3公演ともに雨の日になってしまったとか。

M4.最初のグー
 名古屋のMCでは、自分の持ち歌に『みんなで歌う曲が 4,5 曲くらいしかない。今日はそんな曲を中心にやりたい』というMCのあとに、満を持して演奏されたような気がする。2 階席だったので 1 階席の様子は見えなかったけど、ファンも喜ばずにはいられない選曲だと思う。アイさんは、この曲はタイアップであり実体験から生まれた曲ではないという経緯も以前、言われていたが、今や、すっかりファンにとっては自分を鼓舞してくれる、アイさんからの応援歌のように受け止めている方が多いと思う。拳を突き上げて、最後のみんなでのシンガロングは、本当に『生きててよかった』と思える幸せな時間であることは間違いない。

M5.猛暑です
 数あるイントロの中でも“キターーー!”と心の中で叫ばずにはいられないイントロのひとつでもある。そして、あのよどみないピアノの伴奏をしながら、独特な変則リズミカルなボーカルを歌いこなすアイさんの凄さはこの曲で、本領発揮!『プロってやっぱりスゴイ!』素人の私ですら、分かるのだから、相当な力量が詰め込まれていると思う。そこを自然体でなんなくこなして、楽しませられるのだから、本当にミュージシャンとは素晴らしい存在だ。♪シューマイは絶対♪の後に続く『絶対』の声出しは“絶対”欠かしたくなかったけれども、そこは勇気が出ず・・・手を掲げるだけとなってしまった。ただ、やっぱり、みんなの“レスポンス”を意識したのか、スポットライトが一瞬、転換していた。今回、本当に照明の技術が随所で凄かったと感じていたが、そんな見せ場のひとつでもあったような気もする。

M6.ラジオ体操
 この流れでファン泣かせのセトリがまだまだ続く。このライブが神セトリではないか?とみんなが確信したのはこの曲からではないだろうか?弾き語りのオリジナルもいいのだけれども、やっぱり、ライブバージョンのこの曲の後半に向けての盛り上がりは最高に胸が熱くなる。ケイさんのギター、御供さんのベース、伊藤さんのドラム、本当に最強バンドでこの曲のアレンジを聴ける幸せは、これに勝るものはない!この曲からもたくさんの勇気と元気をいただいた。感謝!

M7.わたしのしあわせ
 この曲に入る前のMCで、長野の母親に対して、許せなかった気持ちを言葉に出して母親に言ってしまったことがあって、許せない気持ちがゼロになった時に、後悔として大きな気持ちになってしまったという思いが語られた。名古屋の時には無かった MC だったが、今回はそれから続く、『わたしのしあわせ』が、とても一段と深いバックストーリーとともに観衆に響いたのではないだろうか?歌う懺悔ではあるのだけれど、『一番身近にいて、あなたを一番大切に思っている人に愛で答えてほしい』そんなアイさんからのメッセージソングのようにも感じた。

M8.悪魔の子
 この流れで、この曲というのも驚きはあったのだけれども、先日のヤッホーフェスでこの曲を演奏しなかった理由として『午前11時だったから』『今度からは午後3時以降にしてもらえないか』とラジオで話していたことを思い出して、心の中でほくそ笑みながら、聞き入っていた。歌の1番がほぼカラオケ演奏で、拍子抜けもあったが、2番からはバンド演奏で、やはり圧巻!≪代名詞≫という存在になりつつあるこの曲のおかげで、ライブに足を運ぶ人も増えたのだとも思う。それがアイさんのモチベーションとなって、さらにパフォーマンスの幅が広まっていくのであればファンとして嬉しいのだけれど・・・、世間にこの才能を広めたいという気持ちと知られたくないという恐ろしくもワガママなファン心理もまた敢えて書き残しておこう。

M9.前線
 そういえば、今回のライブは客席も立ったり座ったりが忙しかったことも特筆だった(笑)アイさんがMCで 『立ってほしい時には言いますから』とMCのネタにしていたように、そのタイミングに一喜一憂していたファンも少なくないと思われる。自分は名古屋でオールスタンディングだったので立つ気満々だったが、『悪魔の子』では周囲の同調圧に屈し・・・この『前線』でようやく、前線に降り立ったかのように堂々と立たせてもらった。やっぱり、この曲が持つ静かで熱いロック魂は本当に心が揺さぶられる。大名曲!圧巻!

M10.黒い影
 個人的にはこの曲も網羅した時点で、今日は〝全員優勝〟となった。『前線』が“静”のロックなら、この曲は“動”のロックとも言える、最強のナンバーだと思う。間奏で、バンドメンバーの紹介とソロパートもあり、いよいよ佳境感も出てくる。沸々と魂のマグマが湧きだしているのを感じながら、身体に染み込んでくる荒々しいバンドの生演奏と生ボーカルが、この 1 時間ほどでこんなにも振り幅の大きい色々な感動を与えてくれるヒグチアイの音楽の根底にある“グルーブ”を剥き出しにしていて、感動しまくりだった!

M11.まっさらな大地
 『どこまで私たちを連れてってくれるの!?』というロックナンバーの応酬に脱帽!しかも、そのバリエーションが凄まじい。蒼く軽快に、熱く切なげに響く、渾身のロックビート!ライブでホントに輝きが一段と増す曲であるが、『進撃の巨人』が無ければ生まれなかった曲でもあり、『悪魔の子』もそうであるが、そんな巡り合わせにも感動する。とにかく、この曲のシンガロングは、リリース当初から、多くのファンがそうであったように、自分にとっても、ライブで一緒に歌うことが夢だった。その夢が叶ったのが、名古屋だったが、もう一度、その興奮が倍増ししてよみがえったきたかのように、本当に楽しかった。ステージで、そんなみんなからの歌声を受け止めていたアイさんの心境もまた想像してしまうが、やっぱり、そういった“魂のやりとり”こそがライブの一番の醍醐味であることに、気付かされた。とにかく、夢中に感動していた。喉が痛くなるくらいに叫んだ♪ランラララ~♪

 演奏終了後の鳴り止まない拍手と歓声・・・そのあと、アイさんから『おまえら最高!・・・わたしはそう言うキャラではないけど・・・』なんて一言や『こういうライブにずっと憧れがあった』の一言・・・ここに全てが集約されている気がして、感動した(泣)!

M12.劇場
 『これからもこうしてみんなと出会うことを願っている。もし、逢えなくてもみんなには幸せでいてほしいと思っている』そんなニュアンスのMCあとに歌われる『劇場』にはやられた。もう、この曲の時点で、感動は必然であるのだけれど、それぞれの人生の通過点の中で、“今日、もしかしたら一緒に同じ空間で、この時間を過ごしている人たちとは、また同じ時間をともにできることは無いのかもしれない”・・・きっと、自分はこれからも、ヒグチアイのライブに参加し、また『劇場』を聴くことはあるのかもしれないし・・・もしかしたら、無いこともあるかもしれない・・・そんな、一瞬一瞬の時間の中で、自分たちは生きて、何かに影響されて、誰かに影響を与えて、これからも生きて行くんだなとしみじみ実感した。本当に人生観を変えるような名曲が次々と生まれてくる・・・ヒグチアイはそんな稀有なミュージシャンのひとりだ。

M13.mmm
 『いつか、この歌をみんなと一緒に♪ラララ♪で歌いたいと思って書いた』そんな願いが、ついに実を結んだ瞬間に立ち会えたことは、ファンとして、本当に最高の瞬間だった。弾き語りで、遠慮がちだったハミングが、バンドサウンドで、熱く熱唱となって、みんなで叫んだ♪ラララはずっと忘れない。コロナ禍の象徴とも言える歌であって、コロナ終息の象徴にもなったこの歌が、これからも希望の歌として、ずっとずっと歌い継がれていく事を、次の願いとして、ファンは待っている。

M14.祈り
 そして、そして、いよいよ最新曲にして、これまでにないほどのアンセムソング!このライブのテーマ“産声”がこの一曲に込められていて、また、これまでのアイさんのキャリアがあったからこそ、導かれたかのように生まれたベストソングと思う。タオルを掲げることも出来たし、声がかれるまで叫びをステージに届けられたし(ちょっと叫びの♪ウォウォウォ♪は独特なリズムでコツはいるが・・・)、『もう後悔はない!』と言えるくらい最高だった。ステージ上でタオルを掲げてピョンピョンと飛びながら嬉しそうなアイさんを見ているとこちらまで幸せになった。この歌が本編のラストになったが、その余韻が本当に本当にこれまでにないくらい言葉に出来ないくらい幸せで特別な余韻だった。これからもこの歌はアイさんとともに成長していくのかなと感じた。

M15.この退屈な日々を(新曲)
 アンコールに、今日も待たせないで(笑)早々と登場するアイさん。『7 月から年末まで嬉しい発表があるかも』という今後の活躍を匂わせるMCのあとに未発表新曲の弾き語り。素朴でアイさんらしい優しくて切ないバラード。弾き語りでも十分素敵だけれど、これからどんなアレンジでこの曲が発表されるのかまた楽しみが増えていく。

『元気でなくてもまた逢いましょう』

 いつものアイさんらしい一言でライブは終幕。素敵で楽しいツアー≪産声≫は見事な有終の美となった。

 これから先も、変わらないアイさんと逢える機会が続く限り、この“幸せ探し”の旅にもまた彩りは添えられるだろうし、新しい出会いに向き合って、勇気を出して、明日の希望も続いていくと思う。

 本当に本当に最高のひとときを本当にありがとう!!

 ホールから、外へ出ると、もう雨は止んでいた。

 夏はもうそこまで来ている!


(お粗末な備忘録でした(汗))

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