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ヒグチアイバンドワンマンライブ2023【産声season2】ライブ備忘録

神宮外苑花火大会からちょうど3週間が経った2023年9月2日(土)――

 再び、東京に向かったわけだが、つまり3週間ぶりの東京というわけであり、自分が上京する理由はもうヒグチアイ一択ぐらいになってしまっている。
“ヒグチアイ詣”という感覚に近いが、こうも頻繁に“詣でる”機会が多いと年がら年中、おめでたいヤツと周りから思われていないか心配になりつつもある。
お賽銭も決して安くは無いのだが、正直、高いという感覚もない。元来、“お賽銭”とは、神様への御礼という意味があり、それすなわち、アイさんへの自分の想いでもある。片道何時間もかけて上京する時間を、同郷のアイさんが10数年前に上京した時間に重ね合わせて、時に労い、時に誇りに思いながら、東京のライブ会場で、アイさんにお逢いすることは特別な感覚でもある。

さて、世の中は『残暑がきびしいですね』という頃合いでありながら、信じられないくらいの『まだまだ猛暑です』という様相になっていて、3週間前の空気を懐かしむことなく、思い返させるような東京の空気感だった。
首都高を走る車中、青い空を見上げれば、ビルの向こうに夏のわきたつような入道雲が見えるが、真上には秋の繊細に伸びるすじ状の雲もちらほらと見えてくるようになっていた。季節は着実にゆっくりと変わり出しているのだと思う。
初夏に開催された【産声】ツアーが、知らぬ間に“season1”とラべリングされ、今回の東京と長野の公演が“追加公演”ではなく“season2”と銘打たれたのも、きっと季節のように、楽曲も移ろい行き、味わい深くなっていることを見越しているのかもしれない・・・?

 とにもかくにも、ライブ会場のVeats Shibuyaに到着したのは、午後5時15分。ライブハウスの入り口前で、チケットの受付番号の呼びかけが行われているが、道の反対側まで溢れていたので、なかなかの盛況ぶりに感動してしまう。『進撃の巨人』効果なのか?『初恋、ざらり』効果なのか?「昔から応援しています!」なのか?アンケートをとりたくなる気持ちだった。

 自分は100番より若干前のほうだったので、早々に前の列はあきらめていたが、いざ、蓋を開けてみると、意外に、広い会場?だったのか?遠慮がちな方ばかりなのか?アイさんの目の前のあたりが空きスペースが出来ていて、2列目の、アイさんからほんの3mくらいのところのスタンディングゾーンにするりと入ってしまった。『よく、遠くまで来たね、ご褒美じゃよ』と日本昔ばなしに出てくるような神様の声が聞こえた気がした。

・・・ただ、あとで、気付くことだが、アイさんの真正面ではなく、少し左寄りだったので、ステージ全体の左寄りにいるアイさんは右方向に向かって歌う事が多いので、まったく、こちらに顔を向けてもらえることは無かった(笑)歌う横顔を眺めるステージの“ランチタイムラバー”状態だった・・・♪見てほしいわけじゃない♪と自分を慰める。


午後6時 客電が落ち、ライブが始まる。バンドメンバーと一緒にアイさんも登場!さわやかなグリーン系のトップスに白パンツのコーデ、靴は白地に赤いラインのアシックススニーカー。“まだまださわやかに猛暑です”


M1.縁

 Season1では、Overtureに重厚なSEと鼓動のような音があって、緊張感のある始まり(産声のコンセプトに近かった)だったが、今回は、軽やかで爽やかなSEになっていた。どこか草原で走り回るような軽快な感じで・・・これもまた“産声”というコンセプトなのだろうか?
そこから、なんの緊張感もなく、ゆるーい感じでアイさんが『ようこそ、産声season2にお越しくださいましてありがとうございます』的な、いつもの謝意を示しているバッグでは、あの軽快なリズムもいつの間にか流れていて、そのまま手拍子になすがままで、『縁』へと突入する。あのseason1の『聞いてる』を飛ばしてまで、一気に手拍子ソングで会場のボルテージを上げようと言う心意気は、きっと、今年の野外フェスでの確かな手ごたえも関係しているのかもしれない。やっぱり、成長するライブは生き物だ!

 それにしても、ライブハウスの音響も凄く良くて、アイさんの歌声が本当にクリアで、バンドのサウンドも然り、過去イチというくらいのしっかりした『縁』が聴けて感動した。手拍子の一体感もすごくよかったし、最高のスタートだと感じた。


M2.自販機の恋

ここで、いきなり、出し惜しみなく、新曲が来る!今思えば、season1では『ランチタイムラバー』枠だったところを満を持してシングル曲に交替したという点では、戦力は増強しているかもしれない。例えるならホームランバッターをラインナップに加えた感覚だが、個人的には『ランチタイムラバー』のような成績にとらわれないムードメーカーも残してほしかったなぁとも・・・。ファンの贅沢な悩みはつきない・・・(笑)

でも、最強の1番・2番バッターとも言える、この冒頭2曲はファンの心を打つのには十分でもある。本当に手拍子がここまで似合う曲は今まであったのかな?というくらい、“ヒグチアイ史”に残る“最強ポップソング”が完成したともいえる『自販機の恋』は盛り上がる。アイさんもとても楽しそうだし、作りたかった曲をイメージ通りに形に出来て、きっと幸せなのだろうな、と、こちらまで幸せをいただいた気分でもある。これから、映画が公開されて、巷で聴く機会が増えれば、もっともっと伸びる曲になりそうだ。


ここで、いったんMCに入る。『“season1”“season2”っていったいなんだろうね?』と自虐しながら、season1の手応えや感動をまた再現したいという思いから、season2と銘打ったという経緯を話されていたと思う。


M3.最初のグー

 ここからは前回(もうseason1と打つのが面倒になった(笑))と、同じセトリになる。「みんなで歌おう」という根源のコンセプトがゆるぎなくて正直、嬉しかった。そして、拳を上げて叫ぶ、この曲の醍醐味でもある、力強いパフォーマンスには毎回、心動かされるものがあるが、キーボードから離れて、ハンドマイクで、ステージを歩きながら目の前にも来てくれて、みんなの突き上げた拳とシンガロングに包まれながら歌うアイさんが本当に神々しくて、眩しかった。“歌の女神が降りてきた”と思える瞬間が何度もあったが、その始まりが、この歌のシンガロングの時だったかもしれない。


M4.猛暑です

今年の夏こそ一番ふさわしいと思えるくらい、この歌が駆け巡った夏でもあった。アイさんも、ライブで取り上げることはもちろん、公式SNSなどでも、よく推していた感がある。冒頭の“2人”の掛け合いフレーズを微妙に、首を動かして、対話しているように、歌い分けて歌う、アイさんの仕草が可愛らしい。

♪シューマイは絶対♪の後に続く『絶対』の声出しは、アイさんも耳に手を当てて、会場からのコールを求めるので、“絶対”欠かすことなく、コールできた・・・いや、もうちょっと大きな声で返したかったなぁ・・・と少し後悔も否めない。


M5.ラジオ体操

 夏ソングシリーズで、ファンを泣かせにくる鉄板の曲・・・。今回は、本当にヤバかった。。ラストのサビ前の≪負けたくない 帰り道ぽつり≫から続くフレーズを、アイさんが渾身の歌唱で投げ込んでくるので、もうそこで、涙腺が崩壊してしまった。。。今回、そんな場面がいくつかあったが、やっぱり、ライブのパワーって凄いなと改めて感動した。自分の中では過去イチの『ラジオ体操』だったかも・・・(ライブ経験は浅いけど)

 歌っている時のアイさんの横顔がなんとも言えなくて、まっすぐに凛としていて、満たされているような柔らかさで、時折、垣間見える寂しさも、、、切なくて。本当に不思議で力をもらえる歌だ。もちろん、バンドメンバーの力量もあっての感動のアレンジでもあった。ギターは前回のケイさんから尾身琢磨さん、ドラムは伊藤さんからナガシマタカトさん、ベースは引き続き御供さんではあるが、メンバーが変わるだけで、音もかなり変わっていて、やっぱりライブは面白い!


M6.悲しい歌がある理由

『ラジオ体操』が終わるとバンドメンバーは一旦、ステージ袖にはけていく。そして、アイさんのMC。お母様トークが出てきたので、てっきり『わたしのしあわせ』かと見せかけて、、叔母さまのお話しになったので、この話の流れは、、、先日の対バンラジオでも話していた気がした。その時に流れた曲・・・もしや!?その期待どおりに、まさかの『悲しい歌がある理由』!

バンドライブなので、正直、聴けないかと思ってあきらめかけていたが、弾き語りコーナー枠として、嬉しい誤算だと思ったファンもきっと少なくないと思う。本当に優しい。。。“歌の女神”が再度降臨・・・というよりも、アイさん自身が、すでに、世を忍ぶ仮の姿で、本当は“歌の女神”なのではないか?というくらいに美しかった。この表現は、この後、エンドレスに続いていく・・・。


M7.恋の色

 ここで、バンドメンバーが再入場・・・弾き語りコーナーは終わってしまったのか???と思いきや、期待を上回る選曲が続く・・・新曲『恋の色』・・・なるほど、season2・・・出し惜しみない。容赦ない。隙が無い。

 歌詞に出てくる『色』に合わせて、ステージの照明も鮮やかに変わっていく。“灰色の雨”“青くにじむ”“朝焼け”この歌の世界観がグッと重なって、後半に向けてのサビの力強さに、、この日、2回目の涙腺崩壊。。。すごいラブソングだ。ドラマのタイアップというスケールからさらに飛び出した気もした。“バラードのヒグチアイ”のイメージはこの1曲だけでも確立されたかもしれない。


M8.悪魔の子

 Season1には無かった不協和音のSE・・・そこから、イントロのフレーズ。怒涛の曲の世界へ。自然と身体が前のめりになっていた。この曲の間は、本当、どんな気持ちで聴いたらよいのか分からない。『進撃の巨人』?ウクライナ情勢?ラブソング?様々な場面が頭にぐるぐる廻ってしまうので、とにかく、アイさんやバンドのパフォーマンスに集中して、圧倒されるしかない。だから・・・あまり感想がない。


M9.前線

 思えば、この曲が新曲としてリリースされた頃に、深夜テレビで、目撃して、心をわしづかみにされて、ヒグチアイにのめり込んでいくきっかけになった曲でもあった。元々、同郷のミュージシャンとして、どこかで名前を聴いたことはあったくらいの存在から、とてつもない大きな存在になった、自分にとっては“出逢いの曲”であり、色褪せない感動がある。パフォーマンスは相変わらず最高!最強!


M10.黒い影

 気が付けば、【産声】の佳境に入っていたが、season2でさらに圧巻な出来になっていたのが、この曲だった。バンドサウンドの凄まじい音圧に照明も入り乱れて、もはやカオス状態!凄いモノを見せられたというか、、、改めて、ライブハウスは、音楽を全身で感じるために最強でナンバーワンの舞台だと認識できた。本当に凄かった!もうそれしか言えない!


M11.まっさらな大地

 ライブの度に、大きな大きな存在に成長する『まっさらな大地』は、この渋谷でも熱かった!というか、シンガロング解禁から、この曲の成長は著しい。♪ランララランララ~♪のシンガロングを力いっぱい叫んだ。喉がつぶれてもいいというくらい叫んだ。この時間が本当に愛おしい。前回の渋谷で『こういうライブにずっと憧れがあった』とアイさんに言わしめた、この歌の存在は、きっと、今後のヒグチアイの活動に間違いなく明るい希望を見出している気がした。


M12.劇場

このあと、再び、両親の話題のMCに・・・。父親や母親の意外な一面、、家族に対する新しい見方、、、自分を認めてもらうことよりも、もっと先の、自分は自分の命を燃やしながら生きて行きたいという決意・・・大人になっていることを感じたとも・・・。そんなMCに呼応するかのように『劇場』へと繋がっていく。

 この曲に関して、書きたいことは前回も書いたと思うが、今回は、ただただ、歌の世界に没入しながら、人間ヒグチアイの生の魂、生き様をとにかく優しく受け止めようと心を傾けて聞いていたように思う。圧巻。。。そして、御多分にもれず、、、涙腺崩壊・・・


M13.mmm

 コロナ前の大変だった時間・・・それが今や忘れられている・・・そんなことが寂しいとも思える。忘れていくこともいい事かもしれないが、まだ答えが出ない。ただ、今は、思い出して歌いたい。♪ラララ♪で歌ってほしい・・・

 そんなMCのあとに、このライブコンセプトの核心であり、象徴である特別な1曲が披露される。いまだ、未発表曲という扱いなのに、もはや公式リリース曲なみの位置づけになっている不思議な曲。アイさん自身は、『時事になるような曲はリリースしない』といつか言っていたが、ライブだからこそ、歌える歌なのかもしれない。

 当然のことながら、声がかれるまで叫ぶことができた。最高!


M14.祈り

 本編最後はどうしても、この曲になってしまう。アイさん自身『この曲のこの(みんながタオルを掲げる)光景を見たくてseason2を企画した』というほどの存在だからこそ、我々も気合が入る。あの【産声マフラータオル】を持参しているファンの姿は半数近くはいたのかもしれない。本日一番のアイさんの笑顔が何度もこの曲の間に見れた。アイさんは、『子どもの頃は自分の笑顔が嫌いだった』と最新エッセイにもあったが、心の底から幸せを感じた時、その笑顔は本当に眩しくなるのだと。アイさんの信じられないくらいステキで美しい笑顔に見惚れてしまった。最高のseason2をありがとう!


M15.この退屈な日々を

アンコールに、最新のツアーグッズ【恋の色Tシャツ】の姿で現れるアイさん。出てくるときに、ひょこっと暗幕から顔を出す仕草もお茶目だった。さらに、バンドメンバーの楽屋おしゃべりトーク(ドラムのナガシマさんがどうしたら怖いイメージに見えるか?問題)も明かされて、脱線になりつつも、ラストナンバーに新曲が登場!season1でも同様にラストソングだったが、ソロアレンジが、バンドアレンジに変わっていることもまたこのライブの成長を象徴した感動の場面だった。


カーテンコール、、、いつも以上に深々とお辞儀するアイさん。

この充実した時間を惜しむように・・・でも、もっとこの先を見据えて楽しみながら、これからも命を燃やしながら、活動を続けてくれるであろうことに、ファンは本当に幸せを感じている。。

ひとりで見る夢はほんの小さな夢だが、みんなで見る夢は、きっと、大きな幸せになる。

ヒグチアイとヒグチアイを愛する、すべての皆さんに幸せが溢れますように!


つづく

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