アークナイツ(明日方舟)のエリジウムとソーンズの関係性がすごい
はじめに
アークナイツ(明日方舟)という中国企業Hyperglyph社開発、日本版はYostar社がローカライズ兼運営しているソシャゲをご存知だろうか。お洒落なUIと硬派なSFファンタジー、そしてタワーディフェンスというソシャゲとしては珍しいジャンルで、独特な魅力を放つゲームである。
中国版(いわゆる大陸版)が日本始めグローバル版より半年先行しており、リークではなく公式情報がすべて半年前に発表されている特殊なゲームでもある。
筆者は2020年4月頭からやっており、コロナ禍のステイホームのときに必死に危機契約なるアークナイツ内の定期試験で朝から晩まで試行錯誤した記憶がある。このゲームと、同時期にハマったNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス』はどちらもオススメだ。
このゲームは、少し触れていただくと伝わると思うのだが、中国のスーパーハイスペインテリたちが作っているのが手に取るようにわかる。世界史始め高度な教養をベースとした薄暗いテキストに満ちている。が、コロナ関係なく、ここ数年、体調が不安定で、しばらく休んでいた。ちなみに2022年末開催の『塵影に交わる残響』イベントから復帰している。このイベントはこのイベントで悲惨な半生から自己犠牲を選ぶキャラクターの「僕はこの運命を呪わない」という台詞が光り輝くイベントであるが、今回は割愛する。
ちなみに筆者が二次創作を愛するオタクであるため、以下に書かれていることの信憑性はまったく保証できない。どこまで正しく読めているかは、私たちファンが決められることではない。
どういうゲームなのか
どういうシナリオなのか説明すると長くなるのだが、このゲーム内の「テラ」という世界には「鉱石病」という不治の病が存在する。テラには源石もしくはオリジニウムという超エネルギーが存在している。石油もしくは核のように世界中つまりテラ中のエネルギーとして活用されている面がある一方で、テラに住んでいる人間つまり先民もしくはエーシェンツに牙を剥く。鉱石病という字面通り、感染した場合は身体の内部に石が生えて、食い破って表面に出てくる。その痛みはもちろん、精神的にも悪化し、何でも起こりうる。末路としては粉塵爆発して感染源になりはてる。近づく/接触する程度では簡単には感染しない。
だが、文字の読み書きがままならない地域もたくさんあり、貧富の差が非常に激しく厳しい世界観なため、感染者は基本的に忌み嫌われる。石を投げられるし、住むところも隔離される。この断絶や差別があらゆる火種となっている。ケモケモなキャラビジュアルの通り先民の種族もさまざまであり、種族間の隔たりも大きい。鉱石病がなくても不仲なのに、最悪の不穏要素である。
この源石は「天災」をももたらす。爆発的な台風、雷撃、そして巨大な源石が降り注いで二度と住めなくなる。これから逃れるために、たいていの国家は移動都市を作りあげ、難を逃れている。
そして、肝心な我々プレイヤーは記憶喪失で目覚めたドクター(Dr.)として、かつてのあなたのように天才的な指揮を発揮してくださいという出だしから始まる。アシスタントとして、そして正体不明ヒロインとしてのアーミヤといううさぎ耳の少女と、ケルシー博士という猫耳美女と三人で、だ。
ロドスという製薬会社の小型の移動母艦を舞台に、ドクターの指揮や能力に惚れ込み協力してくれているテラ各地の有能なオペレーターとともに、明日を掴もうというゲームである。
追憶映写とは
かねてから「鬱シナリオと名高いアークナイツでも屈指の鬱イベント」と言われていた統合戦略(ローグライク、エンドコンテンツのひとつ)の『ミヅキと紺碧の樹』が日本版にも実装された。陸で生きる彼らをシーボーンなる海の怪物が容赦なく襲い、重要キャラやオペレーターたちを浸食してゆくシナリオが目白押しである。その中でも毎月更新される「追憶映写」というモードのシナリオがある。特定のオペレーターに焦点を当てたミニシナリオなのだが、これが陰鬱極まりないのだ。かすかな光を探す人間讃歌がベースとはいえ、あまりにも暗い。
六月のソーンズの追憶映写に衝撃を受け、鉱石病がある感染者にしては死ななさそうな鳥モチーフのリーベリ族のエリジウムと、彼の友人である海産物モチーフのエーギル族のソーンズ、そして彼らの出身地であるイベリア及び隣国である海中国家エーギルの関係者が酷い事態になることに枕を濡らした。九月になってもフラッシュバックしている。
イベリアという国とは
イベリアはそのままイベリア半島。スペイン付近。隣国のラテラーノはヴァチカン市国モチーフだ。エーギルは共和政ローマと言われている。
リーベリは繰り返しになるが鳥族で、頭や耳に羽がある。エーギルは一見、我々人間に近い。触手や尻尾が生えているものもいる。
エーギルは海の怪物の存在を知ってはいたがタブーとしていた。海の怪物に襲われた大津波及び海の怪物の下位存在たる恐魚による一部地域の侵略=大いなる静謐により繁華を極めた黄金時代が終焉を迎えた。この責任を問われることとなった。そのときに設立されたのが裁判所である。つまり、異端審問をするところだ。国家権力となっている。裁判所の審問官によって迫害され、海沿いや国境付近の辺境に追いやられている。そして国民の危機感につけこんだカルトも蔓延している。深海教会というそのままずばりな名前のカルトだ。イベント『潮汐の下』及び『狂人号』そして先ほど挙げた『ミヅキと紺碧の樹』では大いに猛威を振るってくる。教義としては「一つに融けよう」である。
リーベリは原住民といえ、正しく人権がある。(そんなリーベリといえど、隣国のラテラーノは天使モチーフのサンクタ族至上主義なので苦労する)
ただ、エーギルのもたらした科学的技術・研究は一部地域では行われている。ここを主体としたイベントシナリオが存在しないので、イメージは曖昧なのだが、ウィーディやソーンズの実力からしてかなり高度である。ちなみに「海」に関しての研究はタブーである。
海の怪物と源石は相性が悪いそうで、イベリアにおいては鉱石病問題はかなり弱い。
この二人はすごい
歴戦のドクターなら2021年1月のソーンズ実装時に復刻された『青く燃ゆる心』追加シナリオで開幕からソーンズに通信機で喋りまくってくるエリジウムと、ちょっとうっとうしそうではあるが、ちゃんと話を聞いているソーンズとのやりとりに「仲が良いんだな」という感想を抱かれたと思う。
突然ではあるが、アイリーニ実装時の大陸版公式SNSのテキストをご覧いただきたい。
筆者の機械翻訳を通じた意訳を掲載する。難しいところはSNSのネイティブなフォロワーに確認した。
エリジウム:最初に言っておくけれど、僕は新しい同僚を排斥するつもりはないからね。もちろん、ロドスのみんなが仲良く暮らせることを願っている。心配しているんだよ。何回言わなきゃいけないんだろう、彼女は……審問官だよ。協力関係だし、今の身分は審問官じゃないけど、それでいいの? 僕は君がちょっと無神経なのは知っているけれど、君はあのランタンがイベリアのエーギルにとって何を意味するのかよく知っているよね。彼らはどう思うのかな? いや、イベリア人として、そしてロドスのオペレーター関係の統括責任者として、僕は何かをしなきゃいけない。……ブラザー、ずっと君のことを心配しているんだけど、何か言うことはないの?
ソーンズ:何か意見があるのなら、ケルシー先生のところに行って進言すべきだ。それとも、彼女に直接言うのか?
エリジウム:いる? ちょっと、教えてくれなかったの?! 彼女に聞かれた? 待って、彼女の隣を歩いている人はスペク……。
ソーンズ:声を小さくしろ。聞こえるぞ。
……
スペクター:かわいい小鳥ちゃん、誰かがあなたのことをお話しているような気がするわね。
アイリーニ:関係ないわ。私はやるべきことだけをやる、気にしない。他の人がどう思うか──いいえ、……裁判所に対する彼らの見方を変えることができればいいと思っているの。
「……ブラザー、ずっと君のことを心配しているんだけど、何か言うことはないの?」
※ランタンは審問官が掲げる紫の手持ちランプ。イベリアのエーギルにとって「死の象徴」であり、生理的な恐怖となっている。
『青く燃ゆる心』1097年7月から、上記の会話『狂人号』直後1099年12月のアイリーニ着任時まで、白wiki参照するところ、およそ2年ほど経過している。
2年以上、この二人は「こう」なのである。
ちなみにエリジウムが水着姿で酒を呑むイベントこと『理想都市』はもっとさらに未来の出来事(百錬ガヴィルの戦闘経験などから)と推測されるのだが。
相変わらずである。
この二人、イベリアのリーベリとエーギルであるため、本国から出なかった場合は関わる可能性は限りなく低かった。そんな二人が、ロドスというテラの中でも屈指の公平・中立な立場である場所で出会って意気投合して仲良くなったという稀有な関係性である。それでいて、ソーンズは海の怪物問題を抱え、エリジウムは鉱石病の感染者であり、このゲームの大事な対比をこれでもかと詰めこまれている。
ソーンズ実装時の青く燃ゆる心の追加シナリオでの友人同士の忌憚のないやりとり。先に実装されたエリジウムのボイスでチェスをする仲なのは明らかにされていたが、半年先行している大陸版プレイヤーの方々が2020年の段階で熱を上げているのも当然の仲のよさだった。このシナリオの中で、ソーンズは、エリジウムがそこら中で聴いて歌うほど好きなバンドAUSのメンバー、Ayaのサインを入手し、シーボーンとの戦闘の末、生きてロドスに帰艦している。熱い友情である。
喋り方も行動もマイペースで、何を考えているかはさっぱりでありつつ実験による爆発で髪の毛がアフロになっているし身だしなみも雑な「文系の考える理系」を地で行くソーンズが、ハッキリと友人と呼んでいるエリジウム。しかもエリジウムからは「ブラザー」呼び。エリジウム自身は誰とでも仲良くできるが、全員にしっかりと一線を引いているタイプのコミュ強であるのに、だ。百年に一度のイケメンと自称しているが、合コンに誘われて盛り上げに行ったら40分程度でしれっといなくなって、ソーンズのところに遊びに行ってそうである。
そんな、見てわかりやすく白と黒のタイプの違うイケメン二人。
メンツを大事にして、簡単に他人に弱みを見せたりしない国が制作しているゲームでこれだけ気が置けない関係ということは、特別な友人である。
この二人はもちろん実の兄弟ではない。
ロドス内の勤務内容としても、エリジウムは応接室だろうし、ソーンズは薬剤の研究者だ。
かたや音声系アーツを駆使するリーベリの通信員。
かたや自作の神経毒によって改造したイベリアのリーベリの剣術デストレッツァを使うエーギル。
このゲームお得意のハイスペックにハイスペックを重ねたハイスペックな百年に一度のイケメン。おしゃべりな色白で大柄な187cmと、マイペースに話す褐色肌で童顔で細身の177cm。
現代日本でたとえるのなら都内名門私立大学に通う品のいい男の子同士。初等部から通っているエリジウムと、郊外のミッションスクールから奨学金免除でやってきた下宿生のソーンズの邂逅。
そりゃあ、ハメを外すこともある。だから甲板に吊り上げられる。そして格下の相手には容赦ない(狂人号での拷問する深海教徒、回想秘録でのレストランにいる噂するリーベリ)社会的強者感。誰も入れない二人だけの世界でありつつ、交友関係が広そうである。ロドスで青春を送っている。
個人的には、この二人、本当に気が合って仲良くしているように見えるので、イベリアのリーベリとエーギルじゃなく、たとえばサンクタとサルカズ、たとえばフェリーンとペッローでも今の仲の良さだったと思う。
ソーンズというキャラについてはHyperglyph監修のロドスキッチン最終話がよくできているので、ご覧いただけると幸いである。空気が読めないのではなく、読まないためにわかりづらいものの、他人に対する気遣いは持っているというマイペースでおちゃめなイケメンである。この二人、常にこうなのだとしたら、周りも呆れるくらいの明るさとやんちゃさである。
イベリア男性キャラ三人EP発表
先日、この二人+ルーメンのEP『Before&After』が発表された。『狂人号』で新規実装配布されたルーメンはグランファーロで生まれ育った介護士のエーギル。凡人と書かれているが、ハッキリ言ってこんな凡人がいてたまるかという優秀さ。音律聴覚2023でのルービックキューブでも描かれている。
黄金時代の終焉、そして大いなる静謐がBefore。
&がNow。今現在、明日を夢見ているエリジウムとソーンズ。だけではない。ウィーディたちイベリア出身者たちは、それぞれの形で明日に希望を見出している。一度は離れた国であるにも関わらず、だ。
そしてAfter。未来のことだ。二度めの静謐を食らうことなく、開国し、あるべき発展を今から遂げてゆくイベリア。灰白の街並みに油彩の絵の具そのままの青い海があるイベリアが若者の目には見えている。
そのキーパーソンとしてエリジウム、ルーメン、ソーンズのイラストだった。
エリジウムは笑顔、ルーメンは物憂げに海を見ている。そしてソーンズ。海に背を向けている。
察するに、エリジウムは育ちのいいリーベリで暗い過去も隠している秘密もなく、両手を広げられる。
ルーメンは狂人号で描かれた通りだ。
ソーンズはデストレッツァを教わった「優しい宣教師」が深海教会の重要な関係者であることが追憶映写の『危険な試薬』で明らかになっている。『青く燃ゆる心』の追加シナリオでファースト・トーカーに話しかけられたのは、彼にシーボーンの血が流れているからだったのだ。ソーンズは自らの秘密に気がついている。恩師に強制的に実験されたのか、自分から望んだかは定かではないが、海に背を向けていることから、常に前向きで勝ち気な彼らしくなく思うところがあるのだろう。
ウィーディについて
ウィーディの秘録では、ライン生命に就職していたリーベリの友人が登場し、ライン生命を退職してイベリアに帰って故郷のために働くと言っている。
工学においてはこの国は「海のこと」以外はエーギルの技術の伝授があるのもあり発展している。ウィーディの祖父は海洋工学の研究者だったという。禁断である。志半ばで、むごいことに裁判所の審問官に研究をすべて取り上げられて奪われてしまった。それでも祖父はイベリアを離れなかった。ウィーディは「もし自分に武器があれば抵抗できたのに」と研究職ながら武器を開発して前線に出ることを望んだ。そして、友人に誘われたものの、自分はロドスに残って研究を進め、自分なりの道を歩むと宣言する。クロージャいわく、ウィーディが初期からいてくれたから、小さい製薬会社のロドスでありながらも相当の躍進を遂げたと言っている。つまりウィーディはとんでもなく有能。
ウィーディの水質工学始めとしたバイオテクノロジー研究の論文は、ソーンズの回想秘録でも登場しており、イベリアの田舎町に技術提供されている。離れた地からもウィーディの働きはイベリアに変化をもたらしていることの証左である。
エリジウムとソーンズについて
エリジウムから「僕のいた街にエーギルはいなかった」と語られている。この国は居住区が分かれ、エーギルは海岸線や国境そばに追いやられている。つまりエリジウムは内陸に住んでいたリーベリだ。裕福と考えられる。その上で抑圧的な国に退屈して呆れて出国して旅人をしていた。一人旅のプロであり、方向感覚に優れており歩くGPSだ。ちなみにモチーフはキョクアジサシで、北極と南極を渡る渡り鳥である。
一方のソーンズのモチーフはウニそのなかでもガンガゼと言われている。イベリアで、ソーンズの回想秘録によると「優しい宣教師」の下で薬学・神学・そして至高の術を学んだ(ソーンズのプロファイルより)。デストレッツァはリーベリのものだという。エーギルが習得するのは冒涜だとも。これはソーンズのプロファイルに書かれている。詳しいところはわからないが、イベリアでのエーギルの待遇の悪さや、サルヴィエントやグランファーロの貧しさを見るにソーンズは孤児だった可能性が高い。宣教師に育てられていたと言えるだろう。
回想秘録には宣教師との別れが書かれている。ソーンズが出国することを決めて「他の子たちは一緒に行こうと私に言ってくれるけど、君は言わないんですね」と話している。
なんだか怪しい。この先生には後で触れる。
この二人について、イベリアのリーベリとエーギルであることは意味を持っている。
もうすでに手垢がつくほど語られているだろうが、今までのイベリアのリーベリとエーギルは関わることがなかった。ウィーディが住んでいた街は大都市と考えられるが、そこしか繁栄してないと言ってもいいのではないだろうか。
エリジウムの住んでいたところにはエーギルはほとんどいなかった。ソーンズは内陸の都市より辺境部で過ごす時間が長かったと追憶映写で語られている。つまりリーベリはほとんどいない。
それが、紆余曲折あってロドスに入職することになり、通信員と前衛職として出会うことになった。話してみたら、気が合った。本来なら、オペレーター同士という協力関係になることなどなかった二人が。
すごい組み合わせである。
そして年齢設定は明らかでないが、このまま時計の針が進むと、エリジウムが感染者であるがゆえに、先に彼が死ぬ。ソーンズは自己回復できるくらいの生命力であるにも関わらず。
すごい組み合わせである。
追憶映写のテキストだと見捨てていた故郷に、「そうならなかった正史の世界」である回想秘録では自ら足を踏み入れ、彼なりのスタンスで「イベリアのリーベリ(マジョリティ)はエーギル(マイノリティ)の存在に慣れるべきだ」と言っている。
この話は『狂人号』の後と考えていい。シナリオに出ていたオペレーターはエリジウムである。エリジウムから話を聞いて、ソーンズの中で考えが変わったとしか考えられない。
「……ブラザー、ずっと君のことを心配しているんだけど、何か言うことはないの?」のやりとりを思い出してほしい。
あそこから、二人で腹を割って話し合ったのだろうか? 祖国の未来について。そこをぜひシナリオで見せてほしい。
『ミヅキと紺碧の樹』の出来事は、『狂人号』の途中からシフトしたパラレルワールドだと言われている。どちらにしても、ソーンズは一度出国を選び、イベリアもエーギルも故郷ではないと思っていながらも、祖国の再建に期待していた。
このゲームの若者のキャラたちは、誰も彼も、何かしら問題がある故郷を自分たちでやり直そうという気概にあふれている。ソーンズもエリジウムも例に漏れなかったというわけである。
ふたりの成長
エリジウムもソーンズも成長している。回想秘録で描かれた感染事故による感染でロドスに助けられ入職。チェルノボーグでは「他の隊員の名前は覚えないようにしている」という冷たい面も出していたが、それから二年後と推測される狂人号、そしてもっと未来おそらく四年後の理想都市では「終わりを見届けるのも最低限の礼儀」と言っている。これは彼の成長といえるだろう。
現代日本でたとえるのなら、18歳で家を飛び出し、愛嬌と若さと頭の良さでなんとかしてきていた善性の強い彼が、ロドスでの数年を経て23歳になって落ち着きつつも、テラの残酷な現実を受け止めつつも、それでもイベリアの明日を信じている。ソーンズ側も「ばかな夢を見ている」と言っている。
そこに両者が出会ったことは大きく影響している。エリジウムひとりだったら、ソーンズひとりだったら、そうはならなかっただろう。
イベリア出身者は仲が良いと『在りし日の風』ではセイリュウが語り、ウィスパーレインのボイスではソーンズたちが艦内を爆発させてウィーディに噴水砲を食らっているという。誰が中和せずに薬剤を水道管に流すんだクビだぞ!
インディゴやアズリウス、グラウコス、ウィスパーレインたちイベリア出身者も、ロドスで他の同郷と出会って変わったことがあるだろう。
つまり、種族の違いなんて、関係ないのだと。対等に話すことができ、手を取ることができるのだと。
※余談
2023/10/02に大陸版で発表されたウィスパーレインのスキンではイベリア出身みんながいるように見受けられる。THEME ROLL PLAYと書かれているが、はてさて。ステンドグラスに映っているのは、ウィスパーレインのシャボン玉のような記憶の中の一つの「本当にあった追憶映写の光景」かもしれない。
最後に
さて、未来ある若者二人、ルーメンを含めて三人が見る過去と現在と明日に、どんな困難が待ち受け、どんな挫折を経ていくのだろうか。
今回は詳しく触れなかったが『狂人号』で出会ったアイリーニとルーメンもイベリアのリーベリ:エーギルの対照性を持つ。この二人により裁判所が変わり、国が変わりつつある。アビサルハンターたち、そして出身国エーギルの未来やいかに。
楽しみで仕方がない。どうかそこに、祝福があらんことを。
大陸版ネタバレに触れる
※ここから大陸版のネタバレ情報に触れる。
ソーンズの恩師についてである。優しさを感じるが、おそらくローレンティーナに源石注射をしたあの先生である。優れた学者先生で医者で剣士であるが、自分の知的好奇心や野心のためには手段を選ばないライン生命に向いた人材に見える。
優秀で頑固なソーンズに贈り物をしたのが意図的であるほうが強い。
エーギル(国)でアビサルハンターになるには選別がある。選ばれて彼女たちは改造を受けてアビサルハンターになっている。モチーフが海洋哺乳類で食物連鎖の上位にいるものたちだ。そこに対してウニの彼がどこまで耐えられるのか。試してみたくなるのも無理はない。実験だったのではないだろうか。結果としてソーンズは耐えられた。濤声が聞こえるという違和感と、シエスタでもファースト・トーカーに遭遇し戦闘にもつれAyaに助けられている。イシャームラと融合する危険のあるスカジとまではいかないが、彼も深海に引きずりこまれる危険はあるわけだ。それを現実のものとしたのが追憶映写の『危険な試薬』である。水圧に引っ張られ、鼓膜が破れてしまっている描写がある。
そしてこの先生、名前(アウルス)と容姿からして古代ローマ人モチーフつまりエーギル出身のエーギルである。敵側として実装されるときにはきっと、第五形態まである。
先生がマッドサイエンティストなのか、ソーンズが知的好奇心の果てに望んだのかは定かではない。
※ネタバレ終わり