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花月さん

花月さんと出会って、もうかれこれ7年になります。
当時入門したての私は練習生、
花月さんはまだ仙台にお住まいの頃でした。

その頃の私は当時の団体初の新人という事もあり、
周りにキャリアの近い選手がおらず、
初めて身を置く縦社会のルールに馴染むことも出来ず、
慣れない東京で誰かとの会話は常に敬語、よそ行きの声。
もう自分が何者なのかよく分からなくなっていました。

一方 花月さんは当時仙台に住んでいたものの
私の所属していた団体によく参戦されていたので 顔を合わせる機会も多く、
東京での遠征時には当時私も住んでいた団体の寮に寝泊まりされることもありました。

勿論先輩ですし、なんといっても他団体の方です。
そりゃ気は使いますし ラフに接する事など出来ませんが、
同い年という事もあり
そしてなにより花月さんの気取らない人柄のおかげで、
まだ幾分 肩の力を抜いてお話する事が出来ていました。

同じ業界の人と日頃の出来事を話したり他愛もない雑談をしたり、
今となっては当たり前に出来る事でも当時は凄く新鮮で、
その僅かな時間が私にとって精神的な救いとなっていました。

あの時のあの時間が私にとってそこまで深く思い入れのあるものだという事、
花月さんは知る由もないと思います。
ただ何気なく、よく分からない 今よりも声が1〜2オクターブ高い後輩と、
ただ会話してくれていただけでしょう。

だけど私にとって当時の花月さんの存在は、
7年経った今でも忘れる事の出来ない貴重な存在でした。


時が経ち、私にも同期や後輩が出来ました。
気兼ねなく会話が出来る存在も増えていき、
花月さんもフリーになられた事で徐々にお会いする機会は少なくなっていきました。

そして約2年前、私もフリーになりました。


スターダムに定期参戦する話が舞い込んだ時
花月さんにその旨を伝えると、
すぐに小川さんと3人での話し合いの場を設けてくれました。

その時を振り返って印象に残っているのは
私の場合は 誰かが言いだすわけでもなく、
ハナから大江戸隊に入る前提で話が進んでいた気がします。

その当時はユニットと言えば大江戸隊かQQのみ。
まだSTARSなどもなく、あとの選手は全員無所属とされていた頃だったかな。
すごい自然な流れでシレッと入りました。
…しかしそれが後に、大江戸隊入り後すぐに起きたメンバー間の確執を生んでしまうキッカケとなるのですが…😂


私にとって大江戸隊入りは本当に有難い転機でした。
私がレスラーを志すキッカケとなったのはヒールレスラーへの憧れで、
デビューしてからずっと「いつかはヒールになりたい」と夢見ていたから。

大江戸隊が、花月さんが、その夢を叶えてくれました。


大江戸隊に入ってからのプロレスは本当に楽しかったです。
花月さんは私に限らず どのメンバーに対しても
その子がやりたいようにやらせてくれました。

勿論連携や技をミスした時に苦言を呈された事はあります。
しかし私の基本的なスタイルに関しては花月さんは何も言いませんでした。

「夏さんの好きにやっていいよ」
「夏さんに任せるよ」

逆にこちらが少し不安になるくらい笑、
花月さんは良い意味で私を放ったらかしにしてくれました。

当時の私にとってその環境はカルチャーショックでもあり、
だけど自由にやらせてくれたからこそ
「次はこれをやってみよう、もっとこうしてみよう」と自発的に考えることができるようになった。

花月さんの与えてくれた自由が
プロレスに対するモチベーションを上げてくれました。

操り人形でもロボットでもサラリーマンでもない。
レスラーとして、夏すみれとしての人格を形成することが出来たのは、
間違いなく花月さんのおかげです。

だから花月さんには感謝しかありません。
そしてそんな「自分を作ってくれた人」がいなくなってしまう事が とても寂しい。

しかしこれまで沢山 花月さんと
楽しい試合・しんどい試合・腹立つ試合…色々共有できたから、
私はその思い出を胸に残して花月さんの背中を見送るだけです。


でも…

唯一心残りがあるとすれば、
花月さんとこれまで一度もちゃんと対戦する事が出来なかった事かな。
今までずっと組んできたから、対戦したのは2回だけ。
それもどちらもタッグマッチで
ユーモアな試合だったり、秒殺されてしまったり…。

花月さんとまともに手を合わせたことは今まで一度もないのです。

最後に花月さんとちゃんと試合がしたい。

私のこれまでの、そしてこれからのレスラー人生の中に
「花月」というレスラーがいたことを しっかり自分の身体で覚えておきたい。

そして7年前の自分と、今の自分から
しっかりとありがとうを言いたいです。


だけど花月さんには時間がありません。
そしてその場を用意できる場所もありません。
流石に残りわずか1ヶ月というこの短期間でもう一度自主興行を開催する事は現実的に不可能です。

それでも…何もせずにただ背中を見送るだけは絶対に嫌だ。
確実に後悔するであろう気持ちが今目の前にあるのに、何もできない自分は嫌だ。
時間や場所はどうなるか分からないけど…ちょっと動いてみます。
どうか皆さんにもそれを後押ししてほしい。


花月さん、最後に私と
最初で最後のシングルマッチをしてください。



花月引退興行『many face』

2020年2月24日 12:00開始
大阪・エディオンアリーナ大阪第2

大会の詳細は大会公式Twitterにて
プロレスリング石野家 公式Twitter

私の方でもチケットご予約を受け付けております。
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