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招待状が届いた。

卒業した生徒から恋愛相談を受けた。
そういったことに疎い私が相談する相手になるのはどうなのかという思いもあったが、詳しく聞いてみると、大学に入って仲良くなった同じグループの友人に意地悪をされているようで、

「〇くんは、あんたのこと好きじゃないからね!」
と、何の脈絡もなく言われたらしい。
そして、その女の子はグループのリーダー格だったため、グループ全体からハブかれるようになったとか…

「先生は、いつもぼっちだからわからないでしょうけど」
と軽く私をディスりながら、それまであったことを滔々と語る彼女。


どこかで聞いたような話だなと思い、記憶を巡らせると、私が中学生だった頃の出来事を思い出した。

とある男の子に好きな人が出来て、それを他のクラスメイトに揶揄われていた、という状況だったと思う。

突然、教室のドアをガラッと開けて、担任が入って来た。
白いチョークを握りしめ、カッカッカッと音を立てて、鬼気迫る表情で何かを黒板に書く担任に、教室に居た生徒は皆、釘付けになった。

何かを書き終わった担任が振り返った。
そこには、

人の恋路を邪魔する奴は
馬に蹴られて死んじまえ

と書かれていた。

肝心なそのあとを全く覚えていないのだが、その光景だけは記憶に色濃く残ったのだった。


「先生、話聞いてます?」
いけない、同じ話の3ループ目に入った元生徒…彼女を忘れていた。
つまるところ、両想い(かそれに近い状態)の2人を、同じグループの女ボスが何らかの理由でそれを妬み、仲を引き裂こうとしているわけで、、、
彼女は第三者から強い保証をもらって、自信を持ちたいわけだ。
グループを切り、彼とやっていけるのかどうか。

そのグループから離れても、大学生ならやっていけるだろうから、直接彼にアプローチしたらどうか、と彼女に答えると、

「先生は、〇くんが私のこと好きだと思います?」

うん、そう思うよ。
少なくとも貴女のカンはそれほど外れないと思うんだ。
もうある程度わかっているのだろう?
と答えると、
彼女は嬉しそうに「告白します」と答えた。

帰り際、彼女に、
「何で先生は断言出来るんですか?」
同じ話をしても、みんなわからないって答えるのに、と。
みんな意地悪だなあ、後押ししてこそ友人だろう…という私は、もう前時代のひとなのかもしれないね。

『今度、結婚します。』
彼女から届いた招待状。大学を卒業して、入籍する相手は、〇くんだった。