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医者が見る「生きる」と「創る」

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース「クリエイティブリーダシップ特論2021」第10回:稲葉 俊郎さん
2021年9月13日 by コク カイ

「クリエイティブリーダーシップ特論2021」は武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース(通称「ムサビCL学科」)が行われている、クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師を招いて、参加者全員で議論を行う形の講義です。受講生たちは毎回の内容をレポート形式でnoteで連載しています。

今回のゲストは医師の稲葉俊郎さんです。

稲葉さんは医師として、人が生きるために必要な医療、創造の力を始め、医療と芸術の接点、生きることと創ることの繋がりを探ってきました。西洋的な医療の概念では見えない人間の中の世界を紐解いて、従来の病院のあり方や病気の考え方だけでは解決しきれない問題に着目し、「新しい医療」を追求してきました。彼の今まで探究はいわゆる赤本と青本のこの二冊の本でまとめられています。

彼の今回のテーマは「全体性を取り戻す」です。その一つの意味は、我々の現在をただ一瞬として捉えるのではなく、生死の中の一コマとして捉えるべきです。その視点がなければ「何で今はこんな風になっているのか」、「これからはどこへ行くか」などのような疑問次々と出ていき、周りの出来事や自分の歩むべき道、求めるべきものは正しく理解することができません。

そしてもう一つの意味は、マクロとミクロな視点で物事を見るというです。現在に起きている世界規模の伝染病のパンデミックが原因で、各国の人々はやむを得ず海外の状況にも関心を持つようになりました。ただ多くの人が知らないのは、このCOVID-19というウィルスのサイズと人体のサイズ関係は、人間と地球のサイズ関係と偶然に一致しています。

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そんなことに気づいた稲葉さんは「ミクロ的な不調和が起きている途端、マクロな面でも何かしらの不調和が発生する」という、ある種のシンクロを感じました。それが我々が生きている空間と自分の内なる何かとの全体性です。

では、全体性を取り戻すとはどういうことか。それは従来の医療の考え方で病気を治療する、ウィルスを殺すというような「病気学」の考え方を持って、さまざまな問題や不調和を解決していくのではなく、人々をより「健康に」、「充足に」、「幸福に」するために何が必要かという「健康学」の考え方をいかに広げるかということです。

そこで、現代医療に既存する不足を補うために、さまざまなピースを自分で見つけ出して繋ぎ合わせないといけません。それは時には伝統芸能だったり、芸術だったり、音楽だったりすることこともあります。実際稲葉さんも2020年山形ビエンナーレの監督として、芸術で創ることと医療で生きることの関係性を探りつつ、「全体性」を取り戻す試みをしてみました。

芸術、歴史、民俗、音楽……それらを含めた様々ものを医療と橋を掛けて、新しい社会の一環として、医療のあり方を検討するべきだと稲葉さんが指摘しました。

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