キズツケル

私はベランダで煙草を胸いっぱい吸い込むと、ゆっくり煙を吐き出した。

私の周りを通り過ぎて行く人々。

ブラウスの袖のボタンを外し手首を見る。

人が通り過ぎて行くたびに、私は血の涙を流し、やがてどの傷がどの傷かわからなくなるまで、手首に口づけをした。

私は煙草を缶ビールの空き缶に置き、袖ボタンをかけ直すと、長く崩れ落ちそうになっている灰を落とし、再び煙草を吸い込んだ。

私が流した血とともに、私が吐き出した煙とともに、私が落とした灰とともに。私の皮膚は再生する。もしかすると再生する皮膚を観察するために傷つけているのかもしれない。まさか。

あなたも血の涙を流したろうか。

こんなにボロボロになるまで泣きもせず声も出さず血の涙を流す愚か者は私ぐらいだろうか。

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