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ビッグドリーマー

みんなで連載小説 PART2 Advent Calendar 2018」最後の記事です。
最後にめっちゃ丸投げされて吐血。なんとかまとめた?私を褒めてほしい。

毎年クリスマスが近づくと、老若男女国籍問わず24人の夢が叶うという「歳末ビッグドリームプロジェクト」が立ち上がった。どのような企業が参画しているのかは謎のプロジェクトだが、くじで選ばれた24人の夢はどんな夢も実際に叶えられていくため、応募者は年々膨れ上がり、人々の注目を集めていた。

応募は簡単。毎年立ち上がるプロジェクトサイトから番号が書いてある白い紙をプリントアウトし、そこに夢を書く。もちろんプリントアウトせずに送信する方法もあるが白紙に書いた方が叶いやすいという噂が流れて以降プリントアウトするのが主流になった。他にも子どもの夢の方が叶いやすいとか字より絵の方が叶いやすいとかまことしやかに言われているが、真相はわからない。あとは家の中のポストボックスに入れておけば、自動的に回収される。

私−佳織−はたった一つの願いを白い紙に託した。また豊と暮らしたい。生まれてくる命を豊と二人で見守りたい。
ただ、問題があった。豊が「過去の」男だということ。時間旅行については最近法整備が進んで、その中で時間旅行者との性行為や結婚は禁じられた。私と豊は内縁の関係だったが、子どもができたらそうは言っていられなくなる。
そして、豊は昔付き合った女が忘れられないのだと言う。確かに豊はごく最近この時代にやってきたばかりの男だけれど、今すでに死んでいる女のことが好きなのだと言われても私は釈然としなかった。あんなに私たちは愛し合ったはずなのに、300年以上前の女に愛を壊されてしまうの?
お腹の子どもを抱え、何もかもが絶望的だった。孤独感が重くのしかかった。
「今」の私と「今」の子ども以外に何が大事だというのだろう?

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50098026315番、50098026315番。西野佳織さん。西野佳織さんが今年最後のビッグドリーマーです!!
ネットラジオから興奮を煽る男の声がした。
道行く人々はイヤホンからそのニュースを耳にし、自分じゃなかったことに落胆した。

−−−−−−

俺は役目を果たし、先を急いでいた。今夜までに2018年に戻らなくては。乗車証を見せようとした時、俺に何者かがガスを吸わせた・・・

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豊さんは、来なかった・・・。
一週間前に会ったドトールで私は3杯目のコーヒーをすすり、そして、また捨てられたのを思い知った。
どうして信じてしまったのだろう。
祐樹を裏切ってまで、どうしてまたやり直せるかもしれないなんて思ってしまったのだろう。

私はBar JETに寄って、酒を煽って家に帰った。
家に着く頃には日付も変わっていたが、祐樹は起きていて、リビングでゲームをしていた。私の顔を見るとコントローラーを置いて尋ねた。「あのね、やけ酒?」「なんで?普通に楽しかったよ?」私は反射的に嘘をついた。

翌日の夕方、私たちは予約していたイタリアンレストランへ向かった。祐樹は道中でも店の中でも終始はしゃいでいて子犬の散歩みたいだ、と私は思った。けれどメインを食べ終わった頃、祐樹は緊張した面持ちで、言った。
「僕はビッグドリーマーになれなかったけど自分の力で、勝ち取ろうと思うの。結婚しよ?」
「う、うん。」
「やった!それは嘘じゃないよね?もう嘘はつかないよね?」
「うん…祐樹にはお見通しだね。ごめんね。もう嘘はつかない。ところで、ビッグドリーマーって何?」

最後まで読んでくださったみなさまに感謝します!
次回(があれば)ぜひ書く側になってくださいね。書く方が絶対楽しいから!毎回毎回思いもよらない方向に物語が転がって翻弄されるのが醍醐味です!(毎回「そんなぁぁ〜」って言ってたけど笑)

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