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スマホゲームで学ぶこと『ドラゴンクエストライバルズ』

毎月たくさんのスマホゲームがリリースされ、同じくらいサービスが終了していく。
続いていくゲームとサ終するゲームの違いは何か、あるいは面白くなかった理由は何かと考える過程で学ぶことが多くある。

今回は『ドラゴンクエストライバルズ』について。

なお、記事の主旨は、ライバルズから受けた印象を元に学んだことを記すことであって、ライバルズの失敗理由を正確なデータに基づきに分析するものではない。あくまで印象を基に感じたことを書いている。
また、結果としてライバルズの失敗要因を書いているが、貶める意図はない。

どんなゲームか

  • モンスターカードやアイテムカードを使って戦う対戦型カードゲーム。

  • 数あるカードから使いたいカードを選び、デッキと呼ばれる、自分専用の山札を使って遊ぶ。

  • その名のとおり、全国のプレイヤー同士で戦う形式がメインの対戦型。

  • 複数の職業があり、プレイヤーは対戦ごとに職業を選んで戦う。

    • 例)戦士としてデッキを操り、魔法使いの相手と戦う。

  • 職業ごとに必殺技や、その職業でしか使えないカードがある。

  • 約三年半でサービス終了。


失敗したと思われる理由

遊んでいて受けた印象のうち、失敗要因だったと思う主な点が二つ。

  • 運営のバランス感覚の悪さ

  • バランス調整の視点のずれ

(なお、「運営」とは、「ゲームを作成し提供するスタッフ」の意味で使用している。運営陣)

運営のバランス感覚の悪さ

カードには、性能を決める様々な要素がある。
モンスターカードなら、

  • HP

  • 攻撃力

  • 使用するためのコスト

  • レアリティ(入手しさすさ)

  • 特殊能力

  • そのカードを使える職業

など。
カードの強さは、これらの要素の組み合わせによって決まる。
カードゲームでは、複数のカードを組み合わせて使うことで、更なる強さを引き出すことが出来る。例えば、攻撃力は強いけれど使用するためのコストが多いカードと、コストを下げる能力を持つカードを組み合わせて使う、など。良い組み合わせをシナジーと言ったりコンボと言ったりする。

カードの強さは、カード単体の強さに加え、こうしたコンボに組み込む要素としての強さもある。単体では弱いが、組み合わせることで輝くカードがあるのである。

新しいカードを追加する際運営は、他のカードに比べて強すぎないか? 強力すぎるコンボに使用されないか? など、カード間のバランスを考えなくてはならない。

ライバルズでは、運営のバランス感覚が悪かったように思う。
バランス感覚が悪い中で新しくカードを追加すると、

  • 突出して強いカードが生まれる。

  • 強力過ぎるコンボが編み出される。

といった事態に陥る。

突出して強いカードが生まれる

突出して強いカードが生まれると、そのカードを持っているかいないかが勝敗を分けることになる。
カードはいわゆるガチャで引くのが基本であるため、みんなが欲しがるカードを作るのは、運営としては狙いの一つだったのかもしれない。
しかし、強いカードを持っていない初心者にとっては辛い状況となる。そして、初心者が参入しにくいジャンルは、ゲームであれなんであれ衰退していくものである。

強力過ぎるコンボが編み出される

バランス感覚の悪さゆえ、強すぎるコンボを生み出してしまうことが多くあった。
多くのプレイヤーがそのコンボを使用し、使用したプレイヤーの勝率が突出して高くなる。プレイヤーは当然勝ちたいので、多くのプレイヤーが同じコンボを使用し、多様性が失われていく。
このような状況は、ゲーム全体として健全ではない。グーの出せないじゃんけんが面白いはずがない。

健全な環境にするため、時折バランス修正が行われた。ゲーム全体のルール、カードの数値や能力を変更するのである。


カード間のバランスが悪かったと思う理由はふたつある。

  • 修正の頻度が高い

  • 数値調整が大雑把


修正の頻度が高い

健全な状況にするためカードの修正が行われる。
オンラインゲームだから、アナログゲームに比べ、修正は容易である。

しかし、カードの修正は、やむを得ず行われるべきものである。
カードゲームの主な醍醐味は、カードの組み合わせ方を研究する部分にある。
このカードとあのカードを組み合わせるとこんなコンボが出来て強い! というような工夫を以てライバルに勝つのが楽しいのである。
プレイヤーにとって、その醍醐味、せっかく考えたコンボを潰されて面白いはずがない。繰り返されればゲームを続ける気も失せてしまう。新しいコンボを考えても、どうせまた修正されてしまうんでしょう? と。

余りに不健全な環境は修正されるべきであるが、ライバルズにおける修正は、頻繁な印象だった。果たして、プレイヤーは何度、やる気を削がれただろうか?
不健全な環境にならないよう、細心の注意を払ってカードを作成していれば、修正の頻度は下げられたはずである、というより、そうしなくてはならなかった。

数値調整が大雑把

バランス感覚が悪いと感じた理由の二つ目は、修正の方法である。
新たなカードを追加する際は、様々な要素の組み合わせを考えなくてはならない。

攻撃力やHPなど、数値で表せる各要素は整数だから、カードを追加する際は「3か4か、非常に悩ましい。4だと強すぎるかもしれないが、元々人気のあるキャラだし多くの人に使って欲しいから4で!」といった葛藤が出てくるはずだが、「カード効果の修正情報」を見る限り、ライバルズにはそれが感じられなかった。
というのは、ライバルズでは、数字を2以上修正することがしばしばあったからである。
3か4かで悩み、その結果4にしたが、やはり強すぎたので3にする、という修正ならわかる。
しかし、4を2に修正するというのは、カードを作るときのバランスについて、もっと深く考えるべきだったのではないか、と感じた。

バランス調整の視点のずれ

失敗したと思う理由「運営のバランス感覚の悪さ」に加え、もうひとつは「バランス調整の視点のずれ」である。

ライバルズでは、たくさんあるカード同士のバランスを取るのではなく、職業間のバランスを取ろうとする意図が印象に残っている。

カード同士のバランスを取る、とは「カードAとカードBを比べたとき、Aの方が強いのでAを弱体化します、あるいはBを強化します」のように、カード同士を比較してバランスを取ろうとする発想である。

ライバルズのバランス調整は、そうしたカード同士のバランスではなく、職業同士を比べ、調整していた。魔法使いのこのコンボの使用率や勝率が高いから、コンボに使われているカードを弱くします、一方戦士は勝率も使用率も低いので戦士専用のカードを強化します、というように。

なぜ、職業間でバランスを取ろうとしたかはわからない。
特定の職業、例えば武闘家が大好きで他の職業は使いませんという人にとっては、職業間のバランスを取るのは嬉しい修正だったかもしれない。

しかし、たまたま魔法使い用の強いカードを引いたから魔法使いを使うという人や、その時点で強いとされている職業を使う、と考える人にとっては特に嬉しくはなかっただろうし、そういう人の方が多かったのではないか。職業は、一戦ごとに気軽に変更できるのだから。

バランス調整は、職業単位ではなく、カード単位で行うべきだったと思う。
「職業間のバランス調整も、カードを修正することで行われるから結局は同じことでは?」との疑問に対しては、同じことではない可能性がある、と答えよう。
どの職業でも使われるカードやコンボは見逃されてしまうからである。

魔法使いしか使えない強力なコンボがあれば、魔法使いの勝率が上がるから修正しようという力が働く。しかし、どの職業でも使える強力なコンボは、職業同士のバランスを見ていては覆い隠されてしまう。
その結果、突出して強いにもかかわらず、修正されないままのカードやコンボが出てきてしまう。

他にも、演出の長さなど様々な理由はあったのだろうけど、失敗要因として抱いた印象は以上のとおり。
(なお、以上は主観的な印象であって、実際のところどうだったのかについては不明である)
以下が、学んだこと。

教訓1:努力が報われない仕組みは不人気

せっかく考えたコンボなのに、たびたび修正されてはやる気が無くなる。

せっかく努力した成果を壊されれば人は離れていく。
世の中、努力すれば必ず成功する訳ではない。しかし、ゲームのように仕組みを人為的に作れる世界では、努力が報われる世界となるようにしなくてはいけない。そうなるようがんばらなくてはならない(この、「がんばる」部分も努力であるから、必ず報われるわけではないけれど)。
学校であれば、勉強をがんばれば好成績が取れるようなテストを設計する。
水泳教室であれば、各人の初日の泳力からの伸びを評価する。

また、「努力」が何を指すかはそれぞれの場所や世界によって異なる。
報われるのは、時間を長くかけた人であるべきか、それともお金をたくさん使った人か、工夫に知恵を絞った人か。
制度設計の段階から、何を努力として設定するのか考えておくべき。

教訓2:調整する部分のピントが合わないと不幸

職業間でバランス調整をしようとしていた。

みんなが期待している部分とずれた場所を調整しても「そうじゃないんだよなぁ」との思いが強くなるだけで喜ばれない。
どの部分を調整すれば公平だと思われるのか、全体がちょうど良くなるのかよく考える。
テスト範囲外をいくら勉強しても好成績は残せない。
結果の平等と機会の均等のバランスを取る。


サ終したゲームを遊んだ時間も、無駄にはなりませんように。

名角こま

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